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悪材料が重なったユン前総長、大統領選候補の対決相手に「理念対立」火付け

登録:2021-07-05 09:17 修正:2021-07-05 13:14
保守メディアが巧妙にねじ曲げたイ・ジェミョン知事の発言 
ユン前総長「大韓民国の正統性を否定」…極右歴史観があらわに
先月29日、大統領選出馬を宣言したユン・ソクヨル前検察総長が翌日午前にソウル汝矣島の国会疎通館の記者室を訪れ記者団と挨拶を交わした後、質問に答えている/聯合ニュース

 ユン・ソクヨル前検察総長が、「親日勢力が米占領軍と合作して支配体制を維持した」というイ・ジェミョン京畿道知事の発言をめぐり、「大韓民国の正統性を否定し」「大韓民国を誤った理念に追従する国家へと変えようとしている」と公開批判した。イ知事の実際の発言を巧みにねじ曲げ、理念論争・色分け論に火をつけたことで「ユン前総長が極右・独裁政権の歴史観をあらわにした」という批判の声があがっている。

 ユン前総長は4日、フェイスブックに「自虐的な歴史歪曲、絶対に許せない」という見出しの書き込みで、「光復会長の『米軍は占領軍、ソ連軍は解放軍』という荒唐無稽な妄言を、政権勢力の次期有力(大統領選挙)候補のイ・ジェミョン知事も受け継いでいる」とし、「これに対して国政最高責任者である大統領や大統領府がいかなる立場表明もしていないというのがもっと大きな衝撃」だと非難した。さらに「彼らは大韓民国が屈辱的で汚い誕生の秘密を抱いているかのように言っている」とし、「大韓民国の正統性を否定し、歴史の断片だけを強調して脈絡を無視する勢力は、国民が成し遂げた成果に寄生するだけにとどまらない。大韓民国を誤った理念に追従する国家へと変えようとしている」と主張した。イ知事の発言を光復会のキム・ウォヌン会長の言葉とつなげ、彼らを批判しない文在寅(ムン・ジェイン)大統領まで引き出して「左派勢力の政権陰謀」と主張したのだ。

 ユン前総長のこのような主張は事実を歪曲しているだけでなく、時代遅れの理念対立を上塗りする極右勢力の典型的な行動と類似している。これに先立ち、イ知事は大統領選出馬を宣言した1日、慶尚北道安東(アンドン)の李陸史(イ・ユクサ)文学館を訪れ、「大韓民国は他の国の政府樹立の段階とは少し異なり、親日清算がなされず親日勢力が米占領軍と合作してその支配体制をそのまま維持したではないか。きれいに国が出発できなかった」と述べた。イ知事はさらに「詩人・李陸史も、独立運動をして獄死した」とし「その点で、私たちがこれまで十分な歴史的評価や礼遇、補償をしたのか疑問であり、そのような面から見れば、国を立て直すという考えで新たに出発したいという思い」と述べた。イ知事の発言は、詩人の李陸史など「独立運動家の公的認定」を強調したものだった。

 しかし2日後の今月3日、保守メディアの「朝鮮日報」はこの発言を紹介した後「イ知事の発言は、大韓民国が親日勢力の主導で建国され、米軍は占領軍であるという認識を示したもの」だとし、親日・米占領軍が大韓民国を樹立したという発言として報道した。「親日勢力と米占領軍が合作して支配体制を維持した」というイ知事の発言を、「大韓民国は『親日勢力と米占領軍の合作品』」という形に規定したのだ。

 ユン前総長はフェイスブックでイ知事の発言を「『大韓民国は親日勢力と米占領軍の合作品として誕生した』とは、全国民の耳を疑わせる主張だ」と批判し、朝鮮日報の主張を繰り返した。歪曲された表現を既成事実として受け入れたユン前総長は「国政を掌握し、歴史を歪曲し、次の政権まで狙っているあなたたちは、いま何を目指し、誰を代表しているのか。6・25朝鮮戦争で死に、負傷した数多くの国軍将兵と国民は親日派と米国の利益のために戦ったのか」と問いかけ、極端な主張を続けた。ユン前総長はイ知事と文在寅政権を「権威主義政権を清算し、民主化を達成した国民をかさに着て、『より熱心に闘った民主闘士』に化けた」と非難し、「理念に酔い、国民意識を引き裂いて苦痛を与えることに反対する」と書いた。

 ユン前総長の攻撃に対し、イ知事は同日、「解放直後の米軍と朝鮮戦争後の米軍を同一視するのは明白な間違いであり、私がソ連を解放軍だと言ったというのは嘘」だとし、「ユン前総長の私に対する初めての政治発言が、私の発言を歪曲・捏造した旧態依然の攻撃だという点が実に残念だ」と反論した。イ知事はフェイスブックに「38度線以北に進駐したソ連軍と、以南に進駐した米軍はすべて占領軍だ。米軍の布告令にも占領軍であることが明示されている」とし「占領軍として進駐した米軍は大韓民国政府樹立後に撤収したが、朝鮮戦争当時、国連軍の一員として参戦した後、韓米相互防衛条約によって現在まで駐留している。同じ米軍でも時期によって占領軍と駐屯軍としての法的地位は違い、同一ではないということは、法学概論を学んだだけでも分かる」と書いた。また、イ知事は「日帝に賦役した勢力が清算どころか新しく出発する大韓民国政府の主要な要職を占めたのは周知の事実だ。反民族行為特別調査委員会(反民特委)も彼らによって強制解散されたではないか」とし、「政府樹立後の不正不義と親日売国要素はその後かなり清算されたが、その一部が依然として韓国社会のあちこちに毒キノコのように残り、社会統合を妨害し、自主独立国家の面貌を損なっているのが現実であり、ユン前総長が入党するであろう国民の力もそこから大きく外れてはいない」と指摘した。

 歴史学界はユン前総長の主張を「歴史的事実まで否定する政争」と評価した。カトリック大学のアン・ビョンウク名誉教授(元韓国学中央研究院長)は「1945年9月に米国が進駐した時の公式用語が『占領軍』だ。イ知事の発言は論理的にも学術的にも間違った発言ではない」とし「(ユン前総長らが)占領軍という用語を、どこかを侵略して強制占領するというニュアンスを付け加えて攻撃しているが、事実に基づいていない指摘」だと説明した。民族問題研究所のイム・ホニョン所長は「(ユン前総長は)分断と独裁体制、クーデター勢力を支持する史観を正統と思っているため、(イ知事の発言が)大韓民国の正統性を否定するという主張につながる」とし「ユン前総長のフェイスブックの文章は、いかに現代史を断定的で偏向的に見ているのかが分かり、極右の李承晩(イ・スンマン)と全斗煥(チョン・ドゥファン)の独裁の歴史観をそのまま表したものだ」と批判した。近現代史専攻のある歴史学者も「マッカーサー将軍の布告文第1号にも占領という表現が4回も出てくる」とし「(政府樹立後も)警察と軍に日帝時代から職責を担った人が多かったため、(イ知事が)親日賦役が清算されていなかったという話をしたものとみられる」と述べた。

ぺ・ジヒョン、ソ・ヨンジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1002091.html韓国語原文入力:2021-07-05 02:41
訳C.M

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