韓国最高裁(大法院)がサムスン電子のイ・ジェヨン副会長の贈賄金額を二審とは異なり倍以上多いと判断し、イ副会長が破棄差し戻しにより再び実刑を受ける可能性が高まった。1審で(チェ・スンシル氏の娘の)チョン・ユラ氏のために購入した馬3頭の購入代金(34億1797万ウォン=約3億円)と英才センター後援支援金(16億2800万ウォン=約1.5億円)を賄賂と見た反面、二審ではこれを無罪と判断したが、最高裁がこの日最終的に賄賂と判断したためだ。
最高裁が29日、イ副会長の上告審でこのような判断を下し、イ副会長が朴槿恵(パク・クネ)前大統領とチェ・スンシル氏側に渡した賄賂の金額は、運命を分ける“50億ウォン”(約4.5億円)を超えることになった。サムスンの法人資金を利用した賄賂であるため、イ副会長の“横領”金額になるが、特定経済犯罪加重処罰等に関する法律(特経加法)は、横領額が50億ウォン以上の場合、無期懲役または5年以上の懲役に処するよう規定している。最高裁のこの日の判決で、イ副会長に適用された賄賂額は合計86億8081万ウォン(約7.5億円)だ。
今回の最高裁宣告どおりに差し戻しによる裁判の結果が出るならば、イ副会長が実刑を避けるのは難しい。3年以下の懲役または禁固刑に限り受けられる執行猶予が適用されないためだ。これに先立ってイ副会長は、1審で賄賂額89億2227万ウォンが認められ、懲役5年刑を宣告され収監されたが、二審では賄賂額が“50億以下”の36億3484万ウォンに減じられ懲役2年6カ月、執行猶予4年を宣告され解放された。ただし、最高裁は控訴審の財産国外逃避罪への無罪判断は原審どおり維持した。特検は、イ副会長が会社資金37億ウォンをチェ・スンシル氏が所有したコアスポーツ名義のドイツ口座に送金し、馬の購入額など42億ウォンをドイツのサムスン口座に送ったことが、財産国外逃避罪に該当すると見た。財産国外逃避罪は、逃避額が5億~50億ウォンなら懲役5年以上、50億ウォン以上なら無期懲役または最低10年の刑に処される程に処罰の強度が高い。最高裁が財産国外逃避罪に対して無罪判断を維持したことにより、イ副会長の再拘束有無は差し戻し審による贈収賄罪判断だけにかかることになった。
イ副会長が実刑宣告を避けられる“微かな”可能性がないわけではない。破棄差し戻し審の裁判所が「酌量減軽」を適用し、法定刑の下限を懲役5年から2年6カ月に半減し、3年以下の刑と執行猶予を宣告する場合だ。「酌量減軽」は、情状酌量の理由がある場合に裁判所の裁量で刑の上限と下限を「2分の1」に減量することをいう。これに先立ってイ副会長の二審裁判所も、イ副会長が「大統領の強要により受動的に賄賂を渡し、それにともなう特典も利益も得ていない」と判断して執行猶予を宣告した。特経加法上、横領額が5億~50億ウォンなら最低3年の懲役刑に処することになっているが、酌量減軽をしたのだ。
だが、今回の最高裁による宣告で、裁判所が「酌量減軽」した理由の大部分が「除去」された状況だ。特に最高裁が英才センターに渡された16億ウォンを、(イ副会長のサムスン経営の)継承作業支援などの見返りにした「不正請託」と認め、贈収賄罪の性格自体が変わった。「受動的賄賂」ではなく「積極的賄賂」になり、「それにともなう特典や利益もあった」と見た。破棄差し戻し審の裁判所が「酌量減軽」を通じて、イ副会長に執行猶予判決を下すことは「理論的には可能だが、実質的には不可能」な状況ということが法曹界内外の大方の分析だ。