北朝鮮で「人民の理想郷」、「社会主義山間文化都市のお手本」と呼ばれる白頭山(ペクトゥサン)麓の三池淵(サムジヨン)郡が三池淵市に昇格した。「革命の聖地」と呼ばれる白頭山を有しているものの、規模が最も小さな両江道に従来の恵山市(ヘサンシ)に次いで二番目の市が誕生したのだ。
北朝鮮労働党中央委員会の機関紙「労働新聞」は、11日付1面トップで「両江道三池淵郡を三池淵市とする」などの内容が書かれた最高人民会議常任委員会の「第171号政令」(10日)全文を掲載した。三池淵市への昇格は金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が出席したなか2日に行われた「三池淵郡邑地区(第2段階工事)竣工式」を機に実現したものと見られる。
イ・サンミン統一部報道官は「三池淵郡が三池淵市になったことで、1直轄市(開城)、2特別市(平壌・羅先)、25市になったものと把握している」と述べた。
政令には市への昇格処置とともに、二つの行政区域再編内容が盛り込まれている。第一に、従来の「三池淵邑」をなくし、邑地区を「光明星洞(クァンミョンソンドン)、枕峯洞(ベゲボンドン)、ポッナム洞、イカル洞」に分けた。新たな洞の名称として使われた光明星は金正日(キム・ジョンイル)総書記の別称で、枕峰やボッナム(白樺)、イカル(朝鮮唐松)は金日成(キム・イルソン)主席の抗日武装闘争と関連がある。
第二に、三池淵の従来の「労働者区」を一般「洞」に転換した。例えば、「白頭山密営労働者区→白頭山密営洞、リ・ミョンス労働者区→リ・ミョンス洞」などだ。「労働者区」とは「里」に該当する北朝鮮特有の基礎行政区域だが、「住民のうち成人が400人以上で、成人のうち労働者の割合が65%を上回るところ」に編成・運営される。今回の「労働者区→洞」への転換措置は、三池淵を朝中接境山岳地域の国際観光都市に発展させようとする金正恩委員長の政策意志に合わせ、同地域の労働者集中度を下げる措置につながる可能性がある。
一方、10日「三池淵市金正日同志銅像前の教養広場」で「全国の党宣伝活動者による白頭山地区革命戦跡地の訪問行軍隊出発の会」が行われたと、「労働新聞」が1面で大きく報道した。「中央と地方の数百人の党宣伝活動者で組織された訪問行軍隊」は、金正恩委員長が最近、「全党的に、白頭山地区革命戦跡地の訪問を通じての革命精神武装事業で、もう一度激しい風を起こさなければならない」とし、「冬場にも革命戦跡地への訪問を多く組織すべきだ」と指示(「労働新聞」4日付1~4面)したことによる後続措置だ。朝米交渉の失敗と制裁の継続がかみ合った「新たな道」を念頭に置いた内部固め・統制強化措置の一環とみられる。