一ヶ月近く国会で漂流してきたセウォル号特別法が7日、セヌリ党の主張がほとんど反映された中で本会議処理が合意された。 特別法に則り構成される特別委員会(真相調査委員会)に捜査権と起訴権を与え‘聖域なき真相究明’をしようとしたセウォル号の遺族たちの要求からは大幅に後退した内容であり、実質的な真相調査は困難ではないかとの憂慮が出ている。
セウォル号惨事の家族対策委員会(対策委)は同日、国会で記者会見を開き、「与野党の院内代表が合意した内容は、家族と国民の要求を明白に拒否した合意だ」として、反対の意思を明確にした。対策委は「大統領が(特別法の処理を)約束した日にも、セウォル号惨事100日目になる日にも、何らの意志も見せてくれなかった与野党が、どうして今日このような合意をしたのか」と問い、「来週のローマ法王の訪韓を前に焦っている大統領府のために、合意してやったのではないかと問わざるを得ない」と、与野党双方に対して強い不信を見せた。
先月12日に始まったセウォル号特別法与野党交渉の最大争点は、真相調査に当たっての捜査権・起訴権保障問題であった。 野党の新政治民主連合はセウォル号遺族の意見を一部反映し、真相調査委の調査官の一部が特別司法警察官の権限を持って独自捜査ができるようにすべきと主張した。 大統領・大統領府・国家情報院など最高権力機関を相手に真相を糾明するためには必須だと見たわけだ。 セヌリ党は「司法体系の根幹を揺るがす」、「前例がない」という理由で強硬に反対した。 真相調査委が現政権の主要人物と大統領府に責任を問うことを憂慮したわけだ。 野党がこれに対し、特別検事で真相究明をしようという折衷案を出す代わりに、特別検事を野党または真相調査委が推薦できるようにしようと要求した。 セヌリ党はこの要求にも7・30再補欠選挙までなしのつぶてだった。むしろ「"天文学的金額だ」と言いながら、遺族たちが要求してもいない補償・賠償問題で特別法の争点を歪曲させたりもした。
結局、選挙で勝利したセヌリ党は自分たちの思い通りにセウォル号特別法の内容を貫徹させ、セウォル号惨事の徹底した真相調査は難しくなるのではないかという憂慮につながっている。
まず特別検事の任命に政府・与党の影響が強く作用する可能性が高まった。 与野党はこの日、現行法である‘特別検事の任命等に関する法律’(常設特検法)により特別検事を任命することで合意した。 現行法は法務部次官、法院行政処次長、大韓弁護士協会会長、国会推薦要人4人で構成された委員会が、2人の特別検事を大統領に推薦するようになっている。 イ・ホジュン西江(ソガン)大法学専門大学院教授は「この構造では1人は与党に有利な人が推薦されることになり、大統領は当然に与党側要人を任命する可能性が高い」として「過去に運営された委員会とほとんど差がなく、まともな真相究明は不可能になった」と指摘した。 また、真相調査委が今後1~2年活動することになるのに比べて、常設特検法は現在90日までと活動期間を定めていて、調査委の活動と特検の活動期間が一致しないことも限界として指摘される。
直ちに新政治連合は「セヌリ党が反対を固持している状況で、特別法の早急な制定と遺族の参加が重要と判断した」と明らかにしたが、遺族の反発を買っている。 ユ・ウンヘ新政治連合院内スポークスマンはブリーフィングを通じて「この日の交渉で与党が先日意見の接近を示した真相調査委推薦案に対しても受け入れられないという態度を見せたので、パク・ヨンソン院内代表が特別法通過のために決断を下さざるをえなかった」と明らかにした。 新政治連合は最小限の調査権強化装置は用意したと明らかにしている。 特別法に関する交渉を主導したウ・ユングン政策委議長は「セヌリ党が終盤になって遺族3人の真相調査委参加に強く反対したが、これだけは譲歩できないと判断した」として「セヌリ党が交渉中に一貫して全て受け入れられないと主張し続けた」と話し、この日の合意の不可避性を強調した。 彼は「同行命令権を盛り込み調査権を強化したし、特検も必要な時にもう一度できるように合意したので、6ヶ月以上の特検活動ができる」として、最小限の真相究明装置は用意されたと強調した。
しかし、ユ・ギョングン家族対策委員会スポークスマンは「今日の合意は、こうしたセウォル号特別法制定の局面を脱出せんとするセヌリ党の試みに、新政治民主連合が“引き立て役”を買って出たものと見ざるを得ない」と野党を強く批判した。家族対策委は今後の対応について8日に発表する予定だ。22日間ハンストを行ない中断していたユ・ギョングン対策委スポークスマンは、この日から水と塩を摂らないハンストに入った。
イ・スンジュン記者 gamja@hani.co.kr