韓国電力の土地入札を控えて市場では「現代自動車グループが落札に失敗すれば数人の役員が問責されることになる」という話が出回った。本社を含む統合社屋建設に対するチョン・モング会長の意志がそれだけ強いという話だった。 ところが18日に現代車グループが韓電の土地を落札した後にも同じ“問責話”が飛び交った。 今回は「あまりに高い価格を提示して会社に大きな損失を与えた」ことが理由であった。
チョン会長は19日の役員会議で「ご苦労だった」と語り、こうした憶測を一蹴した。 しかし、現代車による韓電の土地引き取りの過程をめぐる話の内容を、そのまま聞き流すわけにはいかない。
世界の自動車企業が熾烈な競争を繰り広げるエコカー開発、自動車燃費改善、円安ウォン高に対する対処など、現代車には多額の金を使わなければならない懸案が山積している。 ある証券会社の分析家は、現代車が韓電の土地を買うために巨額の出血を厭わなかったことに対し、「グローバルビジネスセンターの建設の必要性はあるが、鑑定価格を大きく超過した土地買い入れには失望した」と話した。
インターネットでは「韓電の土地を買う金で自動車会社5個を買え、サムスン電子のイ・ゴンヒ会長が保有するサムスン電子株もすべて確保できる」であるとか、「土地だけでなく韓国電力まで買えると勘違いしたのではないのか」という話まで出回った。
現代車がさらに心配せねばならないのは、「オーナーの決断」や「会長の底力」が経営の核心動力として作動している現代車グループの不透明な意志決定に対する憂慮が、以前よりまして大きくなったという点だ。別の証券会社研究員は「常識を越える入札金額が決定される過程で意志決定がどうなされたのか知らされない点は、長期的に会社に対する否定的な見解を抱かせる要因になる」と指摘した。「国の土地を買うのだから気が楽だった」と語ったチョン会長に対しても、「政府の韓電株の持分は51%だけで、外国人も28%も持つ」という反論が出てくる。
今まで現代自動車は“統治行為”に近い“会長の底力”で経営危機を乗り越えてきたことが多い。 起亜自動車の吸収と北米工場の建設など“オーナーの底力”が成功につながった前例がある。
だが、重要な決定が下される度に、意志決定過程のマニュアルに従うのではなくチョン会長の言葉を見守るだけの現代車の未来にも否定的にならざるを得ない。いかに保秘が重要だったとはいえ、落札者が発表された後になっても「実務陣が提示した価格とチョン会長が考えた水準とどれくらい違いが生じたか」という質問に対して、現代車の役員が「分からない」とか「私たちも驚いた」と答えているほどなのだから、彼らの間でどれほど疎通が少なかったのか察することができる。
「最高経営者から職員までが情報を共有し、より大きな価値を引き出せたのが日本企業発展の原動力」と言っていた青木昌彦元日本経済産業研究所所長の話を十分に噛みしめてみる価値がある。