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[インタビュー]損害賠償・仮差押え被害労働者は「“大丈夫”と言って死んでいく」

登録:2019-01-25 09:17 修正:2019-01-29 07:27
236人の損賠・仮差押さえ被害者に会った 
「手を取って」の活動家、ユン・ジソン氏 
 
「政府が労働者の実態調査に乗り出し、 
企業の損賠・仮差押えを防ぐべき」
損賠・仮差押え労働者約200人に会い、健康実態などを調査した活動家のユン・ジソンさんが今月21日午後、ソウル麻浦区孔徳洞のハンギョレ新聞社でインタビューしているキム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 21日、ソウル麻浦区(マポグ)のハンギョレ新聞社を訪れた「手を取って」(損害賠償仮差押えを抑えよう!手に手を取って)の活動家のユン・ジソンさんは、労働者たちに被せられた損害賠償・仮差押えというくびきを「幽霊」と呼んだ。現実的でない大金だが、そのお金が与える恐怖は生々しい現実だ。

 損賠・仮差押えの被害労働者たちはなかなか人と会おうとしなかった。史上初の損賠・仮差押え被害労働者の実態調査のため、ユンさんは彼らを一人ひとり説得しなければならなかった。「ある人はアンケート調査を2回も断りました。そうしてやっと会いました。宅配の仕事をしていて、想像できないほど忙しいそうです。でも、それが良いんだそうです。損賠をやられたことを考える余裕がないから…」

 多くの損賠・仮差押えの労働者たちが、生きるために忘却を選ぶ。ユンさんは損賠・仮差押えを受けても「大丈夫だ」「なんとか生きられる」と習慣のように話す労働者たちにたくさん会ったという。「つらいだろうに、どうしてそう言うのか」と聞くと、「忘れなければ生きていけないから」という答えが返ってきた。恐怖が生んだ忘却だった。大半の労働者は、実態調査に応じることを恐れた。多くの会社が訴訟で勝った後も損賠を執行していないためだ。すぐにやられるよりも、いつでもやられるかもしれないという事実の方が恐ろしいものだ。

 「新政権が発足してから、損賠・仮差押え労働者の実態を調査しなければならないと何度も要求しました。財閥など企業側では損賠のために自殺した事例は一部であるだけで、損賠を執行しないケースが多いのではないかと言うからです。しかし一部ではないんです。執行しないからといって苦痛でないわけでもない。それで、数字が必要でした」

 実態調査は高麗大学保健科学部のキム・スンソプ教授の研究チームが担当した。「私も損賠・仮差押え労働者の状況を数字で表せるのだろうか、という思いがありました。私が会った専門家の中で唯一『できる』と言った人がキム・スンソプ教授でした」。ユンさんはキム・スンソプ教授チームと何度も質問をつくる会議をし、全国を回りながらアンケートをした。長い間損賠・仮差押え問題の解決のために活動してきたユンさんに対する信頼があったため、なかなか姿を現わさなかった労働者たちも実態調査に応じた。そのようにして会った労働者が236人にのぼる。

 彼らの中には、一人で数十億ウォンの損賠金を抱えているケースもあった。「会社が損賠から差し引いてやるから『労組を脱退しろ』『会社を去れ』『会社を相手にした訴訟を取り下げろ』などの懐柔をします。揺れない人がいますか?通帳も家も差し押さえられているのに。そうやって人々が全員足を抜いて、一人で残ったら数十億ウォンを背負うことになるのです」

 ユンさんが実態調査をしながら真っ先に向き合ったのは「悔しさ」だった。「損賠・仮差押え労働者に会うと、切々とした悔しさを感じます。『ストライキをしたことが自分と家族まで死ぬほど苦しめられるほどの罪なのか』と考えるんです」

 労組を作ってストライキをするのは労働者の権利だ。しかし、会社が告訴・告発し損害賠償を請求すれば、労働者は自分たちのストが合法だということを証明しなければならない。この過程で会社は弁護士を雇い、労務チームを動員してストが違法だという事実を証明するのに全力を尽くす。一方、労働者たちは弁護士を雇う金も、捜査機関と裁判所を訪れる時間も足りない。創造コンサルティングのような労務法人の諮問を受けてストを誘導した後、労働者に損賠・仮差押えをかけ、労組をなくす戦略を立てた事実が明るみになった会社が多いが、企業を対象にした捜査は常に遅々として進まず、延々と後回しになる。

 ユンさんは悪循環が今後も繰り返されてはならないと考える。数百人に会ったが、まだ会っていない人の方がはるかに多い。「私にもできることなのに、政府はもっとうまくできるじゃないですか。政府が損賠・仮差押え労働者の状態について実態調査し、企業の無分別な損賠・仮差押えを防止する策を打ち出してほしい」

チョン・ファンボン、オ・ヨンソ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/879760.html韓国語原文入力:2019-01-24 20:45
訳M.C

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