35と33、そして2。
35人は先月29日(以下現地時間)に発生したハンガリーのドナウ川の遊覧船ハブレア二号沈没事故で搭乗していた人数だ。33人は韓国人搭乗客で、2人はハンガリー人の船長と乗組員だ。
5日現在、韓国人33人のうち7人が事故直後に救助され、12人が死亡したことで公式確認されており、14人が行方不明状態だ。ハブレアニ号のハンガリー人船長のラズロ氏(58)と船員のザノス氏(53)も、韓国人14人とともに遺体すら見つからず行方不明状態になっている。
5日、ハンギョレの取材と現地報道を総合すると、ラズロ船長はベテランの航海専門家で、ザノス船員は幼い時から船を動かす仕事をしたかったという根っからの船乗りだった。
3日午後7時、ハンガリー人と在住韓国人数百人が集まり「追悼のアリラン」を歌った場で会ったあるハンガリー女性は、ラズロ船長と友達の仲だと自分を紹介した。匿名を求めたこの女性は、「理学療法士として働いているが、ラズロ船長の18歳の息子が私の顧客なので、その家族はみんな私と友達の仲」だと言い、「その息子がこの日私に治療を受けにきたが、普段父親が着ていた錨の描かれたTシャツを着てきた」と話した。この女性の説明によると、ラズロ船長は「親切で責任感が強く優しくて、口数の少ない穏やかな人」だったという。水と海の好きな正直な人で、幼い頃から船を操舵するのが夢だったとも話した。この女性は「ラズロ船長はオランダでとても大きな船を運航していたこともあったが、今は大きな船より小さな船を走らせたいと言って、事故が起こった先月29日、本来彼の仕事ではなかったが他の船長に代わってハブレアニ号に乗り、事故に遭った」とし、「私はマルギット橋付近に住んでいるが、窓から事故現場を見るたびにラズロ船長を思い出してとてもつらい。船長にお別れの挨拶をしてあげたいし、韓国の人々にもすまない気持ちを伝えたい」と話した。
ハンガリーのメディア「ボス」もこの女性と同様な話を伝えた。匿名の船員2人はラズロ船長についてのインタビューで「ラズロ船長は遊覧船ハブレアニ号が所属した会社で5年間働いたが、非常に粘り強く、誠実で、危機の度にその危機を乗り越えてきた素晴らしい専門家だった」と話した。船員のレバンテは「ボス」とのインタビューで「私はラズロ船長と船員ザノスは二人とも一緒に運航してきたため二人をよく知っている」とし、「映像を見た時、ハブレアニ号が(沈没直前に)方向を変えたのは、大型クルーズのバイキング・シギン号がすでに後ろから追突し、前の部分が内側に巻き込まれたためだ。ラズロ船長とザノス船員の過ちではない」と話した。
行方不明になったザノス船員の81歳の老母は「ボス」のインタビューで、「一時軍人だった息子は、幼い頃から水に親しみ、ティサ川支流でとてもたくさん練習するほど船に対する情熱が強かった」と言い、「息子は数年前、『私に何か事が起こったらドナウ川に灰をまいてくれ』と言ったほど仕事に愛情をもっていた」と話した。年老いた母親は「最初は息子が生存者であることを願ったが、もう生きてはいないだろう。みんなが彼を愛していた」と話しながら号泣した。