北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とロシアのプーチン大統領の初の首脳会談が差し迫った23日午後、首脳会談場所として有力視されるウラジオストク・ルースキー島の極東連邦大学キャンパスに続く道路周辺とキャンパス内には、北朝鮮国旗とロシア国旗がはためていた。朝ロ首脳会談は2011年、金正日(キム・ジョンイル)総書記がドミートリー・メドベージェフ当時大統領(現首相)と会って以来、8年ぶりのことだ。
今にも雨が降りそうな寒空の下、同大学のS棟と向かい側の5棟のホテルはこの日、学生らの出入りも全面禁止されるなど厳戒態勢が敷かれた。金委員長とプーチン大統領の首脳会談は、普段学生たちがスポーツ授業を受けるS棟で行われる可能性が高いという。S棟は毎年9月にロシア政府が主催する東方経済フォーラムが開かれる時も、首脳たちの多国間及び個別会談の場所として使われた。金委員長と随行団一行は、向かい側のホテルで宿泊するものと予想される。学生証を持った同大学の学生がS棟に入ろうとすると、建物の中にいた保安要員が阻止した。理由を尋ねる学生に、保安要員は「大統領関連行事(準備)のため」と答えた。行事を準備する関係者と見られる人々が慌ただしく建物に出入りする姿や、建物の後ろに駐車された大きなトラックから装備を建物の中に持ち込む姿も見られた。
ホテルも外部からの接近がすべて遮断された。特に、ホテル1棟と3棟では、人々が慌ただしく行き交い、入口には進入を防ぐ鉄さくが建てられていた。3棟の入り口には白い遮断幕まで設置された。取材陣がホテルの方に近づくと、私服姿の保安要員たちが出て「近づくな」「写真を撮るな」と制止した。ホテルの各棟には貴賓が宿泊できる「プレジデンシャル・スイート」があるという。前日、金委員長の専用車と推定されるマイバッハが同大学に入ったという報道もあった。
ロシアのマスコミと現地消息筋の話によると、金委員長は24日午後、ウラジオストクに到着し、25日にプーチン大統領と単独および拡大会談を行うものとみられる。プーチン大統領は日程上、25日午前にウラジオストクに到着する可能性が高いという。この場合、ロシアのユーリー・トルトネフ副首相兼極東連合官区大統領全権代表が金委員長との晩餐を共にするものと予想される。
北朝鮮も同日、金正恩国務委員長のロシア訪問を公式発表した。北朝鮮官営「朝鮮中央通信」と「労働新聞」は「(金委員長が)ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチン閣下の招請で、まもなくロシア連邦を訪問する」とし、「訪問期間中、金正恩同志とロシア連邦大統領の間で会談が行われる」と報道した。
ロシアの日刊紙「コメルサント」は複数の消息筋を引用し、26~27日に中国北京で開かれる一帯一路首脳フォーラムに出席するため、25日にウラジオストクを後にするプーチン大統領と異なり、金委員長は26日まで現地にとどまる見込みだと報じた。金委員長がプーチン大統領との首脳会談後、ウラジオストク市内および近郊を視察する予定という報道も相次いでいる。
金委員長は平壌(ピョンヤン)から「専用列車」を利用してロシアに移動するものと見られている。現地の消息筋は「22日頃から普段とは異なり、ウラジオストク駅前の道路を整備し、駅舎を掃除する姿が見られた」と伝えた。現地マスコミの「ウラジオストク・ニュース」は「24日午後3時からすべての列車の運行を3番と4番ホームに限定し、残りのホームは統制する予定」だと報道した。24日からは小型船舶が接近できないよう、海岸側も封鎖されるという。
同日午前、北朝鮮の高麗航空輸送機や旅客機が1台ずつ、ウラジオストク空港に到着した。いずれも定期便ではないため、朝ロ首脳会談に関連した関係者と物資を載せたものと見られる。