本文に移動

国民年金保険料率、20年ぶりに「10%の壁」超えるか

登録:2018-08-18 05:51 修正:2018-08-19 19:13
[国民年金の改革めぐる議論] 
第4次財政計算の結果、2057年には基金が底をつき 
所得代替率と保険料率のパッケージ2案を提示
クォン・ドクチョル保健福祉部次官が8月17日午後、ソウル中区世宗大路の大韓商工会議所で開かれた「2018年国民年金財政計算の結果に基づく国民年金制度の改善方向に関する公聴会」に先立ち挨拶をしている=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 国民年金改革に関する初の“基本案”が示された。国民年金保険料率の引き上げなどが避けられないという内容が骨子だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権は国民年金を含めた公的年金の体系を堅固にし、「老後の所得保障」を強化するという改革の方向を提示した。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権以降の10年間、ほぼ中断された国民年金の改革が可能かどうかに注目が集まっている。

 17日、保健福祉部は大韓商工会議所で、「国民年金制度の改善方向に関する公聴会」を開き、第4次財政計算結果を公開すると共に、制度改善に向けた政策諮問案を発表した。国民年金法は、5年ごとに国民年金の財政健全性を観察する財政を計算し、この結果を基に制度の改編案を論議するよう定めている。2003年以降、計3回の財政計算が行われた。

 年金専門家などで構成された財政計算委員会(財政推計委員会、制度発展委員会、基金運用発展委員会)は現行制度をそのまま維持した場合、2057年に国民年金の積立基金が底をつくと見通した。2013年に推計した2060年よりも3年が繰り上げられた。今後70年間の出生率や期待寿命、経済成長率などの要因を考慮して推計した結果だ。

 少子化のため、年金保険料を払う人口はますます減少したが、高齢化と共に年金を受け取る人口は増えるためだ。

 2018年現在、国民年金加入者は2182万人、受給者は441万人だ。しかし、70年後の2088年には、国民年金加入者が1019万人に減少する一方、受給者は1272万人に増える。国民年金加入者100人が老齢年金受給者118.6人を扶養しなければならないことになる。2018年現在、100人当たり16.8人の割合だ。未来世代の負担が大きくなるという意味だ。

民主労総や韓国労総、全国社会保障機関労働組合連帯などの労組員らが8月17日午後、ソウル中区世宗大路の大韓商工会議所で開かれた国民年金制度の改善方向に関する公聴会で、プラカードを持って抗議している=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 制度発展委員会委員長のキム・サンギュ・ソウル大学教授(社会福祉学科)は、国民年金が「3重苦」に苦しんでいると診断した。

 第一に、生涯所得対比国民年金額を示す実質所得代替率が「小遣い年金」と呼ばれるほど低い。第二に、零細自営業者や非正規職など広範囲な死角地帯がある。第三に、国民年金基金が底をつくかもしれないという不安感と共に、現世代が多く受けるほど未来世代の負担は大きくなる「世代間の公平性」も問題だ。

 これに対する処方として、制度発展委員会はまず財政目標を立てることを提案した。今から70年後の2088年まで「積立倍率1倍」を維持するという目標の下、細部計画を練るということだ。積立倍率1倍とは、2088年の年明け時点の積み立て基金が、その年の総支出額と同じになるよう、基金を維持するという意味だ。積立倍率1倍を維持するためには、現行制度のもとでは、保険料率を現在の9%から2020年に16.02%、2030年に17.95%、2040年には20.93%まで引き上げなければならない。

国民年金の所得代替率・保険料率の変化(//ハンギョレ新聞社

 このような前提に基づき、委員会は保険料率の引き上げをこれ以上先送りできないということで、大きな枠組みで意見の一致を見た。保険料率は20年間にわたり9%に足止めされ、「魔の10%」の壁を超えられずにいる。

 具体的な案をめぐっては、委員会内部でも意見が二つに分かれた。政策諮問案は所得代替率や保険料率を連携した“パッケージ案”二つを提示した。

 国民年金所得代替率を高めることで、高齢者の所得保障体系の中での国民年金の役割を強化しようとする(ア)案と、財政安定化に向けて国民年金所得代替率を現在の水準に維持するものの、基礎年金・退職年金の強化など多層体系を通じて高齢者の所得を保障しようとする(イ)案だ。

 2018年基準の国民年金の所得代替率は45%だ。毎年0.5%ポイントずつ引き下げ、2028年には40%になるよう設計されている。文在寅大統領は大統領選挙当時、所得代替率の引き上げを約束した。

 (ア)案は、「老後所得保障の強化」に重点を置いた。この案は、現在の所得代替率の引き下げを中断することを目指している。2019年の所得代替率を今年と同じレベルの45%に維持するものの、保険料率を来年に9%から11%に引き上げる案だ。保険料率は2034年12.31%に引き上げた後、5年ごとに再調整される。保険料率の調整の際は、従来の70年ではなく、「30年」という短期推計期間で積立倍率1倍を維持することを目標に、社会的合意を引き出すというロードマップを提示する。

 特に(ア)案は、保険料率が18%を超えることになった場合、保険料ではなく、政府財政を投入したり、受給年齢を調整することを提案した。次第に基金の規模を減らし、事実上の「賦課方式」に転換できるという趣旨だ。現在、国民年金は保険料の一部を給与額で使い、ほとんどを積立基金に貯めていおく「部分積み立て方式」で運営されている。ドイツや米国、英国などは、積立基金を設けず、毎年必要な年金給与を税金や加入者からの拠出金で支給する「賦課方式」で年金制度を運営する。

 (イ)案は「未来の世代に責任を転嫁しない財政安定化」に重点を置いた。基礎年金を充実化し、退職金一時金を年金化する方式などで、韓国型多層老後所得体系を構築する代わりに、国民年金財政を安定化すべきという問題意識に基づいている。中下位階層は、基礎年金と国民年金が、中上位階層は国民年金と退職年金が、それぞれ中心になるという構想だ。

 この案は所得代替率を現行通り維持するものの、保険料率を2019年から10年間段階的に13.5%まで引き上げることを提案している。保険料率を調整する第1段階措置以降は保険料率は変更しない。第2段階の2030年からは期待寿命の延長などを考慮し、国民年金受給年齢を2033年は65歳、2038年は66歳、2043年には67歳まで引き上げる方式などで、財政を安定化するということだ。(イ)案が提案した受給年齢延長はパク・ヌンフ保健福祉部長官が「受け入れない」と公言しただけに、政府案に含まれる可能性は低い。

 委員会は、国民年金の細部改善案も提案した。国民年金加入上限年齢を受給年齢と一致させる案や、遺族年金の支給率を現行の40~60%から60%に拡大する案、離婚時に分割年金の受給を許可した最低婚姻期間を現行の5年から1年に短縮する案などを建議した。年金の期間を増やす「クレジット制度」を拡大しようという意見も提示された。2人目の子どもの出産から12カ月ずつ賦課された出産クレジットを一人目から適用すると共に、6カ月だけ認められてきた軍服務期間のクレジットを全体服務期間に拡大しようということだ。

 制度発展委員会は、国民年金以外にも基礎年金、退職年金など、高齢者の所得保障体系全般を再編し、老人貧困問題を解決することを目指したものの、明確な代案を提示できなかった。現在高齢者人口の半数以上は国民年金の受給者ではない。65歳以上の高齢者のうち、所得下位70%に月20万ウォンずつ支給される基礎年金については、国民年金連携減額の廃止や給与を物価と連動する案などを検討したが、結論を下せなかった。委員会は今後、国民年金や退職年金、基礎年金を包括して議論する汎政府レベルの「老後所得保障委員会」(仮称)の設置を提案した。

クォン・ドクチョル保健福祉部次官が17日午後、ソウル中区世宗大路の大韓商工会議所で開かれた「2018年国民年金の財政計算結果に基づく国民年金制度の改善方向に関する公聴会」の冒頭発言を終え、挨拶している=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 保健福祉部は同日発表された政策諮問案を基に意見集約を行い、9月末まで国民年金総合運営計画案をまとめて国会に提出する予定だ。盧武鉉政権当時、国民年金法改正案が国会で可決されるまで3年以上かかったことから、今後大きな波紋と難航が予想される。クォン・ドクチョル保健福祉部次官は、公聴会の挨拶を通じて、「国民年金改革は高齢者の所得保障と生活の質を決定する重要な事案として、国民の同意と社会的合意なしに推進することはできない」と述べた。

ファン・イェラン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/rights/858137.html韓国語原文入力:2018-08-18 00:06
訳H.J

関連記事