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盗撮事件「公平に捜査せよ」…恵化駅埋め尽くした怒り

登録:2018-05-21 05:55 修正:2018-05-21 09:27
糾弾集会に予想外の1万2千人集まる 
「公平に捜査せよ」スローガンを叫び 
「被害者が男性の時のみ迅速対応」と主張 
 
専門家「盗撮の処罰に消極的だったため 
『男性寄りの捜査』という不満出る 
女性らが集まった背景に注目すべき」
盗撮カメラ事件の被害者が男性だったため、警察が異例的に強硬な捜査を行っていると主張する人たちが今月19日午後、ソウル鍾路区恵化駅2番出口付近で公正な捜査と盗撮カメラによる撮影や流出、流通に対する解決策づくりなどを要求するデモを行っている/聯合ニュース

 赤い鉢巻、赤い服、赤いプラカード…。女性たちの怒りが赤色で噴出した土曜日だった。

 19日午後3時30分、ソウル恵化駅2番出口に、赤色を身にまとった女性1万2000人が集まった。「違法撮影に対する不公正捜査を糾弾する集会」に参加した女性たちは、「男性被害者は快速捜査、女性被害者は捜査拒否」、「公平に捜査せよ」、「同一犯罪同一処罰」などのスローガンを叫んだ。

 同日の集会は「ミートゥー(#MeToo)運動」に火がついてから開かれた数多くの集会・デモの中で、最も多くの人が参加したという点以外にも、その象徴性と集会の形など、さまざまな面で注目されている。女性の人権問題に長く取り組んできた専門家らは「弘益(ホンイク)大学ヌード盗撮」という個別刑事事件を通じて表出された女性たちの集団感情とその背景が何かを、真剣に省察する契機にすべきだと指摘した。

 今回の集会は、インターネットポータルサイト「ダウム」のあるカフェ(「違法撮影に対する不公正捜査を糾弾するデモ」)が主催した。同カフェは「弘大ヌードクロッキー授業での盗撮」の被疑者である女性モデルO氏(25)が拘束される2日前の今月10日に立ち上げられた。カフェ開設から約10日後の20日現在、会員数は2万7000人に達する。彼女らはこの事件の被害者が男性であるため、速戦即決で捜査が進められていると主張する。今月1日、インターネットコミュニティ「ウォマド」(Womad)に男性ヌードモデルのヌード写真が流布されてから12日後に、同僚女性モデルが逮捕された点を挙げ、通常より早かった報道と捜査の原因として、被害者が男性である点を挙げている。

 彼女らはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などで「ソラネット(盗撮映像などの投稿などが行われた韓国のアダルトサイト)閉鎖に17年、弘大検挙に7日」、「あなた達は海外サイトの捜査方法知っていたんだ」などのポスターを作って広報し、匿名で会話する集団チャットルームで、集会開催のための寄付金を募った。ピザやチキン、海苔巻きなど、集会参加者に食べ物を差し入れる後援活動の写真も掲載された。匿名で集まった人々がわずか1週間で1万人が越える大規模集会を実現させたのだ。盗撮被害者などを支援する市民団体「韓国サイバー性暴力対応センター」は「今回の集会はいかなる女性団体・市民団体とも関係がない」と話した。

 組織的背景を持たないにもかかわらず、彼女らは大きな怒りをもとに、素早く、また機敏に動いた。釜山(プサン)や東大邱(トンデグ)・大田(テジョン)・光州(クァンジュ)など地域ではバスを貸し切って集会現場の恵化駅に集結した。主催側は、当初参加人員を2000人と予想して警察に集会申告をしたが、参加人は集会開始前から2000人を超えた。集会場所も歩道に制限されていたが、同日午後4時に梨花(イファ)交差点から恵化洞ロータリー方面の4車線が統制された。参加者は、予想人員の6倍に達した。

 専門家らは「盗撮カメラ」をめぐり共有された恐怖心と反感が、彼女らを恵化駅前に呼び寄せたと指摘した。ソウル大学女性研究所のイ・ジンヒ客員研究員は「他の性暴力は被害者が被害を被った場合、直ちに認知できる。しかし、盗撮は撮られる当時はその事実を全く知らないため、より大きな恐怖として作用する」とし、「盗撮映像が流出された時、女性たちが受ける打撃もほかの性犯罪に比べて大きい」と話した。イ・ミギョン韓国性暴力相談所所長は「MeToo運動以降、変化に対する要求が続いており、盗撮問題は一つの起点となった」とし、「女性が人間的に尊重されない現実に対する怒りが『盗撮』という社会現象と相まって、爆発的に表出された」と分析した。

今月19日、ソウル新村駅近くで火花フェミアクション関係者らが、発足2周年を迎え「女性に安全な夜道」の実現を求めながら行進している/聯合ニュース

 「男女差別による不公正な捜査」という、彼女らの主張については、このような集団感情が形成された過程に注目する必要があると指摘されている。パク・ジン茶山人権センター常任活動家は「今回の集会は、生物学的女性のみに集会への参加を許可するなど、閉鎖性があったが、これはこれまで男性中心の権力構造から排除されてきた女性たちの怒りが表出されたものと見なければならない」とし、「彼女らの主張の是非にかかわらず、女性たちが集まった背景に注目すべきだ」と話した。彼女はさらに、「今回の集会は、女性運動団体ではなく不特定多数の“怒り”が発火したという点や、『ろうそく』以降、自らを抑えた現実に対し直接声をあげる直接民主主義の形という点も注目に値する」と話した。誰も解決してくれない問題について、女性たちが直接“匿名の組織化”に乗り出したのだ。

 2000年代以降、すでに深刻な問題として浮上した「盗撮」問題を放置してきた社会に対する指摘も相次いだ。イ・ジンヒ客員研究員は「女性なら誰も例外なく、盗撮の恐怖から逃げられない」とし、「韓国社会が盗撮犯罪をきちんと処罰していれば、女性たちが『男女差別による不公正な捜査』を主張することもなかっただろう」と話した。これに先立ち、韓国サイバー性暴力対応センターは声明を発表し、「(弘益大学の盗撮カメラ事件で)事件発生数日後に流布者を検挙し、被害者を保護するための処置をするきめ細やかな対応が印象深かった」とし、「どうして今になって異例的な対応や被害者保護が行われたかは、必ず問いたださなければならない問題」だと明らかにした。これまで女性たちの被害に対する指摘に応えなかった捜査機関や司法部、メディアなど権力機関に対する不満が、今回の捜査をきっかけに噴出したという指摘だ。

 集会参加者たちもこのような診断を裏付けた。前日恵化駅デモに参加したある高校生は「女子高内に男性らが無断で入ってうろつく場面を何度も目撃した。そんな時はひょっとして盗撮カメラが設置されたのではないかと思い、安心して学校のトイレにも行けないのが現実」だとし、「多くの人が同じように怒りを持っていることを感じた」と話した。19日夕方、新村(シンチョン)駅近くで開かれた「月光ウォーキング」に参加したある女性も「これまで、盗撮の被害を受けた女性が直接証拠を収集して警察に持って行っても『加害者を探すのは難しい』と言われてきた。しかし、今回の弘益大学事件を見て、『努力すれば捕まえられるんだ』と思った」と話した。

 警察庁の統計によると、盗撮カメラなどによる違法撮影犯罪は2010年の1134件から2015年には7623件に7倍も増えた。違法撮影犯罪の被害者2万6654人のうち女性は84%、男性は2.3%で、残りの13.7%は角度などの問題で性別が判明されない場合だった。女性の被害者が大半を占めている。

チャン・スギョン、パク・ヒョンジョン、チョン・ファンボン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/845444.html韓国語原文入力:2018-05-20 22:42
訳H.J

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