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[インタビュー]故キム・フン中尉の父「第2のキム・フンが出ないよう再調査を」

登録:2017-09-01 23:17 修正:2017-09-02 04:08
「軍疑問死事件の調査方式を改善しなければ、第2のキム・フンが生じる」 
「軍が19年間事件を歪曲し認めていない」
31日、故キム・フン中尉の父キム・チョク氏がソウル孔徳洞のハンギョレ新聞社屋で、故キム・フン中尉の資料を見せながら軍の捜査のずさんさを説明している=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 「キム・フン中尉の殉職が認められたからといって、死亡原因が明らかになったのではありません。再調査をすべきです。軍の疑問死の調査方式を改善しなければ、第2、第3のキム・フンはいつでも生じるでしょう」

 国防部が19年ぶりに故キム・フン中尉の死亡を殉職と認定した31日、キム中尉の父キム・チョク氏(74・陸士21期)の表情からは喜びより複雑な思いが読み取れた。殉職の認定は嬉しいが、息子が自殺したのではないということを軍が明らかにしなければならないということだ。彼はずっしりと重いカバンを手にしていた。20年間持ち歩いている書類カバンだ。息子の事件を説明する各種資料だ。キム氏の時間は息子が死亡した1998年2月24日で今も止まっている。

 31日、ソウル孔徳洞(コンドクドン)のハンギョレ新聞社屋で会ったキム・チョクさんが覚えているキム・フン中尉(死亡当時25歳・陸士52期)は、誠実で強い息子だった。キム中尉は友達の間で「まっすぐな手」というニックネームで呼ばれる模範生だった。祖国のために満36年間軍服を着、ベトナム戦争にも3年も参戦した父を息子は誇りとしていた。キム・フン中尉も職業軍人の道を歩んだ。

 だが、キム中尉は1998年2月24日正午頃、板門店共同警備区域(JSA)内の地下バンカーで右こめかみに銃傷を負って死亡しているのが発見された。最初の現場鑑識の2時間前にすでに自殺の報告が行われるなど、ずさんな初動捜査が行なわれた。軍はキム中尉が村上春樹の小説『ノルウェイの森』を読んで自殺したと説明したりもした。

 最高裁判所は2006年にキム中尉の遺族が国家を相手に起こした損害賠償訴訟で、初動捜査不十分による遺族の精神的被害に対する慰謝料を認めた。しかし、自殺か他殺かを究明するのは難しいと判断した。国民権益委員会(権益委)も2012年8月、バンカー内に格闘の痕跡があり、キム中尉のこめかみから銃口を押し当てた跡が発見されていない点などを挙げ、「自殺と結論しがたいことから、キム中尉の殉職を認めよ」と国防部に勧告した。しかし5年が経っても、国防部はキム中尉を殉職処理しなかった。

 キム氏は、国防部が最高裁の判決を恣意的に解釈し、死因を「自殺」と結論付け、これを対外的に知らせるのに活用したと憤った。「この19年間にわたって国会国政監査、最高裁判所、軍疑問死真相究明委員会、国民権益委員会が事実上『軍の自殺主張に問題がある』と指摘したにもかかわらず、最後まで受け入れませんでした。真実を隠蔽して歪曲したのです」

 キム氏は韓国が軍隊内の死亡、自殺はもちろん、軍疑問死の殉職処理に消極的だと主張した。「どの国も軍内で死んだ場合、人に害を及ぼしたのでなければすべて国立墓地または軍人墓地に埋葬しています。何の措置も取らない国は韓国だけです」

 キム氏は、強い軍隊は国民の信頼の中から作られると強調した。「正義のない軍隊は強盗と変わらないが、そのような軍隊を誰が信頼しますか。キム・フン中尉の事件は個人の問題ではなく、まだ真相究明されていない軍人死亡事件、現在軍に服務し、またはこれから入隊する大韓民国の若者や親たちすべての問題です」

故キム・フン中尉と父キム・チョク氏//ハンギョレ新聞社

シン・ジミン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/809250.html 韓国語原文入力:2017-09-01 14:07
訳M.C(1632字)

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