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「今日からゴッド生」…韓国のZ世代がコロナブルーに耐える方法

登録:2021-08-23 02:21 修正:2021-08-23 07:59
生活習慣ぎっしり詰め込んだ「ゴッド生」にはまる青春 
「水を5杯飲む」などのささやかなことで達成感
毎日すべき習慣をやり遂げればシールで表示するイ・ガヨンさん(24)の「ハビット・トラッカー」=イさん提供//ハンギョレ新聞社

 「今日から『ゴッド生』暮らし始めます!」 大学院生のAさん(26)は今月初め、このような言葉で始まる文章をブログに載せた。Aさんは、朝8時から少なくとも30分単位でびっしり組んであるスケジュール表もアップした。朝8時に起きて家でトレーニングをし、シャワーを終えた後はエクセルの学習。そして昼飯。午後にはデザインプログラムに関するユーチューブ講義を聞き、人性・適性問題集を解く。夜11時、15分間の聖書の写し書きを終えるとようやく1日が終わる。Aさんは計画した日程を終えるたびに、証明のために時間を確認できる時計を写真に撮る。計画したことができない時もあるが、Aさんは「明日はもっとゴッド生を生きよう」と誓って床につく。

 1990年代半ば以降に生まれたZ世代の間では「ゴッド生」暮らしが流行のように広がっている。「ゴッド生」とは、良いことを表現する時に接頭語のように使う「ゴッド」(神、God)と「人生」を合わせた新造語だ。「立派で模範的な人生」という意味でよく使われる。ささやかな達成感の得られる事柄を規則的に行うというのがゴッド生の肝だ。新型コロナウイルスの拡散で家に滞在する時間が増えるとともに、外部活動と対人関係を通じた達成感が得られない状況が続いていることから、こうした生き方を実践する10~20代が増えているのだ。

チャン・ダギョンさん(22)が毎日すべきことを記してある記録帳=チャンさん提供//ハンギョレ新聞社

 ネイバーの検索件数分析システム「データラボ」で、過去3年間の「ゴッド生」の月ごとの検索件数を22日に調べたところ、昨年2月以降の1年6カ月で検索件数が約100倍となっていた。データラボは、照会期間中に特定のキーワードの最多検索量を100とする相対的な変化を表示してくれる。昨年2月に検索量が1を記録した「ゴッド生」は、今年1月に63に急増し、先月には100を記録した。ユーチューブやソーシャルメディア(SNS)には、各人のゴッド生の経験やノウハウを共有する書き込みがアップされ続けている。

 「ゴット生ラー」(ゴット生に人を表す接尾語「er」を付けた新造語)は、物質的豊かさや名誉がついて回る人生を追求しているのではない。浪費する時間を最小限にとどめ、日常的な生活習慣を実践して、わずかでも達成感を自ら感じる人生がゴッド生だ。彼らの日課は大げさなものではない。「起きてすぐに布団をたたむ」「1日に水を5杯飲む」「ご飯を食べてすぐに横にならない」などの、先輩世代が「こんなことも目標になるのか」と怪しむような実践がゴッド生の基本要素だ。ささやかだが確かな達成感だ。「大学の明日20代研究所」が900人のMZ世代(1980年代前半~2000年代前半に生まれたミレニアル世代と1990年代中盤~2000年代前半に生まれたZ世代の総称)に対して調査を行い、今年1月に発表した「MZ世代の余暇生活と自己開発トレンド」と題する報告書によると、回答者の70.3%が「ささやかな成就も自分の人生にとって大きな意味をもつ」と答えている。「自己開発は必ずしも大げさな目標を設定する必要はない」との回答も65.8%を占めた。「朝7時に起きる」と「三度の食事をきちんと取る」を実践中という受験生のイ・ガヨンさん(24)は「試験勉強は短期間で目に見える成果が出ないから疲れやすいし、自信もなくした。毎日少しでも達成感を感じたいと思ってゴッド生を始めた」と語った。

 ゴッド生ラーたちは、勉強や仕事、運動のような自己開発のための生産的なことがらも重要だが、疲れた心をいたわることも重要だと考える。「きれいなお皿でデザートを食べる」「好きな歌を聞きながら3行日記を書く」という項目が、ゴッド生の構成要素に必ず含まれている理由がここにある。

目標を達成すると保証金が返してもらえるアプリ「チャレンジャーズ」(左)と、1日のすべきことを設定して友人と共有できるアプリ「トゥードゥー・メイト」=Google Playストアより//ハンギョレ新聞社

 彼らは1人で「ゴッド生」生活を送って満足するだけでなく、友人とゴッド生を監視し合ったり励まし合ったりする。計画を終えるたびに紙にシールを貼る「ハビット・トラッカー」様式を用いて記録したり、自己管理アプリで日課を記録し共有したりする。目標を達成すれば保証金が返してもらえるアプリ「チャレンジャーズ」、1日になすべきことを設定して友人と共有し、互いに応援メッセージを残せるアプリ「トゥードゥー・メイト」などが彼らの間で人気だ。

 一度きりの人生を楽しもうという「YOLO(You Only Live Once)」ブームが起きてから3~4年後に自己管理と統制が流行したのには、コロナという特殊な環境が影響を及ぼしたように思われる。今月からゴッド生暮らしを実践しているSさん(23)は「コロナ以前は人と会って関係を築くことに多くの時間を費やし、学校に行って帰ってくるだけでもその日になすべきことを成し遂げたという満足感を感じていた。コロナ以降は行動半径が狭まり、無気力感によく襲われた。コロナはすぐに終わらないだろうという恐怖から、こうして自分を統制する生き方を選んだ」と説明した。

 ゴッド生暮らしに挑戦しているチャン・ダギョンさん(22)は「ゴッド生の流行は、非婚や一人暮らしが増えたこととも関係があると思う」と話した。「大学を卒業し、仕事を見つけ、結婚し、出産することが正常な人生の軌道と感じられたかつてとは異なり、最近は自分の人生に責任を持てるのは自分だけだと認識する人が多くなった」からだ。チャンさんは「これまでの自己開発は、就職や結婚の『市場』において自分の価値を向上させることに焦点を当てていたが、ゴッド生は自分の人生により焦点を当てた生き方」だと付け加えた。

 目標が些細なので失敗してもストレスにならないということも、ゴッド生暮らしに没頭することになる理由だ。Aさんは「ゴッド生はマラソンのようだ。たまに目標達成に失敗しても、次の日に起きて回復した体力で成し遂げれば達成感が得られる」と強調した。そして「以前は高価な車とブランド品を持っている人たちがゴッド生暮らしをするのだ思っていたが、時間の概念が失われた最近は、規則正しい1日を過ごす人が同年代からより多くの共感を得るとともに、ロールモデルになっている」と述べた。

イ・ウヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1008617.html韓国語原文入力:2021-08-22 15:15
訳D.K

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