ソウル大学病院の“冷凍工”のKさん(53)は、1992年から同病院で働いていたが、最近になってようやく労働の楽しさを覚えた。ソウル大学病院の18の外注業者のうちの一つの非正規職労働者だったKさんは、他の613人の非正規職と共に昨年11月、病院に正社員として直接雇用された。薬品や冷蔵庫などを修理・管理するKさんは、直接雇用された後、仕事が増えたという。「以前はうちの業者が担当した建物だけを管理していたが、今ではほかの建物も私が手掛けるようになりました。仕事は大変ですが、責任感のためにやるしかないです」
それでもKさんは、2日のハンギョレの電話取材に対し、「楽しい」と語った。契約に対する不安がなくなったからだ。Kさんは28年間で10回以上の再契約を経て、218人のうち105人の同僚が解雇された。これからはそのような不安なく、仕事だけに集中できる。
解雇の不安が消えた労働者らは、ソウル大学病院にも前向きな風を吹き込んでいる。責任ある労働のおかげで患者の満足度が高まり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では皆が心を一つにして「安全な診療」を行うことができた。従来の正社員たちは、そのときどきに変わる外注業者の非正規職の再教育に労力を取られることがなくなり、業務に集中できるようになった。直接雇用効果が好循環しているのだ。仁川国際空港公社の非正規職の直接雇用が議論を呼ぶ中、直接雇用が非正規職当事者だけでなく、会社や顧客、従来の正社員にも肯定的な効果をもたらしうることを示す例だ。
ソウル大学病院の正社員労組のキム・テヨプ公共運輸労組医療連帯本部ソウル大学病院分会長は、COVID-19で危機に瀕していた今年初め、直接雇用の効果がはっきり現われたと見ている。「当院では防護服教育を全員に周期的に行なっています。マスクのような防護装備も全員に支給するのでより安全です。まだ非正規職の直接雇用がなされていないポラメ病院では、(現場を管理する)班長が着る方法を1回見せて終わり」。市立ポラメ病院はソウル大学病院が委託を受けて運営しているが、キム・ビョングァン病院長ら使用者側が「正社員への転換合意」の約束を履行していない。キム分会長はこのような措置は結局「患者の安全」の問題だと考えた。「正社員に転換することで、より安全に感染症を管理できるようになった」ということだ。
患者たちの満足度も上がった。非正規職の清掃労働者だったパク・ソユンさん(54)は昨年末、患者に初めて感謝カードをもらって戸惑った。「息子が入院していましたが、ベッドをとても誠実に掃除してくれてありがたかった」という内容だった。パクさんは「委託業者だった時は教育もなかったし、私たちが注射針に刺されても誰も気にしなかった。今は消毒の際の消毒剤の割合も細かく計量する」と得意げに話した。責任感が増したというパクさんは、「非正規雇用の時は出勤して仕事が終わって休むことだけを考えていた。これからは先頭に立って働く」と笑顔を見せた。公共運輸労組医療連帯本部のキム・ジンギョン・ソウル地域支部長は「非正規職が正社員になれば、教育と管理監督のレベルが高まり、顧客に有利になる可能性が高い。仁川国際空港公社問題についても、顧客の観点から考えてほしい」と話した。病院側も直接雇用の効果を肯定的に評価している。ソウル大学病院のチョン・ヨングォン行政処長は「正社員への転換により、中長期的にコストアップの要因があるのは事実だ。だが、転換した社員が以前よりも責任感を持ち、誇りを持っているため、業務効率が向上した」と述べた。