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裁判の介入が明らかになったのに…「裁判官弾劾」を揺さぶる3つの詭弁

登録:2018-11-21 08:20 修正:2018-11-21 11:46
今月19日、京畿道高陽市の司法研修院で全国裁判官代表会議が行われている。今回の会議では「裁判取引」など司法行政権乱用疑惑と関連した裁判官の弾劾訴追を判事らが先制して国会に要求する案を話し合った=高陽/写真共同取材//ハンギョレ新聞社

 全国裁判官代表会議が司法壟断に関与した「現職裁判官の弾劾検討」意見を公式化した翌日の20日、自由韓国党など保守勢力は「無罪推定原則を違反」「世論弾劾」「国会の権限を侵害」などを挙げ、“弾劾揺さぶり”に乗り出した。法曹界では、弾劾制度の趣旨を歪曲するなど、2016年12月の朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾訴追当時の「防弾国会」の風景が再燃しているという批判が出ている。

■疑惑だけで世論弾劾?

 裁判官代表会議でも「確実でない疑いで国民世論を挙げて同僚裁判官を弾劾する」という反対意見があったという。保守系メディアはこうした発言などを挙げ、「世論弾劾」という主張を大きく取り上げた。

 しかし憲法上、裁判官の弾劾訴追要件である「職務執行における憲法と法律違反」行為は、検察捜査はもちろん、最高裁(大法院)の自主調査でも具体的に確認された事案だ。ヤン・スンテ前最高裁長官時代の2回目の調査、キム・ミョンス最高裁長官の就任後に行われた3回目の調査で、2014~16年に裁判所事務総局で作成した裁判介入および裁判官査察に関連した文書数百件が公開されている。内容があまりに具体的だったために、検察の捜査も相当部分これを根拠として進め、文書作成などを指示したイム・ジョンホン元事務総局次長は拘束された。事務総局の文書以外にも、日帝強制徴用事件の裁判介入などに関し“第3の機関”である外交部文書を通じて前・現職の裁判官らが関与した事実も確認された。

 かつてハンナラ党(現自由韓国党)が主導した故盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の弾劾訴追、セヌリ党の相当数の議員が参加した朴槿恵前大統領の弾劾訴追の時も「捜査と裁判で確定した事実」を根拠に弾劾訴追をしなかった。ハンナラ党は2004年、中央選挙管理委員会の「公務員の選挙中立義務違反」という“有権解釈”を掲げ、盧元大統領の弾劾訴追案を押し通した。

 2016年12月、朴前大統領弾劾訴追案の内容の相当部分は、大統領本人とチェ・スンシル氏らが犯した国政壟断に対するメディア報道、国会の国政調査内容などが中心だった。当時、国会弾劾訴追委員団(団長・クォン・ソンドン現自由韓国党議員)側は、「客観的証拠のない弾劾訴追」という朴前大統領の主張に対し、「弾劾訴追は刑事処罰の手続きではない公務員の罷免手続きであり、自由な心証で各種の証拠・参考資料を基に充分に判断することができる」と述べた。

 元判事のある弁護士はこの日、「事実や容疑が確定してから初めて弾劾訴追ができるわけではない。事実かどうかは弾劾手続きで明らかにすれば良い。最高裁による自主調査報告書や関連する被疑者の起訴状だけでも訴追が可能だ」と述べた。

■刑事処罰が確定していない?

 自由韓国党は、裁判官弾劾について「裁判が開始もしないうちに違憲行為を主張するのは無罪推定原則に反する」と主張している。朴槿恵前大統領側も同じ主張をした。これに対し国会弾劾訴追委員団は「無罪推定原則は人権が蹂躙されやすい被疑者や被告人に認められるものであり、違法行為をした公務員の迅速な罷免を目的とした弾劾訴追手続きに適用される原則ではない」と釘をさした。当時主審だったカン・イルウォン元憲法裁判官も「弾劾審判は100%刑事裁判のように進めることはできない」とし、朴前大統領の主張を一蹴した。憲法裁は翌年3月、まだ起訴されていない朴大統領を罷免した。

 このように憲法は、刑事処罰の有無とは関係なく現職の高位公務員(裁判官)が職務と関連して憲法と法律に違反したなら弾劾できるように規定している。弾劾審判の「目的」が処罰ではないからだ。建国大学法学専門大学院のハン・サンヒ教授は、国会で開かれた裁判官弾劾討論会で「弾劾審判は被訴追者が公職に再任し続けることが憲法秩序を守る観点から許されないか、国政を担う資格を失ったかを判断すもの」とし、「裁判官の有罪判決確定や無罪推定原則など刑事裁判の手続きが適用される必要はない」と指摘した。ある判事は「刑事裁判を経て刑が確定するためには少なくとも2~3年は待たなければならない。この場合、適切な懲戒の時期を逃す恐れがある。これに備えて憲法が予定しておいた手段が弾劾だ」と説明した。

■三権分立の侵害?

 裁判官代表会議で「裁判官弾劾の必要性」を議決したことが、国会の権限を侵害し「三権分立を違反」したという主張もある。自由韓国党は「弾劾は憲法が定めた国会の権限だ。このような権限行使に裁判官会議が関与するのは三権分立の原則に反する」と主張した。

 言葉どおり、弾劾訴追は国会の権限だ。裁判官代表会の決定に従うかどうかは、国会が決めればよい。それに伴う責任も国会が負えばいい。ある部長判事は「弾劾は任期が保障された裁判官を司法府で罷免できないため、憲法が国会と憲法裁判所に与えた権限」だと述べた。また別の部長判事は「大統領府と特定の裁判について論議して裁判部に判決の方向性を求めたことほど深刻な裁判の独立侵害はない。これに対して生ぬるい態度で臨むのは、こうした行為を今後も容認するという意味でしかない」と指摘した。

キム・ミンギョン、コ・ハンソル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/871028.html韓国語原文入力:2018-11-2022:31
訳M.C

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