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韓国行フィリピン女性‘歌手の夢’閉ざされ‘性奴隷’

原文入力:2009-12-01午前11:40:36
‘芸術興行ビザ’で入ってきて米軍基地村に送られて

密着監視して‘ドリンキング ガール’として酒接待・売春 強要

ホ・ジェヒョン記者

京畿平沢市‘フィリピン移住女性の憩いの場 トゥレバン(共同の家)’に滞在している女性ジェニー(28・仮名)に先月8日緊迫した携帯メールが送られてきた。友人のローレライ(28・仮名・フィリピン)が慶南,巨済市,玉浦洞の‘B’外国人専用店に閉じ込められているということだった。ジェニーは戦々恐々としながら警察に助けを乞うた。一人では友人を救出する術がなかった。彼女は15日明け方に警察と共に店を訪ねた。

 業者主人はとぼけた。"そのような娘はいません。帰って下さい。" 鋭い声だった。ジェニーも警察も途方にくれた。その時、ローレライからまた携帯メールが届いた。彼女は「今、店の近くの宿舎に閉じ込められている」と場所を知らせてきた。業者主人は宿舎の存在自体を隠した。

 ジェニーは店のそばにある2階建てのフィリピン女性宿舎建物へ警察と共に走って行った。ドアが閉まっていた。警察がドアを叩くと、一人のフィリピン女性が裸足で飛び出してきた。恐怖に震えた表情のローレライだった。2人は互いにしっかり抱き合った。

 ローレライは去る3月、韓国で公演活動をすることができる‘芸術興行ビザ’(E6)を受け取り韓国に入国した後、外国人専用遊興店舗に送られた。当初舞台に上がり歌手として働こうと入国したが歌を歌ったことはない。売春と酒接待ばかりを強要された。ジェニーもやはりローレライのように巨済島まで売られたが辛うじて脱出した。

←(※クリックすればさらに大きく見ることができます。)

酒量のノルマを決め、できなければ‘バーファイン(連れ出し)’脅される

‘E6’ビザで韓国に入国したフィリピン女性たちへの売春強要が続いている。市民団体らは "明白な人身売買" として政府に対策を要求しているが政府は事実上手をこまぬいている。
 フィリピン女性の大部分はフィリピンと韓国の企画会社から歌手として仕事が出来るという提案を受け韓国行きの飛行機に乗る。しかし市民団体ではこれらの大部分が実際には米軍基地周辺の東豆川,平沢の外国人専用遊興店舗で酒接待をしたり売春を強要されていると主張する。パク・スミ トゥレバン憩いの家所長は「E6ビザで入国する大部分のフィリピン女性たちは米軍基地村の遊興店舗に送られ性産業に利用されていると見て良い」と話した。

←巨済市のある外国人専用遊興店舗の片隅でフィリピン女性たちが休んでいる。 写真ホ・ジェヒョン記者.

 事業主らは女性に1ヶ月に200杯から500杯までの酒(ジュース)販売割当量を与える。割当量を満たせなければ‘バーファイン’(一種の売春)を強要し、それも拒否すれば「フィリピンに送ってしまう」と警告する。帰国費用も持たずに入国したフィリピン女性たちはしかたなく事業主の要求に従う。米軍兵士らも彼女たちを歌手とは見ない。酒接待をするので‘ジュース ガール’,‘ドリンキング ガール’と呼ぶ。

 事業主らはどんなやり方でフィリピン女性たちの足を縛るのだろうか。業者には‘兄さん’と呼ばれる管理人がフィリピン女性たちを監視する。宿舎と業者周辺に腰をすえ、到着していくらも経たない女性たちを中心に監視する。10月末、東豆川のある店舗を脱出したフィリピン女性ジェッキー(26・仮名)は「‘兄さん’らがどこへ行っても追ってくるので逃げ出すのは容易でなかった」と話した。

‘兄さん’どこまでも追ってきて…“明白な人身売買”

 <ハンギョレ>取材陣は先月20日と21日明け方、平沢と東豆川の米軍基地周辺に密集する外国人専用遊興店舗を訪ね、脱出したフィリピン女性たちの証言を直接確認してみた。

 店舗には少ない場合は3,4人、多いところではあ十数人ずつフィリピン女性たちが働いていた。業者の主人はお客が入ってくればひとまずテーブルに座らせフィリピン女性を付ける。そして管理人と思われる韓国人女性管理人(ママさん)が客に近づき、フィリピン女性たちに絶えず‘ジュース’を注文してくれるよう頼む。‘ジュース’は量により1万ウォンから3万ウォンまで価格差がある。高いジュースを買うほどフィリピン女性は客に一層親切になる。

 どこに立ち寄っても歌の公演は見られなかった。皮膚が透ける薄い服を着たフィリピン女性たちが客と話を交わす姿しか見られなかった。平沢の‘B’店舗で会ったメリッサ(20・仮名)は「歌を歌うことは許されず、ママさん(訳注:韓国語でそのまま発音する)がクォータ(酒販売割当量 quota)を満たすよう強要している」とし「クラブから逃げたい」と打ち明けた。メリッサは対話を終えた後、舞台に上がり細い柱を掴みながら踊った。

公演活動のために入国する外国人に発給するE6ビザで韓国に入ってきたフィリピン女性たちに酒販売と性接待を強要することは出入国管理法違反の素地がある。出入国管理法18条は「外国人が大韓民国で就職するには大統領令の定めるところにより就職活動ができる滞留資格を取得しなければならず、何人も滞留資格を持たない者の雇用を斡旋または薦めてはいけない」と規定している。酒販売と売春がE6ビザの滞留資格範囲に該当しないため、これを斡旋または薦めた事業主と企画会社を出入国管理法で処罰できるということだ。

事業主と企画会社は鼻で笑い、政府は取り締まらず

←米軍基地村一帯の外国人専用遊興店舗密集区域。ここで人身売買させられるフィリピン女性たちが仕事をしている。

だが、事業主と企画会社には恐れる様子はない。事業主と企画会社に対する取り締まりに政府は事実上手をこまぬいているためだ。ある外国人専用遊興店舗主人は「事業主がフィリピン女性の口封じを徹底的にやっているので取り締まりに出てきても避けることができる」と自信がありげに話した。平沢で‘D’企画会社を営むある社長も「公演活動の他に別の仕事をさせるのは店舗所管であり与り知らないこと」として「法務部でビザを発給するからできること」と業者と政府に責任を転嫁した。

 法務部スポークスマン室はこれに対し「限られた人員で業者を全て管理することは難しい」として「事実上、E6ビザ発給過程を改善することは難しい」と明らかにした。名前を明らかにしたがらない労働部勤労改善指導監督官も「主に夜間営業をする業者は私たちの勤務時間と違うので監督しにくい」と話した。

 E6ビザで韓国に入ってくるフィリピン女性労働者は1999年876人から2008年2,001人まで大きく増えた。(法務部出入国管理統計年報参照)しかし、E6ビザで入国するロシア女性の売春が社会的問題になるや、我が国政府は2003年にビザ発給を中断した。代わりにフィリピン女性たちのE6ビザ発給が着実に増加している。

日本では2001年に7万人余りに達した日本入国フィリピン芸能労働者は2008年2,500人余りにまで減った。(フィリピン海外雇用局‘POEA’統計参照)韓国と似た副作用が大きくなるや日本は2006年頃から‘芸術興行ビザ’の発給を厳格に制限したためだ。

 市民団体らは政府が人身売買基準を確立し処罰規定を強化して、積極的に管理に立ち上がるべきだと主張している。キム・ヒジン国際アムネスティ韓国支部事務局長は「我が国政府も署名した国連議定書は、人身売買を‘搾取を目的に人を募集,運搬,取得する行為など’と包括的に規定している」として「フィリピン女性たちの場合も人身売買に該当するだけに政府が人身売買防止法制定など対策を講じなければならない」と主張した。

 巨済・平沢/ホ・ジェヒョン記者catalunia@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/390774.html 訳J.S