「国内のIT大企業で正社員の開発者の採用は競争率が300対1です。新人を採用する企業があまりにもないので、現実的に日本での就職を考えるようになったのに、外交摩擦のために政府が乗り出して自国の若者たちの国外就職の道を阻むなんて、とんでもないことじゃないですか」
今月末、ソウルのある私立大学のコンピューター工学科を卒業する予定のAさん(27)は、来月ソウルのCOEXで開かれる予定だった「2019下半期グローバル雇用・大田(テジョン)」が中止になったというニュースに憤りを露にした。多数の日本・ASEANの企業が参加するこの博覧会は、国内で日本での就業を準備する若者求職者らにとって事実上「入社面接」の機会が与えられる大型行事だ。しかし、雇用労働部は5日、日本政府のホワイト国(輸出管理優遇措置対象国、8月2日より「グループA」に名称変更)除外処置による「経済戦争」を意識し、「日本だけを対象にした下半期の就職博覧会は行わない計画」(イム・ソジョン雇用労働部次官)と明らかにした。雇用労働部の説明によると、最近3年間の政府の就業博覧会、国外研修プログラムなどを通じて国外就職に成功した若者求職者1万5712人のうち、日本の就業者は4358人(27%)で、最も高い割合を占める。
Aさんは「民間企業でもなく、政府や公企業が10年以上主管してきた行事が、受付期間に急に取り消されなんて信じられない」とし、「そうでなくとも最近就職が厳しくて心配なのに、若者たちの国外就職が日本に“脅迫用”のカードで使われたようで、荒唐無稽だ」と話した。来年2月の日本語学科卒業を控え、上半期の時に就職博覧会に参加したという大学生のPさん(25)も「近頃のように就職が難しい時期に、数百の日本企業が参加する就職博覧会まで取り消されては、日本語専攻者たちの前途は絶望的」とし、「国民として理解はできるが、どうしようもなく虚しく苦い気分になる。政府と民間レベルの問題を分けて考えなければならないとした政治家の話は何だったのか」と訴えた。
日本の輸出規制などによる「NO JAPAN」運動が社会の各界各層に拡散している中、政府と地方自治団体の「過剰対応」を批判する世論が高まっている。外交的な交渉過程で”テコ”の役割を果たせる民間レベルの自発的な不買運動とは異なり、官が主導するかたちのボイコット運動は、ともすれば国内外の韓国人たちの被害を引き起こしたり、国際関係で日本にまた別の「攻撃」の口実を提供しうるという指摘があるためだ。
ソウル中区庁の「NO JAPAN」の旗の設置に対する市民の批判も同じ脈絡だ。ソウル中区庁は5日、観光名所である明洞(ミョンドン)と清渓川(チョンゲチョン)一帯に「ボイコットジャパン」のイラストが描かれた旗1100個を設置することを明らかにし、実際に6日午前に設置に踏み切った。しかし、市民たちは「国民の『NO JAPAN』は賛成するが、官ですることは反対します」、「安倍政府に反対すべきであり、日本人に対して反対すべきではない」などの反応を示しながら、旗の設置を強く批判した。5日、大統領府の国民請願の掲示板には「ソウルの真ん中にNO JAPANの旗を設置するのを中止してください」というタイトルの文が掲載され、6日午後4時基準で約1万7000人の同意を得た。請願者はこの文で「ソウルの中心に『NO JAPAN』の旗がかかれば、日本人観光客の不快感が大きくなるなどし、自国の貿易挑発に賛成する日本の市民がもっと増えるだろう」とし、「国民の自発的な不買運動を政府が助長しているという見え方は、今後政府の国際世論戦にも悪影響を及ぼすだろう」と指摘した。ソウル中区庁は結局、6日午後に旗の設置を撤回した。
専門家らは、今回の“経済戦争”問題と関連した官・民の対応が「ツートラック」に分かれるべきだと診断した。ソウル大学国際大学院のアン・ドククン教授は「国民の自発的な不買運動は起きうるが、政府や公共機関が今のように過熱した反応を示すのは、世界貿易機関(WTO)交渉などで問題になる素地があり、事態が長期化した時、国際世論戦で我々に不利な影響を与える」とし、「最近、政府が直接対応に乗り出す様子を見せており、これまで我々が韓日問題に関して築いてきた国際社会の信頼が落ちる状況であるだけに、自制が必要だ」と話した。延世大学のキム・ギジョン教授(政治外交学)も、「日本のホワイト国除外措置以降、政府と地方自治体がすべき役割は、今回の事態が産業に及ぼす否定的な影響に備えることであって、民間レベルで起きている反日運動に乗り出すことではない」とし、「ソウル中区庁の『NO JAPAN』の旗のように官が出てくると、私たちが説得しなければならない日本の国民に背を向けさせる結果を招く恐れがある。私たちが反対しているのは安倍政府の政治的決定であって、日本という国自体ではないというメッセージを明確にする必要がある」と指摘した。