本文に移動

[インタビュー]太平洋戦争の韓国人戦没者遺骨収集、韓国政府の働きかけは不可欠

登録:2015-12-18 08:45 修正:2015-12-19 18:32
日本製鉄元徴用工裁判を支援する会の上田慶司氏
上田慶司氏=キル・ユンヒョン特派員//ハンギョレ新聞社

 「韓国政府からの要請がなければ日本政府が動くことはありません。政府があるというのに、なぜ遺族たちが自分の足で訪ねまわらなくてはならないのでしょうか」

 9日午前9時15分、東京・千代田区の参議院会館。日本製鉄元徴用工裁判を支援する会の上田慶司氏(57)が、少し離れた場所から笑顔で目くばせした。

 上田氏との縁は5月から始まった。彼はハンギョレ日本語版の代表メールを通じ、日本が起こした太平洋戦争で犠牲になった韓国人(朝鮮人)遺骨の問題を解決させる必要があると、何度も丁寧に取材を要請してきた。上田氏はこの日も、靖国神社に強制合祀された父親の霊を移してほしいと訴訟(「No合祀」訴訟)を起こした韓国人遺族らが、裁判出席のため東京を訪ねた機会を利用し、日本の議員を相手にした請願運動を企画した。8~9日の2日間の活動のため、大阪から東京に上京して様々な準備をしてきた。

太平洋戦争海外戦没者の遺骨収拾
半ば放置してきた日本政府が「DNA抽出」へ
新年からデータベースで遺族確認

遺骨だけで国籍区分はできず全体から抽出
韓国人も遺族の遺伝子を対照で可能
「韓国政府が要求して交渉すべき」

 日本では今、海外での戦没者遺骨返還問題で重大な政策変化が起きている。日本は戦後の70年間、国家の誤った判断で侵略戦争に動員され亡くなった数百万人の遺骨を探し、遺族たちに返還する事業を、事実上行ってこなかった。遺骨の近くで身元が確認できる遺品等が出てきた場合にだけ、遺族確認の糸口になるDNA検査をする方針であるためだ。

 このため、1999年からフィリピン、パプアニューギニア、旧ソ連など日本が侵略したアジア各地で約2万8000体の遺骨が確認されたが、遺族が分かった遺骨は11体に過ぎない。国家の責任放棄という社会的批判が起きた。

 上田氏が韓国人遺骨問題に関心を持ったのは2011年に遡る。90年代中頃、新日本製鉄(現新日鉄住金)を相手にした韓国人強制動員犠牲者・遺族たちの謝罪・補償訴訟に参加し親交を深めた遺族のナム・ヨンジュ氏(76)から、「父が亡くなったパプアニューギニアに一度行ってみたい」と聞かされたのが決定的な契機となった。

 上田氏は2012年、ナム氏ら韓国人遺族と共にパプアニューギニアを訪ねる。そこで彼が目撃したのは、島のあちこちに放置されたままの旧日本軍の遺骨だった。「初めは慰霊のための訪問だったが、現地で旧日本軍の遺骨を見て、問題解決が急務と考えるようになった」と上田氏は語る。しかし、日本政府は自国民の遺骨問題でさえ中途はんぱな対応をしていたので、韓国人のための対策を要求するのは事実上不可能な状況だった。

 その上田氏が「5月に重要な変化があった」と言う。参議院議員の白眞勲氏(民主党)らが日本の国会で遺骨返還問題を集中的に追及したことを機に、日本政府の態度が急変したためだ。その後、塩崎恭久・厚生労働相は、今後発掘されるすべての遺骨のDNAを抽出しデータベースを作り、遺骨発見地域で戦闘を行った部隊の遺族を捜し出し、DNA検査を受けるように誘導する方針を明らかにした。実際にこうした内容を盛り込む「戦没者の遺骨収集の推進に関する法律案」が衆議院を通過し、大きな異変がない限り、新年1月に開かれる定期国会で参議院通過が予想されている。

 問題は韓国人遺族たちだ。法案で問題になるのは、戦没者遺骨収集の対象を「日本本土または、その他地域で死亡した我が国(日本)の戦没者の遺骨」に限定している点だ。上田氏は「『我が国の戦没者』という表現は、事実上、日本人以外の韓国人や台湾人などを除外するための国籍条項」と指摘した。厚生労働省社会援護国は10月9日、朝鮮半島出身者の遺骨の処理方案を尋ねる遺族たちの質問に対し、「遺留品などにより朝鮮半島出身者だと考えられる遺骨がある場合は、これを受け入れず現地政府機関に通知した後、適切に処理されるだろう」と回答した。韓国人の遺骨は日本政府の責任ではないので、発掘されても処置しないということだ。とはいえ70年ぶりに発掘された遺骨は、韓国人と日本人の区別が不可能で、とりあえず全遺骨を収集してDNAを抽出した後、韓国人遺族のDNAと対照する作業を進めなければならない。

 上田氏が残念に思うのは韓国政府の対応だ。彼は「この問題は韓国政府の働きかけで日本政府に遺骨の公平な処理を要求すればすぐ解決できる」と語る。しかし、慰安婦問題解決のための韓日局長級協議を進めることにだけ気を使う韓国政府は、遺骨のDNA鑑定問題について発言を一切控えている。上田氏は「韓日両国が協議して韓国人遺族のDNAを抽出し、日本政府が現地で発掘した遺骨と対照すればすむことだ。予算など詳しい内容は両国が交渉を通じて決めればいい」と指摘する。

 「韓国政府が要求もしないことを日本政府が先にしたりしますか? 韓国政府が動かないから年配の遺族たちが苦労しているのです」

東京/キル・ユンヒョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-12-16 22:04

https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/722292.html 訳Y.B

関連記事