朝米非核化実務交渉を総括するスティーブン・ビーガン米国務省北朝鮮政策特別代表の訪韓が、手ぶらで終わる公算が大きくなった。20日に訪韓したビーガン代表は当初、22日まで韓国に留まる予定だったが、帰国を一日さらに延ばした。最後まで北朝鮮と接触する余地を残したと見られる。北朝鮮には今からでも米国の対話の提案に応ずることを望む。
ビーガン代表の訪韓は、朝米非核化実務交渉の再開と関連して高い関心を引いた。ビーガン代表は訪韓期間中「北朝鮮から連絡が入り次第、実務交渉を再開する準備ができている」と意欲を隠さなかった。しかし北朝鮮は、米国の対話のジェスチャーに応答していない。むしろ、外務省報道官談話を通じて、F35Aステルス戦闘機の搬入などを問題視し「軍事的威嚇を伴う対話には興味がない」と明らかにした。北朝鮮は韓米合同演習の終了後にも既存の強硬態度を変えていない。
北朝鮮のこうした態度が、米国と対話しないということでないことは明らかに見える。北朝鮮は外務省報道官談話で「すべての問題を対話と交渉を通じて平和的に解決しようとする立場には変わりがない」と明らかにした。キム・ヒョンジョン大統領府国家安保室2次長も、ビーガン代表と会談した後に「朝米間の対話がまもなく再開されそうだとの印象を受けた」と雰囲気を伝えた。しかし、北朝鮮の態度を見るとすぐには交渉が軌道に乗りそうにない。29日に始まる北朝鮮の最高人民会議で人事と政策を整備した後、9月初めに交渉の場に臨む可能性もあるように見える。そうなれば、交渉はさらに相当期間持ち越されることになる。
北朝鮮はハノイ首脳会談決裂の衝撃がなお残っている状態で、米国の立場が当時と特に変わっていないことに失望していると思われる。北朝鮮としては、安全保障を始めとして北朝鮮が望む結果が保障されないならば、交渉のテーブルにすぐには出にくいと判断したようである。そうした点を考慮すると、北朝鮮が交渉のテーブルに出られるように、米国が態度変化の信号を送ることが必要と思われる。北朝鮮も交渉を先延ばしして間を置いてばかりいる時ではない。要求することは交渉の場を利用して要求しなければならない。交渉の軌道離脱状態が長引けば、交渉自体の動力が失われかねず、その結果は朝米のどちら側にも得にならない。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とドナルド・トランプ大統領が板門店会合で約束したとおり、朝米は実務交渉をすみやかに始めなければならない。