登録 : 2016.01.29 23:39 修正 : 2016.01.30 06:30

『李コレクション』イ・ジョンソン著/キムヨン社

『李コレクション』イ・ジョンソン著/キムヨン社//ハンギョレ新聞社
 「李秉チョル(イビョンチョル、チョルは吉吉)」という名前で思い浮かぶ金、大金持ち、財閥、サムスングループ創業者というイメージは、実際のところ彼の一部分に過ぎない。 彼はもちろん大韓民国最高の富者であり財閥の代名詞だったが、文化財・骨董品市場では有名な収集狂でもあった。 李秉チョルがいなかったとすればサムスンはなかっただろうし、当然、湖巌(ホアム)美術館もサムスン美術館リウムも存在しなかっただろう。

 『李コレクション』は手に入れたい骨董品を一つ二つと買い集める好事趣味から始まり、最も多くの国宝級文化財を所蔵した私設博物館の設立者になるまで、サムスンの李秉チョル会長が何をどのように収集したかを紹介する“内部者”の記録だ。 父から引き継いだ“収集癖”で父親が始めた“国宝コレクション”を7倍以上に増やした李健煕(イゴンヒ)会長の行跡もまとめている。 それで本のタイトルも「李秉チョル・コレクション」ではなく「李コレクション」だ。

サムスン創業者の李秉チョル元会長はそれなりの見識を持って古美術品を買い集めた生前に彼が格別の愛着を示した国宝「伽耶金冠」(第138号)と青磁辰砂注子(第133号) =文化財庁ホームページより//ハンギョレ新聞社

李秉チョルと李健煕 
父子が代を引き継いで 
「国宝級」文化財を買い集めた後日談 
代表作20点、写真を交えて解説

 大学で考古美術史学を専攻した著者は、師匠であるキム・ウォルリョン博士の“指示”で1976年から「20年余りサムスン父子の渇望を補助する影となって」彼らのコレクションに深く関与したという。 この本はその期間の経験を盛り込んだ観察記であり後日談だ。 「李秉チョルから李健煕まで収集と博物館に関連した詳細なエピソードと内幕(中略)まさにその名品が大事に保存している波風と隠れた逸話を表わしたかった」

 ゴルフとともに二つしかない趣味が美術品収集だった父親の李元会長は、数ある国宝の中でも伽耶金冠(高麗金冠および装身具一式、第138号)と青磁辰砂注子(青磁銅画蓮花文瓢形注子、第133号)を心から愛した。 出勤すれば最初に伽耶金冠の所在を確かめた。 時には金冠を取り出して、付属遺物を付着してみる忙中閑も楽しんだ。 青磁注子の安全を心配した彼は、82年に湖巌美術館の開館を控えて厚さ30ミリの防弾ガラスで専用ショーケースを特注させた。 それでも安心できなかったのか、本物は別に保管し複製品を代わりに展示するよう指示したほどだった。

 青磁が好きな父親のイ会長とは異なり白磁を好んだ息子は、ホン・ギデのような専門収集家に習い見識を育てた。 父親は「高いと思った作品は誰がなんと言おうが購入しない」原則を守ったが、息子は金に糸目を付けなかった。 専門家の確認さえあればためらいなく買い入れた。リウムのその多くの所蔵品の中でも白眉に挙げられる白磁月壷(国宝第309号)は、著者がイ会長の出勤途中に決裁を受けて購入したものだ。 当時分譲アパート数戸分の代金を払ったが、イ会長は具体的な価格には関心がなかった。

 このようにして収集した作品を父親は湖巌美術館に、息子はリウムにそれぞれ展示し一般公開した。 父子が代を継いで買い入れた国宝は計37点、それより格下の宝物まで含めれば152点に達する。 澗松(カンソン)美術館の23点(国宝12点、宝物11点)、湖林(ホリム)博物館の54点(国宝8点、宝物46点)に比べれば、サムスン一家が所蔵している国宝級文化財は質量共に圧倒的だ。 著者はこのうち鄭ソンの「仁王霽色図」、高句麗半跏像(金銅弥勒菩薩半跏思惟像)など代表的な国宝20点を選び、概略の姿と考古学的価値、購入または入手の経緯を説明している。

 有能な収集家になるには財力が必須だが、大富豪であっても皆が立派な収集家になれるわけではない。「渇望と行動力」すなわち見識と執念が兼ね備わってこそ名実共に収集家になりうる。李秉チョルと李健煕父子はこの三拍子をあまねく備えた人物だったと著者は評価する。

 しかし主要国宝を手に入れた「詳細な内幕」や「隠れた逸話」は予想ほど多くない。 伽耶金冠も月壷も、ある日突然サムスンの手に入っている。 多くは盗品で始まり「闇の経路」で流通し、最後に陽の光を受ける骨董品の特性上、率直な叙述は難しいのかもしれない。加えて、「サムスンの検収と同意を得て」本を出したという著者の告白からも記録の限界を推し量れる。 その途方もない価格で世間の話題になったリヒテンシュタインの「幸せな涙」の後日談も出てこない。

カン・ヒチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-01-29 10:35
http://www.hani.co.kr/arti/culture/book/728415.html 訳J.S(2118字)

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