北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が24日、「新たに研究開発した超大型ロケット砲の試験射撃を指導した」と、「労働新聞」が25日付1~2面に写真18枚を添えて報道した。北朝鮮は8月25日を「先軍節」と呼ぶ。北朝鮮は7月31日と8月2日、「新型大口径操縦放射砲の試験射撃」を行ったと発表したが、「超大型ロケット砲の試験射撃」は初めてだ。「労働新聞」は「世界にない新たな主体兵器」だとし、「世界的にも最強の我々式の超大型ロケット砲」と自画自賛した。
これに先立ち、合同参謀本部は24日、北朝鮮が咸鏡南道宣徳(ソンドク)一帯から「短距離弾道ミサイルと推定される飛翔体」を東海に向かって2回発射したと発表した。韓国政府は24日午前8時30分、チョン・ウィヨン国家安保室長の主宰で国家安全保障会議(NSC)常任委員会会議を開き、「北朝鮮が非難してきた韓米合同指揮所演習が終了したにもかかわらず、短距離飛翔体を引き続き発射したことに強い懸念」を表し、「緊張を高める行動の中止」を求めた。
金正恩委員長は射撃実験を指導し、「勢いを増す敵対勢力の軍事的脅威と圧迫攻勢を制圧・粉砕する我々式の戦略戦術的兵器開発をさらに力強く進めていかなければならない」と強調したと、「労働新聞」が報じた。同紙は「すべての戦術・技術的特性が、計画された指標に正確に到達したことを検証した」とし、「(金正恩)最高領導者同志が非常に喜ばれた」と主張した。金与正(キム・ヨジョン)労働党宣伝扇動部第1副部長の姿も「労働新聞」に掲載された射撃実験に関連する写真に捉えられた。
1900字あまりの「労働新聞」の報道文は、「早朝遠い海の道を走って」きた金委員長の献身を強調すると共に、「純粋に自分の頭で着想・設計し、一気に成功させた」若い国防科学者たちに対する金委員長の絶賛を報じるのに焦点を合わせた。金委員長は「何よりうれしいのは、主体的国防工業の飛躍的発展を遂げていく、若く錚々たる人材部隊が育成されていること」だとし、「千万金でも買えない国の貴重な財宝」だと絶賛した。今回の射撃実験が、通常兵器の劣勢を挽回するための新兵器の開発や、進展の見られない朝米および南北関係に対する内部不満と動揺を鎮めることなどを念頭に置いた布石であることを裏付けている。
報道文には、韓国や米国を直接狙った金委員長の発言は見当たらない。ただし、「3年前の今日、世界的に数少ない戦略の潜水艦弾道弾の水中試験発射に成功した」という金委員長の回顧を盛り込むことで、2016年8月24日に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を行った事実を喚起した。
今回の射撃実験は、韓米合同指揮所演習の終了(20日)以降に行われたため、金委員長が親書で「韓米合同軍事練習が終われば、発射も中止する」と約束したというドナルド・トランプ米大統領の発言(10日)と食い違う。しかし、トランプ大統領は23日(現地時間)深夜、先進7カ国(G7)首脳会議に出席するためホワイトハウスを後にする前に、記者団に「我々は短距離ミサイルを制限したことがない」とし、金委員長が約束を破ったわけではないと述べた。問題視しないという意味だ。
射撃実験は「軍事的脅威を伴った対話には興味がない」(22日、北朝鮮外務省報道官談話)や、マイク・ポンペオ国務長官を「朝米交渉の前途に影を落とす妨害屋」だと非難し「対話も、対決もすべて準備が整っている」(23日、リ・ヨンホ外相談話)などの、最近の北朝鮮の主張の延長線上にある。北朝鮮は24日の「朝鮮中央通信」で、「我々は制裁解除にこだわらず、そのようなものと国の戦略的安全を絶対に交換しない」という主張が盛り込まれた“個人論評”を発表した。韓米が早期再開を促してきた朝米実務交渉に簡単に応じず、3回目の朝米首脳会談を念頭に置いて、議題をめぐる主導権争いをしばらく続けていく構えだ。交渉でも対決でもない、落ち着かない膠着局面が続く見込みだ。