政府が先月16日にタワークレーン総合対策を発表してから一カ月も経たないうちに再び大事故が起こり、3人が命を失った。政府対策が外注化など現場安全管理の後退の背景を変えないまま、空回りするのではないかと指摘されている。
9日午後1時、京畿道龍仁市(ヨンインシ)の農水産物総合流通センターの新築工事現場で、建物34階の高さ(85メートル)のタワークレーンの中間地点(64メートル)が折れて横に倒れ、3人が死亡し4人が負傷した。今回の事故を含め今年だけでタワークレーン事故により労働者16人が命を失った。最近5年間でタワークレーン事故死亡者も38人に増えた。特に2013~2015年にそれぞれ6人、5人、1人ずつだった死亡者数は、2016年(10人)に続いて今年2桁を超えている。
この日の事故は、最近相次いでいる事故と対策にもかかわらず、安全管理全般の実質的な改善は行われていないことを物語っている。何より、各種の対策にもかかわらず、工事現場の慣行には大きな変化がないと指摘されている。建設業界全般の外注化の流れの中、タワークレーン運用もまた零細業者に下請けとして任される割合が大きく増え、安全よりも工期の短縮など「スピード戦」を強調する慣行がそのまま残っているということだ。韓国労総全国タワークレーン設置・解体労組のチョン・フェウン委員長は「現在、建設会社のうち独自のクレーンを保有している所はほとんどなく、全体の85~90%以上は外注賃の賃貸業者が担っている」とし、「自社の装備保有が採算が合わないせいか、2000年代に入って外注化の割合が急激に高まった」と話した。市民安全監視センターのパク・ジョングクセンター長は「タワークレーン業種が完全に外注化し、零細企業が多い」とし、「新型装備を購入するためには最低5億ウォン(約5千万円)がかかり、原価マージンを回収するだけで7~8年がかかるため、安価な中国産クレーンを購入して全国を回りながら作業しているのが実情」と話した。
群小業者が雨後のたけのこのように増え、実効性のある安全教育や企業の管理も難しくなったことも原因に挙げられる。業界の専門家は「クレーンの設置作業者たちは資格教育そ36時間だけ受ければ資格証を受けられるが、その後には補修教育すら受けない」とし、「5~6人ずつチームを組んで事業所を巡回するが、一人でも教育に参加すれば作業ができない構造」と説明した。実際クレーンタワー作業に投入される作業員たちは、毎日2時間ずつの特別安全教育を受けなければならないが、今回の事故現場では前日、現場所長が席を外している間、特別安全教育も省いたまま作業を進めたという。
外注化は、タワークレーンの上で装備を操縦するクレーン運転士と設置・解体チームの円滑な意思疎通を妨げる要因にもなっている。運転士と作業チームが互いに他の会社に属する場合が多く、利害関係に衝突が起こるということだ。今回の事故現場でも、クレーン運転士と作業チームはそれぞれ異なる会社所属だったという。
業界慣行がなかなか改善されない中、政府総合対策に含まれた安全管理策は長い道のりの状態だ。政府は先月総合対策によってタワークレーンの実態を全数調査すると明らかにしたが、今回の事故現場は政府の点検対象でもなかった。雇用労働部景気雇用労働庁のチョン・ソンギュン庁長は「クレーンが数台あるところから優先順位をおいて点検を実施しているので、(クレーンが)1台だけ作業中だった事故現場は点検対象から除外されていた」と話した。京畿市庁の労働監督官15人が管内のタワークレーン事業場約140カ所のうち45カ所だけを点検し、残りの事業場は「自己点検」を誘導したということだ。
立法手続きなどによる対策作りと実行の間の“時差”も実効性を下げる原因となった。ファン・ジョンチョル雇用部産業安全課長は「対策の核心内容はクレーンの年式制限と検査の強化、元請会社の責任強化などだが、大半が法改正事項であり、現場ですぐに適用するのは容易でなかった」と話した。
一方、警察は10日、国立科学捜査研究院などとともに事故現場に対する精密鑑識を行い、タワークレーンの装備不良など設備の欠陥の有無と事故当時に現場の安全ルールが守られたかどうかなどを重点調査した。警察は引き上げ作業(クレーンを立てる作業)中に動いてはならないトローリーなど上部構造物が動いたという供述と、一部の装備が腐食した情況などを確保し、関連調査を続ける方針だ。