本文に移動

[寄稿]チェコはどのようにしてMDを撤回したか?

登録:2016-08-21 22:40 修正:2016-08-22 07:22

 THAAD配備をこんな風に決めて良いのだろうか? 政府は国会を無視し、第一野党は自身の役割を回避した。制度が機能できないから、理性的討論の場を思想論争が占めた。公論の過程はなく、陣営の対立だけを煽る。21世紀の懸案を19世紀の方式で決めて良いのだろうか? ミサイル防御網(MD)論議は初めてではなく、韓国だけが体験する問題でもない。2006年から2009年までにチェコとポーランドが体験した経験を参考にする必要がある。

 その時も米国はチェコとポーランドのMDがイランの核ミサイルを防ぐための防御に必要と主張した。チェコの中道右派政権は、レーダー基地を「安保のオアシス」と言った。しかし、ロシアは強力に反発した。ヨーロッパにおける戦略的バランスが崩れ、核軍備競争が再燃され、先制核兵器使用の可能性が高まったと主張して報復を警告した。現在韓国が見ている風景と変わらない。

 重要なことは国内交渉だ。チェコの市民社会が立ち上がった。2006年6月、60余りの市民団体が連帯した基地反対協議体がスタートした。基地ができる地域の住民だけが孤独な戦いをしたわけではない。活動家は断食闘争を始め、レーダー基地を拒否する市長協議会が作られ、数十人のグリーンピース活動家がレーダー基地予定地を占拠した。そして政党も立ち上がった。社会民主党と緑色党は基地反対を核心選挙公約として掲げた。結局、レーダー基地は議会の批准を得られず、中道右派政権は崩壊した。

 ポーランドでは事情が違った。議会における基地反対勢力は少数だった。基地反対世論は高かったが、市民団体の力は微弱で、与党も野党も米国との安保協力を重視した。ただし、ポーランド政府は米国のミサイル防御網を受け入れる代価として、ポーランド空軍に対する米国の支援を要求した。

 2009年9月、オバマ行政府が東ヨーロッパのミサイル防御網計画を撤回した時、チェコは歓迎し、ポーランドは慌てた。ワレサ元大統領はその時「米国は常に自分の利益にしか気を遣わない。他国は目的を達成するための手段に過ぎない」と批判した。ブッシュ行政府のミサイル防御網は水泡に帰し、オバマ行政府は計画を変更した。北大西洋条約機構を前面に出して、海上迎撃機能を強化し、ルーマニアという新たな地上防御国家を見つけた。ヨーロッパでミサイル防御網を巡る論議は現在進行形だ。各国のそれぞれの対応がもたらした損益計算書を確認する必要があるだろう。

 ミサイル防御網を巡る強大国の激突が、ヨーロッパから始まって北東アジアに広がった。韓国に設置するTHAADはミサイル防御網だ。その網に入る意味を考えなければならない。THAAD配備は終わりではなく始まりで、北東アジア秩序の地殻変動を意味する。北核問題はどうなるのか? 北方の門を閉ざして韓国経済が持ちこたえられるのだろうか? そして莫大な軍備競争に耐えることができるのだろうか?

キム・ヨンチョル仁済大学統一学部教授//ハンギョレ新聞社

 なぜ代案がないのか?米国と中国の二者択一という単純図式から抜け出さなければならない。自らの目で情勢を読み、何が国家の利益なのかを判断すべきだ。強大国政治は常に対決を追求しながらも妥協する。米国と中国が韓国のTHAADで取り引きする可能性を考えないのか?国益という重心がなければ、とんでもない目に遭うことになりうる。

 THAAD配備の根拠として掲げる北核問題の解決方法を見つけなければならない。韓国は強大国に代わって問題を解決することはできないが、軍備競争の悪循環を地域協力の好循環に転換できる資格はある。朝鮮半島が北東アジア秩序の断層線であるからだ。今からでも韓国の運命は自らの力で決めなければならない。政府が国益を考え、野党が未来を心配し、マスコミが事実を報道する、それだけのことがどうして難しいのか?

キム・ヨンチョル仁済(インジェ)大統一学部教授

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/757675.html 韓国語原文入力:2016-08-21 19:05
訳J.S(1739字)

関連記事