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月城原発の放射能漏れ、本質外れた政争…住民たち「まず実態調査を」

登録:2021-01-13 01:41 修正:2021-01-13 08:54
保守メディア、野党「カタクチイワシにもトリチウム」 
誇張された危険と主張し、本質を曖昧に 
原子力安全法に「原発内の測定基準」なし 
「漏れた範囲や原因の確認のため官民合同調査を」
慶尚北道慶州市の月城原発で、放射性物質の規定の排出経路ではない地下にトリチウムが漏れ、物議を醸している。月城原発前の海辺に「地震津波避難案内板」が立っている=慶州/イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社

 慶尚北道慶州(キョンジュ)の月城(ウォルソン)原発の放射能漏れ事故をめぐる論争は、脱原発政策に反対する原発賛成派の攻勢の中で、「住民の健康」という本質から逸脱しつつある。保守メディアと保守野党は、漏れてはならない場所で高濃度のトリチウム(三重水素)が発見されたという事実には目を向けず、「カタクチイワシやバナナにもトリチウムは存在する」などの主張を展開する。地域の環境団体などは、消耗するだけの政治攻防をやめ、官民合同の調査を通じて、まず漏えいの範囲と原因を確認することを求めている。

 共に民主党は12日、月城原発敷地内の地下水から放射性物質のトリチウムが検出されたことについて「国会レベルの調査の必要性も綿密に検討する」と述べた。民主党のキム・テニョン院内代表は、同党の院内対策会議で「トリチウムは生体の細胞と結合して遺伝子異常を誘発しうる放射性物質であり、決して軽く見ることはできない。老朽化した月城原発の放射能汚染の規模、原因、ずさんな管理がなされていないかを全面的に調査しなければならない」と述べた。同党のイ・ナギョン代表も前日、「月城原発の地下水から放射性物質が検出されたということ自体が衝撃的だ」と述べている。

 これに対し国民の力は、関連する常任委所属の議員を中心として、月城原発の早期閉鎖に関する検察の捜査を妨害するためのものとし、「科学的事実ではなく、一部を針小棒大に主張している」として反発を示した。これらの議員は「検出されたトリチウムは原発施設内の特定地点で一時的に検出されたもの。外部には流出しておらず、回収して処理された。バナナ6本、カタクチイワシ1グラムほどのトリチウムを怪談として流布させる低レベルな権謀術数は止めるべき」と主張した。

 昨年末にはハンギョレが、最近では文化放送(MBC)が、韓国水力原子力の「月城原発敷地内の地下水のトリチウム管理の現況および措置計画」の内容を相次いで報じた。その内容は、2019年4月に月城原発3号機のタービン建屋の地下水排水路のマンホールに溜まった水から、1リットル当たり71万3000ベクレルのトリチウムが検出されたというものだ。検出地点は放射性物質が発見されてはならない場所であり、検出濃度も原発で許容される排出基準(1リットル当たり4万ベクレル)の17.8倍にのぼる高濃度であることが問題だった。一方、「朝鮮日報」「韓国経済」などは、原子力専門家と韓水原関係者の口を借りて、相対的に高くならざるを得ない原発敷地内の放射能濃度(原発内の測定基準)を、外部への排出の際に許容される濃度と比較して危険を誇張していると主張する。保守野党の反論もこれを根拠としている。

 しかし原子力安全に関する法令には、どこにも「原発内測定基準」というものはない。原発の地下は規定の排出経路ではなく、原発の地下へ放射性物質が流出し続けることは、決して起きてはならないからだ。原発内には基準値がないため、その代わりの参考値として排出基準を提示したのだが、まるで別の基準があるかのように事実をごまかしているのだ。汚染された地下水は原発の外部にまで影響を及ぼす可能性があるにもかかわらず、韓水原と規制当局は漏れた原因、規模、影響を正確には把握していない。

 利害当事者と言える月城原発周辺の住民らは、口で争ってばかりいないでまず実態調査を行うことを提案している。脱核慶州市民共同行動は12日の記者会見で「韓水原の善意に任せていては、絶対に事態は解決できない」と述べ、住民らが参加する官民合同調査委員会の設置を求めた。そして「どこからどれくらい漏れているのか、地下水に乗ってどこに流れていくのか、韓水原も知らないし原子力安全委も知らない。何も分からない状況が、我々をさらなる恐怖と危険へと陥れている」と述べた。環境運動連合も前日、「問題の原因を正確に把握するために、官民合同の調査を実施すべき」と要求している。

キム・ジョンス先任記者、ソン・ホジン、パク・キヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/978449.html韓国語原文入力:2021-01-12 17:09
訳D.K

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