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核賛成派が「脱原発反対」の根拠とした国連報告書の要約に誤り

登録:2020-11-10 01:44 修正:2020-11-10 08:19
原発推進派が「脱原発反対」の根拠とした報告書の誤りを初めて確認 
「温暖化防止の過程で原発の割合が増え」 
IPCC特別報告書の原本とは正反対 
本文では12.1→8.1%に減 
著者2人、指摘に同意…修正へ
原子力発電所の冷却塔から白い煙が噴き出している=ゲッティ・イメージバンク//ハンギョレ新聞社

 2018年10月に採択された国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の地球温暖化に関する『1.5度特別報告書』は、地球の気温を産業化以前より1.5度以上上昇させないための方法として、「2050年カーボンニュートラル(炭素中立)」(二酸化炭素の純排出量ゼロ)を国際社会に公式に提示した重要な報告書だ。脱原発を推進する側にとって、この特別報告書はエネルギー転換政策の土台であり、かつ障害だった。

 同報告書は、2050年までに電力生産の80%程度を太陽光などの新しい再生可能エネルギーで供給すれば、地球の平均気温を1.5度の上昇に止めておくことが可能だと展望している。これが土台だ。同時に報告書は、大幅な脱石炭を提示しつつも、原発については小幅な発電量の増加を予想している。これが障害だ。原子力工学界や一部のメディアなどの核賛成派陣営は、原発拡大論の主な根拠としてこれを積極的に活用してきた。「国連傘下の団体が、地球温暖化を防ぐためには原発を増やさなければならないと勧告した」といったふうにだ。

 ハンギョレは、この特別報告書の内容を綿密に再検討する過程で、核賛成派陣営の原発拡大論の根拠となった資料の中に一部誤りがあることを発見し、総括主著者に確認した。ハンギョレの誤りの確認要請を受けた主著者は、IPCC事務局に伝え、関連内容の修正を進めていることを明らかにした。

 誤りが確認されたのは、195の加盟国が満場一致で承認した特別報告書に収録されている政策決定者向け要約(SPM)だ。本文は全5章562ページに達する膨大な量があるため、各国の政策決定者向けに、報告書の冒頭に26ページに圧縮した要約を載せている。国内メディアなどを通じて主に紹介され、引用されているのはこの要約だ。

 9日に要約を確認すると、地球の平均気温上昇を1.5度以内に抑える経路を提示し、「電力生産における二酸化炭素の回収および貯蓄(CCS)の活用を含む化石燃料と原子力の比率(shares)は、ほとんどの経路で増加するとモデリングされた」と簡略に述べている。この記述は、その根拠として示されている特別報告書の本文の分析資料の内容とは正反対だ。

1.5度特別報告書の要約。「電力生産における二酸化炭素の回収および貯蓄(CCS)の活用を含む化石燃料と原子力の比率(shares)は、ほとんどの経路で増加するとモデリングされた」との記述は、本文を要約する過程で発生した誤りと確認された//ハンギョレ新聞社

 この経路においては、全世界の原発による発電量は、2020年の10.84エクサジュール(EJ。1ジュールの10億倍の10億倍)から2050年の21.97エクサジュールへと倍増すると分析されている。しかし同じ期間に原発が総発電量に占める比率は「ほとんどの経路で増加」という要約の記述とは異なり、12.09%から8.1%へとむしろ減っている。2050年まで全世界の電力需要は大幅に増えるが、6倍近くに急増(26.28エクサジュール→145.50エクサジュール)した再生可能エネルギーが担うことになると見込んでいるためだ。太陽光を含む再生可能エネルギーが2050年の電力の総供給量に占める比率は77.12%に達する。

1.5度特別報告書の本文。原発の発電量は、電力需要の増加を受け、10.84EJから21.97EJへと増えるものの、総電力生産に占める比率は12.09%から8.1%へと減ることになる。総括主著者は事実上、誤りを認めている//ハンギョレ新聞社

 本紙は要約と本文の不一致について、その部分の総括主著者3人に今年9月末から電子メールで質問を送り、5回にわたって返信を受けた。返信を送ってきた2人は、要約の内容が事実とは異なることに同意した。英インペリアル・カレッジ・ロンドンのユーリ・ロゲル教授は「実に不幸な不一致だ。ほとんどのシナリオでは、核発電が増加したとしても総電力に占める比率は実際には減少する」と述べた。米デューク大のドリュー・シンデル教授は「同僚著者たちと連絡を取って、この問題について議論した。ロゲル教授がすでに送った回答に同意する」と述べた。ロゲル教授は不一致の理由について「修正できる不幸な不正確さだっただけで、他の理由はない」と述べた。そして、総括主著者たちが自らこの問題をスイス・ジュネーブにあるIPCC事務局に伝え、修正を進めていることを伝えてきた。

 IPCCが原発を増やすべきだと勧告したとか、同特別報告書が原発を拡大しなければ気候危機に対処できないとの結論を下した、という原子力学界などの説明は事実と異なる。IPCCは、国際社会が気候変動を巡る議論を進展させるために必要な科学的根拠を示すだけで、各国の政策の方向性には関与しないことを原則としているからだ。2018年10月の特別報告書の採択当時も「原発については中立的立場」と表明している。ロゲル教授も本紙に対し「原子力が地球温暖化1.5度のシナリオで拡大するのか、安定化するのか、あるいはほぼ完全に段階的に廃止されるのかは、技術的必要性ではなく社会がどのような戦略を好むのかによる選択の問題だ」と述べた。特別報告書の要約は気象庁気候政策課で翻訳された。気象庁関係者は「特別報告書はさまざまなシナリオを示しているに過ぎない。絶対的な義務事項や勧告事項のようなガイドラインではない」と述べた。

キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/969236.html韓国語原文入力:2020-11-09 20:27
訳D.K

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