朴槿恵(パク・クネ)政権時代、裁判介入を通じた「司法壟断」で被害を受けた日帝強制動員被害者と遺族が、国家賠償訴訟を起こした。
27日、本紙の取材を総合すると、強制動員被害者のイ・チュンシクさんと故キム・ギュスさんの配偶者は大韓民国に対して「それぞれ1億100ウォン(約980万円)の賠償」を求め、朴槿恵政権時代の裁判をめぐる取引と違法行為に対する国家賠償を請求する訴状をソウル中央地裁に提出した。二人は2018年10月、韓国最高裁(大法院)の全員合議体で「一人当たり1億ウォンの賠償」という確定判決を勝ち取った強制徴用再上告事件の原告でもある。
訴訟を代理したイム・ジェソン弁護士は「当時の裁判取引の疑いは、現在起訴され裁判を受けているヤン・スンテ元最高裁長官、イム・ジョンホン元最高裁事務総局次長だけでなく、当時の大統領や秘書室長、政務首席、外交部長官および次官、金・張法律事務所の弁護士など、多数の組織的共謀と実行で行われた違法行為」だとし、「このうち、裁判をめぐる取引の疑いで起訴されたのはヤン・スンテ元最高裁長官やイム・ジョンホン元次長などの少数にすぎず、裁判をめぐる取引という違法行為を犯した人たちを被告にするよりは、裁判の過程で彼らの違法行為を包括的に立証することに焦点を当てることにした」と説明した。
イ・チュンシクさんらは20005年2月、強制動員の被害を訴え、日本の戦犯企業である日本製鉄(当時新日鉄住金)を相手取って損害賠償請求訴訟を起こした。これを受け、最高裁は2012年5月、イさんらの請求権を認める趣旨で原審判決を破棄し、事件をソウル高裁に差し戻した。ソウル高裁は2013年7月、最高裁の判決趣旨に従い、日本製鉄に「一人当たり1億ウォンの支給」を命じる原告一部勝訴判決を言い渡した。しかし、破棄差し戻し審の判決を不服とした日本製鉄側が再上告し、2013年8月に最高裁に委ねられた再上告事件の判決は先送りにされ続けた。イさんらと支援団体は陳情書を出して記者会見を開き、早急な判決を重ねて求めたが、最高裁からは何の返事もなかった。文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後の2018年7月、検察は司法壟断事件を捜査し、イム・ジョンホン最高裁事務総局次長のUSBメモリーに保存された文書を家宅捜索で見つけ、この過程で2013年から2017年までのあいだヤン・スンテ最高裁長官やパク・ビョンデ最高裁事務総局長らと大統領府、外交部高官、金・張法律事務所の弁護士らが強制徴用再上告事件の裁判の遅延や裁判結果の調整において共謀した疑いが明らかになった。しかし、同年10月、最高裁判所全員合議体が最終判決を下した時は、すでに原告4人のうち3人が死亡した後だった。
検察の司法壟断捜査の結果によると、2013年2月の朴槿恵政権発足後、外交部がイム・ジョンホン元次長などを通じて「判決が早めに宣告されないようにすると共に、政府が意見を示す機会を提供し、外交的なレベルでの意味と波紋などを考慮して、全員合議体に付託することでより慎重に判断してほしい」という政府の要請を重ねて伝えており、ヤン・スンテ元最高裁長官などが意図的に審理不続行期間を延ばしたと検察は判断した。また、裁判に外交部の意見を反映できる「国家機関等参考人意見書提出制度」を導入するまで、裁判研究官の検討報告などの手続きを進めなかったというのが検察の起訴内容だ。最高裁事務総局が最大に力を入れていた上告裁判所の導入などについて大統領府と政府の協力を得るために、強制徴用再上告事件の裁判などに政府の要請事項を積極的に反映したとみなしたのだ。
原告らはこのような内容などを根拠に、「憲法が保障する公正かつ迅速に裁判を受ける権利を侵害された」と主張した。イム弁護士は「裁判をめぐる取引は、独立と公正という司法の価値がすべて崩れた反憲法的な事件であったにもかかわらず、少数の判事に対する起訴が行われただけで、事件の全容解明も、被害者に対する権利回復の手続きも、まったく進んでいない」とし、「今回の訴訟は、強制動員被害者の人権回復と歴史正義の実現、そして司法改革と民主主義の回復に向けた大切な一歩として歴史に記録されるだろう」と述べた。