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「日本が集団的自衛権を行使すれば韓国が最大の被害者に」

登録:2014-08-24 20:16 修正:2014-08-25 10:03
[シンクタンク広場] 日清戦争120周年「甲午年8・15」 座談会
韓半島と東北アジアの平和のために力をつくしてきた徐勝(ソ・スン)立命館大学特任教授(左から)、任軒永(イム・ホニョン)民族問題研究所長、イルル・テリム[成裕普(ソン・ユボ)]ウリキョレハナテギ運動本部(民族が一つになる運動本部)理事長が8月5日、一堂に会した。この日の座談会で三氏は「南北交流の増進と東北アジア市民の連帯が、東アジアでの戦争の可能性を阻む防波堤になる」と強調した。 キム・ソングァン記者 flysg2@hani.co.kr

 今年も光復と分断の「8・15」が訪れる(訳注:本記事は8月12日付に掲載)。今年の8・15は「甲午年の8・15」という点で、どの年よりも私たちに過去と未来の省察を求める。現在、国内外の政局が120年前の「1894年甲午年」の状況をそのまま想起させるためだ。当時、この地には「輔国安民と斥洋斥倭」を掲げた甲午農民革命が野火のように広がったが、朝鮮朝廷は清を駐屯させて日本を引き入れ、民たちの声を暴力で圧しつぶした。しかし、この地に入ってきた清と日本は間もなく清日戦争を起こし、私たちの生活の場を戦場に変え、そして戦争に勝った日本は「下関条約」を通じて朝鮮侵略をより露骨化させた。

 120年が過ぎた今日、韓半島は、再び渦巻く東北アジア情勢の中央に立っている。「戦争できる国」を夢見る日本と、中国との対立、アメリカの覇権的軍事戦略、韓国と北朝鮮の対決様相などが東北アジアの緊張を高めているが、その衝突の危険がそっくりそのまま韓半島に集まる様相である。

 はたしてこの状況をどのように見るべきか?ハンギョレ平和研究所が平和・統一市民団体である「ウリキョレ・ハナテギ運動本部(民族が一つになる運動本部)」(理事長:イルル・テリム)と共に、今年の8・15の意味を探る特別座談会を用意した。長い間、親日清算問題に力をつくして来た任軒永(イム・ホニョン)民族問題研究所長と韓・日平和勢力の連帯を主張してきた徐勝(ソ・スン)立命館大学特任教授が同席した。座談は8月5日にハンギョレ新聞社で行われ、司会はイルル・テリム理事長が引き受けた。

旧韓末の状況との類似点と相違点は

イルル・テリム(以下、イルル):光復69周年が近いが、韓半島がややもすれば旧韓末の戦地に逆戻りするかも知れないという心配が先に立つ。当時と今現在とで似ている点は何か、異なる点は何か、当時の苦難を繰り返さないためには、私たちは何をしなければならないのか、などを整理してみたいと思う。

任軒永(以下、任):まず日本の場合、解釈改憲は性格は異なるが、第二の桂・タフト密約改訂版と呼ぶに値する。桂・タフト密約は、露日戦争直後に米・日がアメリカのフィリピンに対する支配権と日本帝国の大韓帝国に対する支配権を相互承認したものだ。日本の解釈改憲は、アメリカと日本が力を合わせればできないことなど何もないという傲慢であり、東アジアの平和に対する露骨な挑戦だ。

徐勝(以下、徐):桂・タフト条約は、比較的対等な立場で米・日が分け合うことにしたものだ。しかし日本の集団的自衛権行使をアメリカが容認したのは、日本の従属的性格に土台を置いているという点で、当時とは大きく異なる。清日戦争と露日戦争の時は、日本軍国主義の最盛期だった。しかし現在、日本は周辺化されており、東アジアの中心から押し出されている。安倍政権の日本が右傾化の段階を越えて軍事大国化、軍事主義へと走り出しているのには、当時への郷愁も大きく作用している。

任:現在の状況で日本が集団的自衛権を通じて戦争が可能になるなら、我が国がその被害者になる可能性が高い。今後何らかの戦争が起きれば、私たちが最大の被害を受けるでしょう。この問題はおそらく、私たちの子孫を長く戦争の恐怖のなかに追いこむ結果をもたらすでしょう。それなのに、韓国の政治家たちは何か遠い国の話のようにしていることは、大きな問題だと思う。

 韓国のメディアと政治家は、日本の政治家たちがそんな話をすればそれを妄言だと規定する。しかしそれは、日本の政治家たちにとっては妄言ではなく本心だ。その胸中には、はるかに大きな侵略の欲望が隠れている。私たちは妄言という表現を通じて、こういう日本の右翼の欲望を正しく看破できなかった側面がある。今後は妄言という言葉は使わない方がいいだろう。むしろそれが、日本の右翼の下心だし野望だと言って、日本の欲望を直視して対応策を用意しなければならない。

徐:現在日本ではアメリカが軍事権を掌握しており、外交権もアメリカの指導下にあるという点で、事実上アメリカの属国だ。したがって集団的自衛権問題もアメリカの立場としては、韓半島だけでなくシリアなど世界各地で展開される軍事問題に傭兵として日本軍や韓国軍を実際に使うという意図もあると思わなければならない。もちろん、日本もこれを機会と見なして独自に軍事力を増強しようと思うだろう。同床異夢だ。しかし在日米軍が存在する限り、日本が独自の軍事行動を行うことは難しいと考える。

任軒永(イム・ホニョン)民族問題研究所長

任軒永 民族問題研究所長
アメリカが日本の解釈改憲を容認したのは
「第二次 桂・タフト密約」と同じ
日本の問題に南北が同じ声を上げ
東北アジア市民連帯で平和を守るべき

任:19世紀末と違い現在の全面戦争は、一つの国家の百年分の経済成長を破壊するほどに途方もない傷を残す。ところが日本の右翼たちはそれを知っていながら、昔の戦争時代を懐かしがっている。彼らは毎年8・15が来ると、はるかに上等な服がたくさんあるのに昔の軍服を取り出して着て、靖国に向かって行進する。その姿を見れば身の毛がよだつ。そうすることには目的がある。とにかくアメリカと日本が東アジアで何か危機を助長することにより、利益を得ようと思っているのだ。再度強調するが、その最大の犠牲者は我が国だ。そのことを国民が悟らなければならない。

東北アジアで中国変数をどのように見るべきか?

イルル:旧韓末当時と今を比べる場合、大きな違いの一つが中国の浮上だ。あの頃と違い中国は世界が主要二か国(G2)と呼ぶほどに成長した。アメリカも、中国がこれから一層成長することを前提にして世界戦略を組んでいる。東北アジアではこの中国変数をどのように見るべきか?

任:根本的に見るしかない。すなわち、中国も社会帝国主義、すなわちソーシャル・インペリアリズムと類似したものと見るべきだ。第二次世界大戦時のドイツに現われたように、対内的には福祉を強調し、対外的には帝国主義的な属性を帯びるだろう。そのような点で中国もアメリカと同じく、自国利己主義国家と規定できる。しかし差異もある。中国は世界史や東アジア史に「文明を主とした平和主義」という寄与をした。近代以後には私たちとまったく同じ侵略被害を被ってもいる。したがって現在の南北対置状況から見る場合、中国はアメリカや日本よりは朝鮮半島の平和を維持する側に近いと思う。

徐勝(ソ・スン)立命館大学特任教授

徐勝 立命館大学特任教授
日本は軍国主義時代への郷愁が大きく作用しているようだ
既存の支配レジームを突き破れば、東アジアは平和発信地になりうる
南北に信頼があれば朝鮮半島に平和が到来
交流、和解、協力で信頼の構築を

徐:現在の沖繩にあった琉球王国も、明治初期に日本に併合された際、粘り強く抵抗した。中国との朝貢関係においては軍隊を駐屯させなかったし、経済的収奪もせず、朝貢貿易ではむしろ琉球が大きな利益を得ていたからだ。

 中国は多くの人口、豊かな資源、長い歴史のある国だ。こんな中国に対して隅っこでじっとしていろと言うのは無理な話だ。中国の大国化を否定することはできないが、アメリカのように軍事覇権国家にはなるなと中国に助言する必要がある。

再び戻ってきた韓半島列強角逐時代

イルル:では、韓半島に話を戻そう。韓半島を巡り再び列強が角逐する時代が戻ってきたようだが、肝心の南北関係だけは光復と分断が一緒にやって来た69年前と変化がほとんどない。

任:韓国ほど平和に関して具体的な目標が明確な地はない。まず平和の土台はその社会の民主化だという点を指摘したい。独裁政権下では平和はありえない。韓国の場合でも、軍隊で殴られて人が死んでいることと、総体的な不良と不正を露呈させたセウォル号事件などを見れば明確だ。それ以外の側面では国ごとに平和の概念が全く異なる。現在、韓国で最も切迫した平和の問題は、日本の侵略主義を眠らせることと、南北が戦争をしないことだ。

 万が一、韓国政府に民族意識があれば、日本が独島問題に関して我を張る場合、南北が8・15に合わせて共同声明を出そうと提案することができる。しかし、今はいかなる対話もせず、日本以上に往来がない状態になっている。そのような点から見ると、韓国で最も非平和的なこととして、イデオロギー問題を挙げることができる。イデオロギー問題は、アメリカが後進国を略奪するために作った装置だ。日本の集団的自衛権問題という現実は、南北がその虚しいイデオロギーを越えて、一つの声を上げることを要求している。

徐:共感する。平和は信頼から生まれる。信頼があれば鉄砲を持っていても殺人は起こらない。この信頼のためには、何よりも南北が疏通して交流しなければならない。お互いに頻繁に会ってこそ、変わるべきことが変わる。観光でもゴルフでもいいから、とにかく疎通と交流が始まらなければならない。

アジア平和に市民社会が果たす役割は

イルル:お二人の話に同意する。朝鮮半島でも和解の機運が広がるためには、イデオロギーのトレランスが出て来なければならない。まず南北が統一に先立ち、和解、交流、共存、協力など共に生きる条件を十分に形成して、お互いを認める幅を広げなければならないと思う。

 それでは最後に、朝鮮半島の平和やアジアの平和のために、市民社会や国際知識人社会で何ができるのかを探ってみよう。東北アジア情勢が120年前と似てきているとは言っても、当時と最も大きく異なるのは、市民の水準が高まったということだ。南側の場合は軍事独裁、親日勢力に対抗し、1960年代から民主化運動、市民運動が弛まず発生し、その体験が拡散してきた。

任:日本が東アジアの暫定的な平和さえも脅かしているが、それでも現在の東アジア市民が19世紀とは違うということに希望を見いだせる。当時は東アジア全体が王朝体制だったが、今は形式的であっても市民の時代だ。

 日本の執権勢力と支配階級は征服と被支配の関係を重要視するが、日本の市民社会には平和勢力が多数存在する。彼らと連帯して、その力をより一層大きくさせていかねばならない。このようにして市民の力がより大きくなれば、日本の支配層が侵略を夢見たとしても、120年前のように簡単ではないだろう。

徐:個人的には、中国や北朝鮮にまだ市民階層が形成されたとは思わない。しかし、とにかく東アジアの状況が120年前とは全く異なるということには同意する。だから東アジアで具体的な課題を持って運動する人々が連帯しなければならない。これを通じて過去から継続している支配レジームを突き破れば、東アジアはむしろ世界平和の発信地になりうる。

イルル:東アジアで最も大きい問題の一つが、戦乱時代を経験してメシアを待つ傾向があるということだ。これをどのように克服するかが、アジア人の課題だと思う。草の根平和運動や草の根統一運動を強化して連帯することにより、メシアを待つことから脱すれば、現在の東アジア市民たちが、120年前の朝鮮農民たちが成し遂げられなかったことを成し遂げられると期待する。

整理 キム・ボグム ハンギョレ平和研究所長 tree21@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/650890.html 韓国語原文入力:2014/08/12 19:37
訳M.S(5022字)

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