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元法務次官めぐる捜査8年…性接待に続き賄賂も処罰できなくなるか

登録:2021-06-11 06:05 修正:2021-06-11 10:00
事件の発端、性接待の容疑は公訴時効で免訴 
最高裁破棄差し戻し、賄賂も無罪の可能性
キム・ハグィ元法務部次官/聯合ニュース

 キム・ハグィ元法務部次官の「別荘性接待・収賄」疑惑には、いつも検察の“身内をかばうずさんな捜査”というレッテルが貼られていた。2013年、建設業者のユン・ジュンチョン氏の高位公職者への性接待疑惑が持ち上がってから、警察の初期の手抜き捜査とその後の検察捜査が重なり、結果的に免罪符を与えたという批判だ。8年が過ぎた現在、同事件の発端となる別荘での性接待は、公訴時効が終わったという理由で免訴判決が確定し、控訴審で一部有罪が認められた収賄の疑いも、最高裁(大法院)が破棄差し戻しを命じたことで、無罪判決が下される可能性が浮上した。

 事件は、キム・ハグィ法務部次官の任命直後の2013年3月、ユン氏が江原道原州(カンウォンド・ウォンジュ)の別荘で、高官に性接待をしたという疑惑が持ち上がったことから始まった。警察は性接待の動画を確保し、別荘を家宅捜索して捜査に着手した。しかし、当初から収賄容疑に対する取り調べがまともに行われなかった上、性接待ではなく特殊強姦など性犯罪の疑いだけで立件・送致したため、初めからボタンが掛け違った事件となった。これは後に、検察の“ずさんな捜査”につながる原因となったとみられる。

 検察は、キム元次官に対する口座追跡や家宅捜索などを行わず、警察にも裏づけ捜査を要求するなど十分な捜査指揮もしなかった。警察が申請したキム元次官の逮捕状なども、検察が却下した。検察は、疑惑が持ち上がってから7カ月後、被害女性の供述とは逆の内容の証拠と供述をもとに、特殊強姦の容疑などに対し嫌疑なしの判断を下した。

 翌年7月、被害女性が再びキム元次官とユン氏を告訴したが、検察は5カ月後に再び容疑なしとした。キム元次官とユン氏に対する呼び出しもなかった。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後の2018年4月、法務部の検察過去事委員会の勧告により再調査が始まった。キム元次官は、最高検察庁の過去事真相調査団の出席要求に応じず、文大統領が徹底した真相究明を指示した直後の2019年3月22日、真夜中にタイに出国しようとしたが制止された。

 その後、検察は2019年6月、特定犯罪加重処罰法上の収賄容疑でキム元次官を拘束起訴した。キム元次官は一審で「(髪型の)分け目の方向が違う」などの理由で、動画に映っている人物が自分ではないと主張した。一審は動画の人物が本人だと判断したが、最後の性接待が2008年2月頃で時効10年が満了したため罪に問うことができないとして、免訴判決を下した。賄賂の疑いも公訴時効満了および証拠不足で免訴および無罪判決が言い渡された。

 しかし昨年10月、ソウル高裁は事業家のC氏から4300万ウォン(約420万円)相当の経済的利益を受けたことを有罪と判断し、懲役2年6カ月及び罰金500万ウォン(約49万円)、追徴金4300万ウォンを言い渡した。性接待は時効のため、免訴判決が出たが、別の“スポンサー”から受け取った金銭が足を引っ張ったのだ。

 控訴審の有罪部分を破棄した最高裁の判断は、「法廷に出廷する前に検察に会った証人の供述の信憑性」を問題視したもので、差し戻し審で無罪が言い渡された場合、今回も検察のずさんな捜査が指摘されるものとみられる。

 さらに検察は、キム元次官の出国を阻止する過程で違法行為があったとして、チャ・ギュグン法務部出入国・外国人政策本部長とイ・ギュウォン元最高検察庁過去事真相調査団検事、イ・ソンユン・ソウル中央地検長を起訴した。高位公職者への性接待と収賄、これをずさんな捜査で免罪符を与えた検察という問題の本質はいつのまにか姿を消し、彼を処罰しようとした法務部や検察の関係者らが出国禁止手続きの問題を理由に処罰の対象に立たされる状況になった。

オク・ギウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/998920.html韓国語原文入力:2021-06-1102:42
訳H.J

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