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「性別適合手術受け強制除隊」ピョン・ヒス元下士、遺体で発見

登録:2021-03-04 02:56 修正:2021-03-04 11:02
ピョン・ヒス下士が昨年1月22日午後、軍人権センターで記者会見を開き、軍人として残りたいとの考えを表明している=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 軍服務中に性別適合手術を受けて強制退役させられたピョン・ヒス元下士(23、下士は階級名)が3日、忠清北道清州市上党区(チョンジュシ・サンダング)の自宅で遺体となって発見された。

 警察と消防の話を総合すると、ピョン元下士が自宅で死亡しているのを、出動した消防隊が3日午後5時49分ごろに発見した。清州市上党区の精神健康センターは、カウンセリング対象者として登録されていたピョン元下士と先月28日以降に連絡がつかず、自殺した可能性があると見て、消防署に通報した。まだ遺書などは確認されていない。

 警察関係者は「(陸軍を退役した後)昨年から清州で暮らしており、家族ともあまり連絡がつかず、心理カウンセリングで深刻なストレスを訴えていたため、精神健康センターが重点的に管理してきたと聞いている」と話した。

 忠清北道清州出身のピョン元下士は、2017年に陸軍副士官(下士官に当たる)として任官。2019年11月にタイで性別適合手術を受けた。ピョン元下士は軍務を続けることを希望していたが、陸軍は心身障害3級の判定を下し、退役審査委員会に付して、昨年1月に強制退役を決定した。当時、ピョン元下士は、退役審査を2日後に控えた昨年1月20日、人権委に陳情し、同時に、不当な退役審査の中止を要請する緊急救済申請を提起した。人権委は翌日の21日に緊急救済決定を下し、陸軍本部に退役審査委員会の開催を3カ月延期するよう勧告したものの、陸軍は退役審査を強行した。ピョン元下士は陸軍を相手取って行政訴訟を起こした。

 人権委は昨年12月14日に全員委員会を開き、陸軍の強制退役措置は人権侵害にあたるとして、陸軍参謀総長に退役処分を取り消すことを勧告した。また国防部長官に対しては、このような被害が再発せぬよう、関連制度を整備するよう勧告した。人権委は決定文で、陸軍の決定は職業遂行の自由を侵害する行為だとし、「陸軍は、明確な法律的根拠なしに、恣意的に性別適合手術を心身障害要件と解釈し、被害者を退役処分にした」と指摘した。続いて「ピョン元下士の健康状態を『現役としての服務に適さないケース』とみなす根拠も見いだせない」と指摘した。

 軍人権センターのイム・テフン所長は3日夜、「本日、トランスジェンダー軍人ピョン・ヒス元下士が亡くなったことをお伝えする。詳しい状況を把握するために、軍人権センターの常勤者が自宅に向かっている。後ほど詳細をお伝えする」と述べた。

 先月24日には、済州の性的マイノリティー運動家だったキム・ギホン(38)済州クィア文化祭共同組織委員長が死去している。ノンバイナリー(二分法的な性別区分に属さない人)トランスジェンダーのキムさんが周辺の人々に残した最後の言葉は「とても疲れました。人生も、直面する嫌悪も、私に対する憎しみも」だった。

 非正規の音楽教師でフルート演奏者でもあったキムさんは、緑色党から比例代表候補として2度の出馬経験を持つ政治家でもあった。昨年2月、自らと同様トランスジェンダーの政治家である正義党のイム・プルン予備候補の応援演説に立ったキムさんは、未来の自分の姿を予感でもしたかのように、最近数カ月間で2人の友人と死別したことを告白し、「性的マイノリティー社会では自殺企図、死の知らせは特別なことではありません。(…)向き合う壁がそれだけ巨大だから」と語っている。キムさんの死に際し国家人権委は「故人の死は、性的マイノリティーが直面する嫌悪と差別が、当事者にどれほど大きな苦しみを与えるかを示すだけでなく、私たちすべてに、これ以上性的マイノリティーの苦しみに背を向けてはならないという社会的責務があることを示している」とキムさんを哀悼した。

「他国の軍隊はトランスジェンダー軍人が認められているのに、なぜ韓国の国軍だけは許されないのか、私が率先して闘わなければと思いました」。ピョン・ヒスさんは昨年3月11日、本紙インタビューでこう述べた。写真は老姑山洞のある路地裏で=カン・ジェフン先任記者//ハンギョレ新聞社
オ・ユンジュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/985309.html?_fr=mt1韓国語原文入力:2021-03-03 21:10
訳D.K

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