女性の人権伸張や民主化、朝鮮半島の平和のため生涯を捧げた李姫鎬(イ・ヒホ)金大中平和センター理事長が、南北の間を取り持つ“最後の贈り物”を残すだろうか。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が、高官級の弔問団を派遣する場合、膠着局面を打開する当局間の高官級対話につながる可能性もある。統一部は「李姫鎬女史葬儀委員会」の要請で、11日午前、南北共同連絡事務所を通じて北朝鮮側に故人の訃報を伝えた。
李姫鎬理事長は、金正恩委員長に直接会った最初の南側の人物であり、北朝鮮とも深い縁がある。李理事長は2011年12月の金正日(キム・ジョンイル)総書記が死去した際、平壌(ピョンヤン)の錦繍山記念宮殿(現錦繍山太陽宮殿)を訪れ、金正恩委員長にお悔やみを述べるなど、直接弔問した。当時、金委員長は「遠くから来て下さり、ありがとうございます」と謝意を表し、李理事長の宿泊先を、2000年に史上初の南北首脳会談が行われた百花園招待所(迎賓館)にするなど、手厚く礼遇した。李理事長は、金委員長の招待で2015年8月にも訪朝したが、悪化した情勢のため、面会は実現しなかった。
朝鮮半島の平和に向けた李理事長の努力や金正恩委員長との縁などを考えると、北朝鮮側が高官級弔問団を派遣する可能性が高いと見られる。ただし、北朝鮮側が最近、「抜本問題の解決」を主張し、韓国に対する圧迫を高めてきたことから、高官級の当局対話を前提にした弔問団派遣カードを出すのに負担を感じるだろうという悲観的な見通しもある。統一部当局者は「予断はできない」と述べた。北朝鮮が高官級の弔問団を送ってきたとしても、文在寅(ムン・ジェイン)大統領を表敬訪問する可能性は低い。李理事長の告別式は14日の朝だが、北欧3カ国を歴訪中の文大統領は16日正午ごろ帰国する予定だからだ。
これに先立ち、金大中(キム・デジュン)元大統領の死去(2009年8月18日)の際は、キム・ギナム労働党中央委書記やキム・ヤンゴン統一戦線部長など、高官級の弔問団が訪韓し、李明博(イ・ミョンバク)大統領への表敬訪問も行われた。北朝鮮は、チョン・ジュヨン現代グループ名誉会長が亡くなった際(2001年3月21日)、ソン・ホギョン朝鮮アジア太平洋平和委員会副委員長などによる史上初の弔問団を派遣した。一方、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が他界した際(2009年5月23日)は、弔問団を派遣せず、金正日総書記が弔電を送るのにとどまったが、切迫した第2回核実験(2009年5月25日)など、悪化した情勢が影響を与えたという分析が多い。