11年ぶりに復職する父のため、娘は人の手を借りずに自分の手でマフラーを編んだ。小学生だった娘が大学生になるまで、解雇者として苦しい時間に耐えてきた父親に渡した復職祝いだ。7日朝8時、京畿道平澤(ピョンテク)の双龍(サンヨン)自動車本社正門前に立ったチョ・ムンギョンさん(57)の首には、雪のように真っ白なマフラーが巻いてあった。
「泣かないようにと思ってたんだけど、雨が降っているから涙が出る。喜ぶべき日なのに、先月24日に会社から復職延期のショートメッセージが来て、もどかしい気持ちでいっぱいだ。会社の中でまた闘う」。解雇されてから10年7カ月ぶりに再出社することになったイ・ドクファンさん(49)が話した。彼の「悲しい誓い」に、チョさんの目頭もたちまち熱くなった。この日、最後に残った双龍自動車解雇労働者46人の初出勤を祝う花束の贈呈式が開かれた双龍自動車本社正門前には、冬の雨がしとしとと降っていた。
彼ら46人は2009年6月8日に解雇された。この日の出勤は解雇の日から3865日ぶりだ。歓迎されるべき一歩だが、彼らは再び「闘争」を叫ぶしかなかった。双龍自動車が経営悪化を理由に、先月のクリスマスイブに復職延期を一方的に通知してきたためだ。約束を破った会社に、彼らは出勤を強行することで応じた。この日、出勤した金属労働組合双龍自動車支部のキム・ドゥクチュン前支部長は、「会社の延期通知に対する沸き上がる怒りを飲み込み、出勤して堂々と部署配置および業務配置を求める」と述べた。彼らはこの日、正門で社員番号と身分の確認を経て、工場内に入った。
工場内では昨年1月に先に復職した元解雇労働者10人あまりが「いくら何でもひどすぎる。即刻部署配置」などと書かれた横断幕を持って会社側の無期限休職決定に抗議した。昨年1月3日に復職したキム・ソンドンさん(52)は「46人の仲間の初出勤を祝うには心が重すぎる。労働者がどうして労働せずに賃金を受け取れるのか。われわれは堂々と働き、労働の代価を受け取る」と訴えた。
双龍自動車の解雇労働者の復職は「社会的大妥協」の結果だった。2018年9月14日、双龍自動車と双龍自動車企業労組、金属労組双龍自動車支部(解雇労働者)、政府側代表の経済社会労働委員会は、2009年の双龍自動車問題当時に解雇された労働者全員の復職に合意した。労使が合意を引き出し、政府が経営支援を約束した結果だった。
しかし、先月末までにすべての解雇者を復職させるという約束は守られなかった。双龍自動車は先月24日、経営悪化を理由に残る解雇労働者46人にショートメッセージで「無期限休職」を通知した。双龍自動車側は「彼ら46人の休職者は昨年7月に復職が決定しており、今年から賃金の70%が支給される。循環休職を実施中の事務職労働者と同じ条件だ」と説明した。
双龍自動車のイェ・ビョンテ代表取締役もこの日、復職者らとの会談で「会社の経営状況が厳しく(復職者46人の)部署配置は先送りするしかない」との従来の立場を繰り返したと、復職者らは伝えた。
双龍自動車労組は「9・14労・労・使・政合意を守らないのは不当だ」として、約束の履行を求めている。同労組は「46人に業務配置を行わないなら、京畿地方労働委員会に対する不当休職救済申立て、裁判所に対する賃金差額支払い仮処分申立てなど、あらゆる法的手続きを踏んでいく方針」だと明らかにした。彼ら46人の労働者は、出勤闘争を毎日続ける計画だ。10年あまりの困難な闘いは未だ終わっていない。