「8キロ入り1箱が500ウォン(約49円)まで落ちました。1000ウォン台もたくさんあります。今売ったところで段ボール箱代も出ません」
25日に訪ねた露地栽培ズッキーニの全国最大の主産地である江原道華川郡(ファチョングン)。農業者たちはみずみずしい黄緑色のズッキーニを畑の上に容赦なく投げつけた。続いて彼らは、大きな車輪のトラクターでズッキーニを捨てた土をすき返した。トラクターが通り過ぎた場所には、つぶれたズッキーニが転がっていた。汗を流して大切に作ったズッキーニを自ら廃棄したのだ。
農業者のソン・ウソクさん(66)は涙ぐんだ。「数十年間ズッキーニ農業を営んできたが、今年のような状況は初めて。新型コロナが拡散し続けていてこの状況の終わりも見えず、さらに苦しい状況です」
江原道華川郡は、最近価格が暴落したズッキーニを産地で自主削減することにした。産地の自主削減とはつまり廃棄処分ということだ。
22日から看東面都宋里(カンドンミョン・トソンリ)の山麓の村では、農林畜産食品部と農協中央会が主導する産地廃棄が続いている。華川郡は来月3日までに213トンを廃棄する予定だ。華川は118農家で年間4500トンのズッキーニを生産する露地ズッキーニの最大の主産地だ。これは全国流通量の70%を占める水準だ。
産地廃棄を決めた決定的な理由は、価格暴落のためだ。今年は雨の多さや高い温度のため、ズッキーニの生産量が昨年より14%ほど多かった。しかし、価格は40%以上暴落した。価格下落幅が大きい理由は、新型コロナのため「消費の崖」現象が現れているからだ。通常、味噌チゲや炒め物などにズッキーニを使う学校給食が中止となり、社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)の状況で会食や外食などが姿を消し、飲食店などを通じた消費が大幅に減った。需要が減り、余ったズッキーニがあふれた。
今年上半期に一箱1万1410ウォン(約1120円)まで上がったズッキーニの価格は、19日基準で2423ウォン(約238円)まで急落した。価格が半分でもない5分の1になったわけだ。それさえも平均価格であり、実際に農家が販売するズッキーニは等級によって1000ウォン以下の価格で取り引きされることもある。
終わりの見えないコロナ禍は農家の心を暗たんとさせる。最近、再び第4波が広がり、「ズッキーニ消費」が復活する兆しは見えていない。看東面都宋里のキム・インス里長は「3年前にも価格が暴落し、産地廃棄をしたが、その時は数日で終わった」とし「しかし今はこの状況を抜け出るこれといった方法が見えない。売れば売るほど損をする。30年間のズッキーニ農業で最悪だ」と語った。
華川郡は、公務員や関連機関の職員らを対象に、農産物の販売促進運動を展開している。華川郡のチェ・ムンスン郡守は「コロナが拡散してズッキーニ農家の被害も雪だるま式に増えている。農家を助けるために最高品質の華川ズッキーニをたくさん購入してほしい」と訴えた。