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扶養義務制はなくしたが…住居給付は依然として“非現実的”

登録:2018-01-09 08:25 修正:2018-01-09 17:20
参与連帯、中央生活保障委の資料を分析 
当初最低住居水準の賃貸料に合わせて 
現実化を検討したが、予算がなく後退 
貧困層1・2人世帯の保護には力不足 
 
受給者の93%は生計給付の受給者 
生計給付として受け取るお金を住居費に使用 
「基本的な住居の質に住居給付を合わせるべき」
住居給付受給者のイ・ユジョンさん(71・仮名)が3日午後、日当たりの悪いソウル城北区貞陵洞のアパートの半地下の部屋に座っている=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 「家賃を少し抑えられればまず入れ歯を作ろうと思います」

 3日、ソウル城北区(ソンブクク)貞陵洞(チョンヌンドン)のアパートで会ったイ・ユジョンさん(仮名・71)の家は、保証金200万ウォン(約21万円)に家賃30万ウォン(約3万2千円)の半地下の部屋だった。トイレは門の外にあり、寒い冬も温水が出ず、暖房があまり効かない室内では黄色のダウンジャケットを脱げない。イさんは3カ月前、数年間勤めたビル掃除の仕事を辞めた。イさんと離れて暮らす2人の子どもには、彼女を世話をする余裕はなかった。

 基礎生活受給者であるイさんは、今月から政府から毎月40万ウォン(約4万2千円)を支援される。生計給付(生活保護費・20万ウォン)と住居給付(住居補助費・20万ウォン)を合わせた金額だが、それさえも生計給付は基礎年金(20万ウォン)と国民年金(10万ウォン)を受けているという理由で金額が減った。月70万ウォン(約7万4千円)の収入のうち、電気料金などの公共料金と融資利子23万ウォンを除けば、47万ウォン(約5万円)しか残らない。そのお金でイさんは、毎月家賃(30万ウォン)と生活費を賄わなければならない。住居給付として受け取るお金が実際の家賃に及ばないので、当然生活費を減らさざるを得ない。イさんのように住居給付を受けている受給者は、昨年末基準で81万人だ。

 政府は最低住居水準を維持するのに足りない現行の基礎生活保障制度の住居給付額の現実化の必要性を認識しながらも、予算負担を理由にこれを無視したという指摘が出た。8日、参与連帯は「2017年中央生活保障委員会(中生保委)会議資料」などを基にまとめた報告書「住居脆弱階層1・2人世帯を保護できない住居給付」でこのように主張した。

 報告書によると、中生保委は当初、今年から住居給付額を最低住居水準の賃貸料に合わせて“現実化”する案を検討したが、10月から適用される扶養義務者基準の廃止による予算の負担を理由にこれを後退させたことが分かった。文在寅(ムン・ジェイン)政府の公約である扶養義務者基準の廃止に集中したため、住居福祉の質の改善は相対的におろそかになったという指摘が出ている。

 昨年8月に政府が発表した今年の住居給付額は、2017年比2.9~6.6%(地域別差等)上がった。これによって受給者のうち1級に分類されるソウルの1人世帯は21万3千ウォン(約2万3千円)、2人世帯は24万5千ウォン(約2万6千円)の住居給付が支援される。“現実化”する際の金額である30万7千ウォン(約3万3千円)、34万4千ウォン(約3万6千円)より9~10万ウォン少ない。

 問題は、大多数の住居給付受給者(93%)が生計給付の対象でもあるという事実だ。結局、最大50万ウォン余り(1人世帯)にすぎない生計給付で住居費まで賄わなければならないのだ。参与連帯が分析した結果を見ると、現給付額は国土交通部の最低住居面積(1人世帯14平方メートル)の住宅に住む人々が負担しなければならない「換算家賃」(保証金負担まで考慮した家賃で全家賃転換率4%適用)の半分の水準にすぎない。参与連帯は「住居給付の受給者のほとんどが生計給付として受け取る金を住居費に使っている。基礎生活保障対象者たちに最低水準の住居でも保障しようというのが制度の趣旨なら、土地住宅公社と社会保障情報院が確認した受給者の実際の賃貸料の水準に基準賃貸料(住居給付額の上限)を合わせなければならない」と指摘した。

 ソウル女子大学のチョン・ジェフン教授(社会福祉学)は「基本的な住居の質に対する社会的適正レベルを設定したならば、そこに給付を合わせていくのが原則でなければならない。そうしないままに対象のみ増やすならば、見かけだけの福祉拡大にすぎなくなる」と話した。

 これについて国土部の関係者は「住居給付の現実化を成し遂げられなかった点は残念だが、物価上昇率だけを反映した例年の引き上げ幅に比べると大幅に上昇したと言える。財政環境などを考慮すれば、扶養義務者基準の廃止とともに住居給付水準をここまで引き上げたのも大きな意味があると思う」と明らかにした。

パク・キヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/rights/826855.html韓国語原文入力:2018-01-08 21:24
訳M.C

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