ソ・ウク国防長官と米国のマーク・エスパー国防長官は14日(米国時間)、安保協議会議(SCM)を開き、戦時作戦統制権(戦作権)の返還問題を論議したが、早期返還の日程の不確実性をうまく解消することはできなかった。韓米間の戦作権早期返還をめぐる不協和音の火種は、完全には消えないとみられる。
両長官は会談後に発表した共同声明で「戦作権が未来連合司令部に移管される前に、相互で合意した戦作権移管計画に明示された条件が十分に満たされなければならないという点を再確認した」と明らかにした。韓米は2014年に戦作権返還の条件として、共同防衛を主導する核心軍事能力▽北朝鮮の核とミサイルの脅威への対応能力▽朝鮮半島および域内安保環境などに合意している。
軍当局はこれまで戦作権の早期返還を推進してきた。昨年、未来連合司令部の第1段階の基本運営能力(IOC)の検証評価を終えたのに続き、今年は第2段階の完全運営能力(FOC)、来年には第3段階の完全任務能力(FMC)の検証評価を完了する計画だった。しかし、今年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、2月の合同演習が中止となり、8月の合同演習は縮小施行され、日程に支障をきたした。当時、韓国側は「縮小した合同演習を検証評価を中心に実施し、戦作権の早期返還に支障をきたさないようにしよう」と主張した。しかし、米軍側が「合同防衛態勢の強化を中心に訓練しなければならない」と対抗し、検証評価は来年以後に延期されたのだ。
両国は共同声明で「戦作権の移管条件の充足に大きな進展があったことに注目した」とし、返還条件の達成を評価するために設置された「特別常設軍事委員会」(SPMC)の活動を取り上げた。しかし、韓米間で合意した評価はまだないという。
この日の冒頭発言でも、ソ長官は「戦作権返還の条件を早期に整え、韓国軍主導の合同防衛体制を抜かりなく準備するよう共に努力する」と明らかにしたことに反し、エスパー長官は「戦作権を韓国軍司令官に渡すためのすべての条件を完全に満たすには、時間を要するだろう」とブレーキをかけた。
エスパー長官は防衛費分担に関しては、腹を据えたように増額を迫った。エスパー長官は「我々は共同防衛の費用を分担する、もう少し公平な方法を探さなければならない」とし、「韓国やNATO、他の同盟国が集団安保により多く貢献することを求める」と述べた。彼はまた「在韓米軍の安定的な駐留を保証するために、できるだけ早く防衛費分担金で合意することの必要性に、全員が同意することを希望する」と述べた。
今回の共同声明からは、「在韓米軍の現水準を維持する」という表現が12年ぶりに外れた。この表現は、2008年に韓米首脳が在韓米軍を2万8500人水準で維持することで合意した後、毎年韓米安保協議会の共同声明に盛り込まれたものだ。米国が在韓米軍の削減カードを防衛費分担増額の圧迫に活用しようという意図ではないかという指摘が出ている。これについて国防部高官は、「大きな意味があるわけではない。様々な運用の柔軟性を持つということだが、共同声明には対応態勢に問題がないようにするという内容がある」と説明した。
両長官はまた、共同声明で在韓米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に関連し、「星州(ソンジュ)基地のTHAAD砲台の安定した駐留条件を用意するために、長期的な計画を構築することにした」と明示した。現在進行中の一般環境影響評価を終えた後、恒久的な星州基地の建設を明文化したものとみられる。THAAD配備に反対してきた中国の反発が予想される。
両長官はこの日の会議後に共同記者会見を開く予定だったが、急に取り消された。国防部関係者は「エスパー長官が前日、米国の大統領選挙が進行中の敏感な状況であることを理由に記者会見を取り消したいと要求し、これを受け入れた」と説明した。 しかし、戦作権返還問題などの会議内容をめぐる意見の相違のためではないかという観測が出ている。
一方、在韓米軍は5日、雇用労働部と全国在韓米軍韓国人労組に書簡を送り、「防衛費協定が締結されなければ、来年4月から在韓米軍で働く韓国人労働者が無給休職になる場合がある」と通告した事実が確認された。米国は防衛費分担金協定未決を理由に、今年4月にも韓国人労働者4000人余りを無給休職させたが、韓国政府が今年末まで労働者人件費を前払いする方式で両国が合意し、75日を経て業務復帰が実現した。在韓米軍側は今回の措置に対し「韓国政府が賃金を先払いすることにした合意が12月31日に効力が終わるため、防衛費協定が締結されなければ来年4月から再び無給休職になるという点を、『6カ月前に通知しなければならない』という米国の国内法により事前通知した」と説明した。韓米両国が引き続き防衛費分担金に関して合意できない場合、在韓米軍労働者が再び罪のない「人質」になる可能性が高い。