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「性的少数者迫害」から逃れてきたのに…「性経験はいつ?」と聞く難民審査

登録:2020-06-19 03:40 修正:2020-06-19 08:13
20日、世界難民の日 
「なぜトランスジェンダーになったのか?」 当惑する質問も 
審査官に対する人権教育の必要性を指摘
法務部=資料写真//ハンギョレ新聞社

 トランスジェンダー女性ティアラ(仮名)は、40年以上暮らしてきた故国を離れ韓国にやって来た。故国では、トランスジェンダーであるというだけで凶器で脅されたり、性暴力を受ける危険が常に存在した。家族にすら「お前の胸に入れた保形物を取らなければ、私が取る」と脅されたため、ティアラは逃げるように家を出て「難民」となる道を選んだ。しかし、友人の推薦を受けて選んだ韓国で、ティアラは最初から失望を感じなければならなかった。

 難民認定を受けるために対面した法務部所属の審査官は、性的少数者(セクシャルマイノリティー)に対する基礎知識すらない人だった。審査官は突然ティアラに「なぜトランスジェンダーをやっているのか」と尋ねてきた。続く質問はさらに当惑するものだった。「男性との性経験はいつしたか」というのだ。羞恥心を抱かせる質問だが、迫害を受けたことを証明しようと、ティアラは勇気をふりしぼった。「11歳ごろに、ボーイスカウトのキャンプに行ったとき、先生に強制的に性的暴行を受けた」。

 回答を終えると、予期せぬ反応が返って来た。審査官と通訳がティアラの告白を聞いて笑い出したのだ。審査官は「その先生があなたに初めて性について教えてくれたのだ」とも言った。ティアラは「審査官たちは無礼だった。性的少数者に対する理解が非常に足りないように見えた」と振り返った。

 このような経験を持つのはティアラだけではない。あまり知られていない性的少数者の難民に対する理解のない審査官が、人権侵害的な難民面接を行っているという指摘が出ている。世界難民の日(6月20日)を控えた18日、少数者難民人権ネットワークの説明によると、性的少数者難民を支援した経験のある弁護士や活動家は、「難民面接で、性的少数者の大半は、性生活に関する露骨な質問を受ける」と口をそろえる。「『正常な人間』になろうと考えたことは一度もないのか」「性関係を持つ時、複数人と同時にしたことはあるか」など、二次的な精神的被害を誘発する質問だ。

 同ネットワークで活動するチョン・スユンさんは「『性的少数者は乱れている』という偏見のもと、性的に露骨な質問をすることは、人間の尊厳とプライバシーを保護される権利を侵害するもの。性的少数者のアイデンティティーについて理解できるよう、(審査官に対する)教育を制度化すべきだ」と指摘した。

チェ・ユンテ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/950036.html韓国語原文入力:2020-06-18 20:52
訳D.K

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