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[記者手帳]危機の自動車産業、35万労働者を生かすには

登録:2018-09-29 07:37 修正:2018-09-29 12:22
4月30日、ソウル中区のプレスセンターで開かれた討論会「下請け取引の秩序確立と連帯賃金の実現ー自動車産業で新しい道を探す」の様子=パク・ジョンシク記者//ハンギョレ新聞社

 ソン・ユンモ新任産業部長官が27日、天安(チョナン)の自動車部品メーカーを訪問した。長官が業務開始初日に生産現場を訪れたのは異例だ。それだけ自動車部品産業の状況が尋常でないことを示している。昨年から現代起亜自動車の2次協力会社が相次いでワークアウト、法定管理を申請している。今年に入ってからは、売上高が一兆ウォンにのぼる大型1次協力会社まで危機説が広がっている。

 部品メーカーが崩れれば完成車メーカーも厳しい状況になるため、自動車産業危機説も口先だけではない。造船業に続き主力産業の自動車まで揺らげば、韓国経済も直撃を避けがたい。国内の自動車産業従事者は35万人にのぼる。扶養家族まで合わせると100万人を優に超える。7~8月の就業者増加数が数千人水準に急減したいわゆる「雇用ショック」が起きたのには、自動車の不振も大きな影響を及ぼしたというのが専門家たちの指摘だ。

 ソン長官は「韓国GMの構造調整と未来車市場の急成長、通商環境の不確実性などにより自動車産業が厳しい状況に直面している」と診断した。産業部は危機対策樹立に向け、今月初めから実態調査を進めている。

 危機克服のためには正確な原因分析が必須だ。イ・ハング産業研究院博士は「自動車産業の危機はすでに予告された災いのようなものだ」とし、「その中心には、納入単価の切り下げ、専属取引制のような不公正な下請け取引がある」と分析した。2次以下の中小部品メーカーがいくら努力をしても、完成車と1次協力会社が正当な対価を払わないという訴えは、昨日今日のことではない。正当な対価がなければ革新もないというのは常識だ。中小部品メーカーは競争力を高める余力も理由も喪失し、低賃金と低生産性の沼に苦しんでいる。部品メーカーにひとつの自動車メーカーとだけ取り引きするよう強要する専属取引は、現代版奴隷制と変わりない。

 先導メーカーである現代起亜自動車の成長が止まった2014年以降、中小部品メーカーの経営難は限界を迎えている。昨年から2次以下の部品メーカーが完成車と1次協力会社に緊急資金支援や企業買収の要請を相次いで出しているのもこのような理由からだ。しかし、反応は冷ややかだ。現代自動車の2次協力会社である泰光工業のソン・ジョンウ元社長は「現代自動車と1次協力会社の瑞延理化は助けるどころか、納入中止を武器に恐喝・脅迫したと検察に告訴し、経営権まで奪って行った」と訴えている。

 業界では口をそろえて構造調整の必要性を提起する。米国は年間1200万台の生産規模に部品メーカーが5600社ほどだ。韓国は400万台と生産規模は3分の1水準だが、部品メーカーの数は約4600社と米国と大きな差がない。構造調整によって雇用を失う労働者のための失業対策と、従来の人員を電気自動車・自動走行自動車など、未来自動車の生産に必要な専門人材に転換する再教育も欠かせない。

 しかし、これだけでは半分の対策という指摘を避けがたい。不公正な下請け取引が変わらない限り「焼け石に水」になる危険性が高いためだ。たとえ政府が中小部品メーカーに数兆ウォンの国民の血税を注いでも、結局単価の引き下げなどを通じ、大企業と1次協力会社の懐に流れるのは目に見えている。

 完成車メーカーの自助努力も重要だ。国内市場の70%を掌握し、需要の独占体制を構築した現代・起亜自動車は、部品市場まで掌握した。現代モービスなど現代自動車系列会社の部品市場占有率は50%に迫っている。現代自動車の元役員は「現代自動車系列の部品会社は、現代起亜自動車を相手に『濡れ手に粟』の商売をしてきた」とし、「競争力のない部品会社はすべて整理し、完成車の競争力向上と未来車の開発に力を集中させなければならない」と話した。

 完成車メーカーの労組も共存の知恵が必要だ。ハ・ブヨン現代自動車労組委員長は3月、ハンギョレとのインタビューで「現代自動車労組の30年に及ぶ闘争が社会の両極化をより深化させたという非難が少なくない」と反省し、大企業の賃金は小幅に上げ、中小部品メーカーと非正社員の賃金は大幅に引き上げる「下厚上薄の連帯賃金」を提案している。

クァク・ジョンス先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/863734.html韓国語原文入力:2018-09-28 22:45
訳M.C

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