2014年仁川(インチョン)アジア大会は14個の世界新記録とサッカーなど球技種目の劇的な場面、北朝鮮高位級要人の閉幕式出席など、歴代大会に劣らない話題を残した。 だが、祭りが終わった後、主催側が受け取った計算書は悲惨なものだった。 「アジア大会で韓国第3の都市というブランド価値の上昇と20兆ウォン(1ウォンは約0.1円)の経済波及効果が予想される」という仁川市の“バラ色の展望”は夢想に終わったと見られる。 2兆ウォン以上を投じた今回の大会が興行に失敗したせいで、地域経済全体が沈滞の泥沼に陥る危機を迎えている。
「アジア大会後に残ったものは借金ばかり」。大会真っ最中の先月26日、ペ・ククァン仁川市政務副市長は予算担当公務員など約200人を招集した緊急会議でこう話した。 今回の大会にかかった費用は大会運営費4800億ウォンを含め何と2兆5000億ウォンに達する。 競技場16か所の新築など、大会関連施設の建設だけで1兆5216億ウォンがかかった。 政府は「文鶴(ムナク)競技場のリモデリング」を勧告したが、仁川市はそれを無視して主競技場を新たに建て4673億ウォンを使った。 監査院が競技施設と関係がないと指摘した体育公園敷地の買い入れ費用には1311億ウォンなど、見当違いのところに血税を注ぎ込んだ。 大会組織委は「大会運営費が2006年のドーハ、2010年の広州大会と比較して4分の1に過ぎない」と“倹約した大会であった”と主張しているが、費用削減の発端が主競技場をはじめとする無理な設備投資という点で説得力に欠ける。
こうして使われた費用はそっくり仁川市民が背負わなければならない“借金”として残った。 大会組織委は『ハンギョレ』との通話で「政府支援金2007億ウォン、市支援金1282億ウォンをはじめ、スポンサーシップ(470億ウォン)、放送中継権(245億ウォン)、チケット販売(265億ウォン)、その他収入(290億ウォン)などで運営費を賄った」と明らかにした。 運営費だけで見れば赤字ではないという説明だ。 問題は施設関連費用だ。 国庫補助金4677億ウォンなどを別にしても1兆ウォンを越える金をそっくり税金で賄わなければならない。 仁川市が出した「競技場建設地方債の発行および償還計画」を見ると、競技場などの建設費用を返済するだけで来年から15年間にわたり毎年600億~1500億ウォンがかかる。
緻密な事後管理計画を持たずに作られた競技場は、大会後にも苦労の種に転落する可能性が高い。 仁川市は新築競技場16か所の管理費用として、毎年数百億ウォン台の損失が発生すると見ている。 仁川市は借金論議に対して「主競技場の場合、慰安娯楽・ショッピング・文化施設などに活用して、最大限赤字を減らす」と話した。 国内でオリンピックやアジア大会のような大会が数兆円台の経済効果をもたらす“如意棒”のように宣伝されてきたが、大型スポーツ イベントが地域経済を蚕食する逆効果になりうるという事実を如実に示したわけだ。
仁川アジア競技大会後の論議は一層高まるものと見られる。 仁川市の今年末の予想債務額3兆1991億ウォンのうち、1兆ウォンほどが競技場などアジア大会関連施設を用意する過程で生まれた。 今回の大会余波で、仁川市の債務比率は39.5%に達し、これは安全行政部が指定する財政危機地方自治体基準(40.0%)に肉迫している。 財政危機地方自治体に指定されれば、地方債の発行や主要地域事業執行の度に中央政府の統制を受けることになる。 アジア大会の余波で300万市民が暮らす大型地方自治体の核心権限である財政運営権を失う危機に立たされることになったわけだ。
被害は結局、市民が背負うことになる。 ペ・ククァン政務副市長は最近、バスの準公営制、出産奨励金・社会団体補助金支給などを縮小するため、関連事業を原点から再検討しろと指示したと伝えられた。 当面の借金返済費用を用意するために市民の生活の質と直接関わる福祉事業に手を付けることにしたわけだ。
仁川アジア大会は予告された失敗という指摘が多い。 政治家出身の地方自治体首長が大会の効果を大幅に膨らませ“功績積み上げ”のために大会を誘致したことが発端になった。 大会誘致当時、3選を狙ったアン・サンス前市長は「アジア大会で20兆ウォンの付加価値効果と約27万人の雇用誘発効果がある」と広報した。 アジア大会は種目別、国別競技力の偏差が激しいうえ、オリンピックやワールドカップの影響でスポーツファンの目が肥えて興行効果が大幅に下落している。 大会の効果を過度に評価したといえる。
いくつかの人気種目を除けば、地上波放送会社が生中継もせず、ネイバーやダウムなどのポータルサイトと放送会社の中継権交渉がうまくいかなかったことも興行の失敗に一役買った。 広報効果を期待しにくくなると企業スポンサーと後援までが失敗する悪循環にはまった。 平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックを睨んで中央政府が積極的な支援に出なかったことも今回の大会に大きな打撃を与えた。 キム・ソンウォン仁川経済正義実践市民連合事務局長は「大型スポーツ大会の誘致を決める時、市民の意見を積極的に反映する装置が必要だ」と指摘した。