専門家「警察の人権意識不在を確認」
必要に応じて一人の人間を完全に破滅させた」
警察「侮辱する意図はなかった」弁明
この一週間、韓国社会を炎上させた‘公然わいせつ容疑で立件された現職地検長’事件は22日、警察の完勝に終わった。 だが、この過程で警察が見せた行動はまた別の問題点として残る。 防犯カメラ(CCTV)映像の流出など、被疑事実の公表を通した侮辱と追い込みなど、警察捜査の慢性的な問題点があからさまになったためだ。
■侮辱的な捜査手法と過度なマスコミリーク
キム・スチャン前済州(チェジュ)地検長の疑惑は、今月15日夜になって初めてマスコミに報道された。 キム前地検長が疑惑を否認したため真偽を問う論調を加熱し、警察発の後続報道が相次いだ。 報道の情報源は匿名の‘警察関係者’である場合がほとんどだった。‘警察関係者’は「申告した女子高校生が逮捕されたキム地検長を見て、人相着衣がそっくりだと話した」、「キム地検長の姿が撮影された防犯カメラ7個を追加で入手し捜査中だ」、「防犯カメラの映像に登場した男性はキム地検長だけだ」など後続報道のすべてに登場した。
被疑者に侮辱を与える警察の捜査手法が防犯カメラ映像の公開につながった。 性犯罪の一種である公然わいせつ疑惑の捜査は、被害者はもちろん被疑者の人格権にも密接な関連がある。 これに対し、性犯罪捜査当時には活用可能な防犯カメラ映像などを証拠物として入手し、コピーが残らないよう削除するのが通常だ。しかし警察は映像の流出を防ぐ措置をとらず、防犯カメラに撮影されたキム前地検長の姿はモザイク処理も施さずに総合編成チャンネルなどを通して国民全員に公開された。
淑明(スンミョン)女子大ホン・ソンス教授(法学)は「キム前地検長の行為はもちろん犯罪に該当するが、職務を利用した汚職犯罪でもなく、具体的な被害者がいるわけでもなかった。 警察のマスコミリークは典型的な被疑事実の公表であり、人権意識の不在という警察捜査の問題点が如実にあらわれた」と批判した。
キム前地検長の逮捕当時、持ち物を公開したことは公開的な侮辱に近かった。当時、警察関係者は「わいせつ行為のための道具ではないが」という但し書きを付けて、あえてキム前地検長が逮捕当時に‘ベビーローション’を所持していたと明らかにした。 キム前地検長の手と性器、下着などどこからも問題のローション成分は検出されなかったという。 ローションはこの事件自体とは何の関連性もない‘小道具’であったという話だ。 だが、警察はあえてこの点に言及することによりキム前地検長を大衆的なのぞき見のさらしものにした。
■逆説的に警察がいかに危険な存在か明らかに
事件の初期、済州地方警察庁は警察官約20人をこの事件に投じてキム前地検長の同種の犯罪を追ったという。 史上類例のない‘公然わいせつ疑惑認知捜査(捜査機関が自ら疑惑を捉えて進める捜査)’が行われたわけだ。
「人権連帯」のオ・チャンイク事務局長は、「キム前地検長は犯罪者であり治療対象であることは事実だ。 しかし、この事件では逆説的に警察がどれほど危険な組織なのかが明らかになったようだ。 警察は組織の必要に応じては検事長であろうが一般市民であろうが、完全に破滅させることができるという事実を見せた」と指摘した。 検事長級のある幹部は「厳密に見れば処罰よりは治療が必要な嗜好の問題でもあるが、キム前検事長を相手に(魔女)狩りが行われた感じ」とし「個人的な問題だが、それでも(同じ検事である)我々に何が言えるか」とため息をついた。
警察は意識的に感情のコントロールに努めているようだったが、それでも「検察に一発くらわせた」というそぶりを隠さなかった。 この間、警察内部では‘ユ・ビョンオン一家捜査’を検察が主導したのに、責任はイ・ソンハン警察庁長官が負って退いたという点で、少なからぬ不満を持ってきたのは事実だ。 特に‘検察と警察の捜査権問題’に大きな関心を傾けてきたカン・シンミョン新任庁長の就任を控えて、現職地検長の不適切な行為を明らかにしたことを一種の成果として認識する視角もある。 この日警察は、済州地方警察庁の捜査結果報道資料を警察庁本庁出入り記者に配布するという異例な行いもした。
警察庁のある関係者は「当初身分を偽ろうとしたキム前地検長が、むしろこの懸案を検察と警察間の問題として意識させたのではないか。 意図的にキム前地検長に恥さらしをさせたのではなく、手続きに則り事件を処理したに過ぎない」と話した。別の警察庁関係者は「警察の捜査を通じて疑惑が事実であることが明らかになったが、今回のことで警察と検察の間の葛藤が増幅されれば、警察にも良いことはないという観測も少なくない」と伝えた。
ノ・ヒョンウン、ソン・ホギュン記者 goloke@hani.co.kr