「私の息子は今、北朝鮮の政治犯収容所に収監されています」。「私の両親も収監されています」
8日午後、ソウル・瑞草洞の「民主社会のための弁護士会」(民弁)事務室に現れた北朝鮮離脱住民のパク氏(20代女性)ら4人が、相談室でチェ・ヒジュン弁護士(民弁統一委員長)にこう切り出した。相談に同席した民弁公益人権弁論センターのソン・サンギョ所長が答えた。「見せてくれた資料だけでは訴訟が可能か判断つきません。ひとまず相談をしましょう」。4人はこの日、北朝鮮政治犯収容所内にいるという家族との関係を証明する資料を持参していなかった。
相談は1時間30分で終わった。当初から真剣な訴訟依頼というよりは、民弁に対する「抗議性」の訪問と見られていた。彼らを連れてきたのは自由統一脱北団体協議会のチェ・ヒョンジュン会長だった。チェ会長は記者に向かって「純粋な事件依頼」と言った。この団体は、民弁が北朝鮮レストランの脱北女性従業員に対する人身救済請求裁判を申請すると、先月「脱北者人身救済請求は反国家行為」という非難声明を出していた。今になって人身救済請求の弁護を民主弁護士会に委ねる理由を尋ねると、「民弁の能力ならば全て解決できると思う」という呆れた返事が返ってきた。この団体は今月1日、ソウル中央地裁に「北朝鮮政治犯収容所に対する人身救済請求訴状」も提出している。韓国の司法権は北朝鮮の政治犯収容所に及ばないため、裁判所では棄却される可能性が高い。
予断の必要はないが、最近の一連の動きから見て、「純粋な事件依頼」というこの団体の主張をそのまま信じるわけにはいかない。人身救済請求裁判に前後して保守系メディアは「北朝鮮を代弁する民弁」というような理念的報道をし、南北大学生総連合(共同代表ペク・ヨセフ、カンチョルミン)は、人身救済請求事件を任された民弁の弁護士を5日、ソウル中央地検に国家保安法違反の疑いで告発した。
裁判所の内部では、最近の社会の雰囲気を憂慮していることが感知される。統一部が先月20日、「北朝鮮の女性元従業員の事件は人身救済請求の対象になりえない」と裁判所を非難したことも一例だ。裁判所関係者は「国家情報院も法の監視と統制下になければならない」と話した。
この日彼らの相談を受けた民弁統一委員会の関係者は「社会的弱者を保護し、人権の価値を守るという原則の下に、民弁を訪れたすべての人に等しく相談の機会を与えなければならない。だが、心から弁護依頼をしているかは疑問」と話し、苦々しさを吐露した。北朝鮮離脱住民の人権問題を左右対決の構図にすり替えようとする、見えざる者たちがいるようだ。