韓国政府が南北鉄道連結協力事業を再び推進する。東海(トンヘ)線鉄道南側の断絶区間の連結事業をまず推進し、南北鉄道の連結と「東アジア鉄道共同体」の構想を現実化する呼び水にする狙いだ。
統一部と国土交通部は20日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が合意した「4・27板門店宣言」2周年の今月27日、「東海北部線推進記念式」を江原道高城郡(コソングン)猪津(チェジン)駅で行うと発表した。「東海北部線」は江原道江陵(カンヌン)~猪津区間(110.9キロメートル)で、朝鮮半島を縦断する東海線鉄道区間のうち、事実上唯一断絶された区間だ。
政府は、東海北部線推進記念式に先立ち、23日にキム・ヨンチョル統一部長官主宰で南北交流協力推進協議会を開き、「東海北部線江陵~猪津鉄道建設事業」を南北交流協力事業として承認する予定だ。そうなれば、実際着工に必要な予備妥当性調査を免除される道が開かれる。
「東海北部線江陵~猪津鉄道建設事業」は、形式上は国内基盤の建設事業だ。しかし、その含意と潜在力は大きい。これは南北首脳が2007年と2018年の首脳会談で繰り返し確言した南北鉄道協力事業はもとより、これを通じた「朝鮮半島新経済構想」と「東アジア鉄道共同体構想」の現実化に必ず必要な前提条件であるからだ。
1992年の「途切れた鉄道と道路をつなげる」ことにした南北基本合意書の採択から28年が経ったにも関わらず、江陵~猪津区間の110.9キロメートルが断絶状態のままであるのは、経済性が低いと見られているからだ。逆説的に、政府の「東海北部線江陵~猪津鉄道建設事業」の推進発表は南北鉄道協力実行への強い意思表示だと解釈できる。
朝鮮半島を縦断する東海線鉄道の北側区間は、老朽化したものの全区間がつながっている。豆満江(トゥマンガン)駅でシベリア横断鉄道(TSR)と、南陽(ナミャン)駅で満州横断鉄道(TMR)・中国横断鉄道(TCR)と連結され、ユーラシア大陸へと進むことができる。東海線の南側区間は「東海南部線」(釜山、浦項)が運行中で、「東海中部線」の江陵~三陟(サムチョク)(60.3キロメートル)区間は鉄路が敷かれており、三陟~浦項(ポハン)166.3キロメートルの未連結区間(浦項~盈徳(ヨンドク)区間は2018年1月25日に部分開通)は2022年の完成を目標に工事が行われている。
南北鉄道協力事業の両軸は西の京義(キョンウィ)線と東の東海線だが、北朝鮮側は東海線の方により関心を示してきた。金日成(キム・イルソン)主席は生前「ロシアや中国黒竜江省から輸出する物資を豆満江駅で受け取り、東海岸にある線路に運んでくれば、年間10億ドル以上の金を稼ぐことができる」(1994年6月30日、ベルギー労働党中央委員長との談話)とし、金正日(キム・ジョンイル)総書記も「釜山(プサン)港から東海線でシベリア鉄道と連結すれば良い」(2002年4月、イム・ドンウォン特使との談話)と述べたことがある。ロシアのプーチン大統領の極東発展戦略である「新東方政策」を活性化させるには、シベリア横断鉄道と朝鮮半島縦断鉄道の連結がカギとなる。
政府が4・15総選挙後、初の北朝鮮政策として「東海北部線江陵~猪津鉄道建設事業」を選んだ背景には、様々な考慮があったものと見られる。第一に、南北を往来する鉄道協力事業は国連・米国の強力な対北朝鮮制裁と南北関係の長期膠着のため、当面は現実性が低い。東海線の南側の断絶区間の連結にまず取り掛かり、朝鮮半島縦断鉄道の連結と関連した“強い実行意志”を北朝鮮を含む中国やロシアなど北東アジア関係国に示すことで、“連鎖反応”を期待しているのだ。
第二に、与党の4・15総選挙の圧勝で“低い経済性”という障害を克服する政治的動力が確保されたという判断もあった。2018年の4・27板門店宣言直後、国土交通部が国会に報告した内容によると、江陵~猪津の断絶区間の連結事業費は2兆3490億ウォン(約2075億円)と予想される。実際に建設事業が行われるためには、国会の予算承認が必要だ。共に民主党主導の第21代国会で予算承認が困難ではないというのが政府の予想だが、総選挙後にこうした変化した政治状況の見通しも北朝鮮への強力な“シグナル”として作用する。
第三に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期化に対応した経済活性化の期待もある。これに先立ち、江原研究院は、東海北部線建設事業による生産誘発4兆7426億ウォン(約4190億円)、付加価値誘発1兆9188億ウォン(約1700億円)、雇用誘発3万8910人が期待されるという研究結果を2018年に発表した。