四面楚歌に陥った韓国
北朝鮮核能力は高度化するのに南北関係は遮断され
韓米同盟はギクシャクし韓日関係は冷ややか
米中「コリアパッシング」の兆候まで
歴代のどの政府よりも厳しい状況
南北関係に風穴を開け“礎”に
周辺国の民族主義に対抗するには
韓国が「ピース・メーキング」主導すべき
「トランプとは高次方程式の交渉が必要」
「南北・北米・6カ国協議を同時に稼動」との意見も
10日、エンジンをかけた文在寅政権の前に置かれた難題の中には“四面楚歌”状態に陥った韓国の外交・安保がある。李明博(イ・ミョンバク)・朴槿恵(パク・クネ)政権を経て、南北関係は完璧に遮断され、北朝鮮の核・ミサイル能力は一層高度化している。韓国外交の中心軸である韓米同盟は、ドナルド・トランプ政権発足以来、THAAD(高高度防衛ミサイル)配備や韓米自由貿易協定(FTA)問題をめぐり試験台に上がった。中国・日本とはそれぞれTHAADと慰安婦合意・少女像の問題で冷え切った状態が続いており、関係復元が難しい状況だ。歴代のどの政権よりも厳しい外交・安保環境の中で就任した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、この難関を乗り越えていかねばならない。
文大統領は10日の就任演説で「北東アジアに平和構造を定着させることで、朝鮮半島の緊張緩和の転機を作る」と明らかにした。選挙過程でも彼は韓国が主導的に北朝鮮の非核化を推進し、外交・安保危機を突破するという内容を盛り込んだ「大胆な朝鮮半島非核化、平和構想」を発表した。李明博・朴槿恵政権が主張した「北朝鮮先行動論」の代わりに、北朝鮮と米国など関係国による段階別の「同時行動」原則もこの構想に含まれた。文大統領が同日、「必要なら、すぐにでもワシントンに行く。北京と東京にも行って、条件が整えば平壌(ピョンヤン)にも行く」と話したのは、大統領が直接この過程を主導する意志を示したものとみられる。
問題は、すべての関係が断絶した北朝鮮との協議も、今すぐ行動に移すのはリスクが大きいトランプ政権との協議も、容易ではないということだ。延世大学のムン・ジョンイン名誉特任教授は「新政府の外交・安保は南北関係と韓米関係をどのように調整するかがカギとなる」と話した。ムン教授は「李明博・朴槿恵政権の外交が失敗した理由は、韓米同盟を最上位に置き、南北関係と韓中関係をその下の隷属的なものとして捉えていたからだ。それが私たちの思考と行動の幅を制限した」とし、「南北関係の改善を中心に問題を解決して行くべきだ」と助言した。
南北関係改善をテコにして、現在の外交・安保難局を突破しなければならないという主張には先月、米中首脳会談以降に行われている、いわゆる「コリア・パッシング」に対する問題認識もある。朴槿恵前大統領の弾劾以降、韓国政府が事実上空白状態だった隙を狙って、米中が朝鮮半島問題を主導していることに対する懸念だ。韓東大学のキム・ジュンヒョン教授は「トランプ・習近平・安倍首相・プーチンなど周辺諸国はいずれも“ストロングマン”だ。彼らが主張する強力な対外民族主義に対抗するためには、私たちが前面に出て“ピース・メーキング”をしなければならない。現在なくしてしまった外交のレバレッジ(テコ)を作るためには、南北関係の改善が必要だ」と話した。
一方、北朝鮮核問題を解決するためには韓米同盟を中心に国際社会の協調に焦点を合わすべきという主張もある。現在の対北朝鮮圧迫・制裁局面を維持し、北朝鮮を非核化に導かなければならないという案だ。亜州大学中国政策研究所のキム・フンギュ所長も「北朝鮮の核問題と関連して米中間の協力が強化されている状況で、南北関係中心の思考に傾倒すると、国際協力に亀裂をもたらすことになりかねない」と警告した。
昨年5回目の核実験後、北朝鮮は国際社会から強力な制裁・圧迫を受けている。韓国が南北関係を改善しようとしても、国連安保理決議などに抵触しない案を模索しなければならないという難点もある。正義党の外交安保政策を率いるキム・ジョンデ議員は「文在寅政権は南北対話、米朝対話、6カ国協議の3つの軸を同時に稼動し、朝鮮半島問題を解決できる礎を築くべきだ」と指摘した。
トランプ政権との疎通は、北朝鮮の核問題だけでなく、懸案として浮上したTHAADとFTA問題を解決するためにも重要だ。しかし、「トランプリスク」によって韓米関係の再確立が予告されたうえ、文大統領の“対応策”はまだ定まっておらず、これも容易ではないと見られる。キム・ジュンヒョン教授は「トランプ政権とは熾烈な高次方程式の交渉が必要である。トランプがTHAADや、防衛費分担金、FTAを関連付けて攻撃しているように、私たちもどのように連携し、パッケージ外交を展開するかの案を導かねばならない」と話した。
中国とはTHAAD問題を解決しなければならない。キム・フンギュ所長は「THAADの場合、米中間で比較的に敏感性が低下しているものとみられる。また、中国は北東アジアでのリスクを最小化するため、韓国との関係改善を望んでいる」と指摘した。しかし、中国が明示的反対の立場を崩さなかっただけに、米国と中国の体面を守る出口戦略をまとめなければならない。さらに、慰安婦合意再交渉の意思を明らかにした文在寅政権は「再交渉はない」とする日本政府と接点を見出さねばならない。
これらに加え、文在寅政権が朝鮮半島の危機克服に向けて提示した南北関係の改善、米国と中国の間の均衡外交を展開するためには、国内の保守勢力の反発も避けられないものとみられる。平和ネットワークのチョン・ウクシク代表は「超党的協力を要請しなければならない」とし、キム・ジュンヒョン教授は「光化門(クァンファムン)のろうそくの力で大統領になっただけに、国民を信じて率直に疎通し、国民から後押しされるのが必要だ」と話した。