「馴染みのある芸能人の例を見ると、私も本当に非婚出産ができるんじゃないかと期待がふくらみました」
非婚出産を夢見る会社員のキム・シウンさん(24)は、韓国で活躍する日本人タレントの藤田小百合さん(41・芸名「さゆり」)が非婚出産したというニュースを聞いて、こう語った。キッズカフェでアルバイトをするなど子どもが好きで出産を考えているキムさんは「以前に恋人が私の行動をコントロールしようとするなどしたことで、20~30代でも家父長的な文化が内在していると感じ、結婚はしないことにした」と打ち明けた。
今月16日、さゆりさんが非婚出産したことが伝えられ、韓国社会も非婚出産を一つの選択肢として考慮すべきという声があがっている。18日午後、さゆりさんの出産報告のインスタグラムを見ると「難しい決心を応援する」「おめでとう」など3400件余りのお祝いと支持のコメントが寄せられていた。
子どもを産みたい女性たちが非婚出産を考える背景には、結婚と家族制度が依然として女性にとって不平等であるという現実がある。就活中のHさん(27)は「両親の結婚生活を見て、結婚は自動的に女性を家父長制に組み入れると感じた」とし「出産して家族を作りたいという気持ちはあるが、結婚して不平等な育児と家事分担を抱えたくないと思った」と話した。また「妊娠中止権が尊重されなければならないのと同様に、女性が出産を選択する自由も尊重されるべきだと思う」と付け加えた。会社員のJさん(30)も「周りの結婚した女性を見ると、家事や盆・正月などの行事で不合理なことが多く、女性が犠牲になる構造。これを甘受してまで結婚したくない」と話した。
今年6月に人口保健福祉協会が未婚の30代の若者1000人を対象に行ったアンケート調査によると、結婚に対する否定的な回答の割合は女性(30%)が男性(18.8%)より高かった。女性はその理由として「一人暮らしが幸せだから」(25.3%)、「家父長制、性不平等などの文化のため」(24.7%)と答えた。
配偶者のいない女性が精子提供を受けて体外受精手術をすることを、現行法は違法と規定してはいない。しかし、配偶者のいない出産を好ましいこととは見なさない周辺の視線や、“正常な家族”を前提として作られている社会システムの下で、非婚出産を選択することは容易ではない。Jさんは「まず両親にも言ったことがないほど、女性が一人で子どもを産むことを異常と見る社会認識に対抗する自信がない」とし「新婚夫婦の伝貰(チョンセ:賃貸契約時に家主に一定金額の保証金を預け月々の家賃は発生しない賃貸方式)融資にしても、すべての政策が『正常家族』に合わせられている」と指摘した。結婚していない会社員のKさん(43)も、「一人で子どもを育てたいと思い、養子縁組や人工授精を調べてみたが、不可能だった」と話した。
専門家たちは、韓国社会が妊娠と出産に対する女性の自己決定権を認め、多様な形の家族を受け入れるべきだと指摘した。建国大学体文化研究所のユン・キム・ジヨン教授は「男性の存在の有無や同意なしに妊娠を自ら決定できる女性の自己決定権が認められるべきだ」とし「男性中心的、異性愛中心的な家族構成を脱して、多様な家族構成権を制度化することが重要だ」と話した。