登録 : 2014.05.29 20:59 修正 : 2014.09.03 15:27

[人が中心だ -公共性の崩壊した国(5)]非正規職に任せられた安全


年に4千万人が利用する仁川国際空港
“安全第一線”の消防隊は非正規職
現場指揮権なく、賠償責任まで


「老朽装備の取替えにも相当な時間がかかる」
“安全業務の外注化禁止”立法化が必要

 
「職業倫理を考えればセウォル号の船長は当然批判されるべきでしょう。でも、非正規職だった船長が、船が沈没するのに、脱出指示より先に会社に電話したという状況は理解できます。外注会社の職員である私たちも、自分で判断できることがほとんどないんですよ。」

 去る21日、仁川(インチョン)広域市中区(チュング)の仁川国際空港で会ったパク・スミン(仮名)消防隊員は、間接雇用労働者だ。旅客ターミナル2階にある“仁川空港消防隊”の表札には「通報は局番なしの119」と書かれているが、パク氏は消防署の公務員でも仁川国際空港公社の正規職員でもない。仁川国際空港公社と、基本は3年そして2年の追加延長が可能な請負契約を結んだ株式会社“ハンバン(韓国防災エンジニアリング)”所属の職員だ。彼らは“ハンバン”の正社員として雇用されているが、会社が仁川国際空港公社と契約を結ばなければ職場を失う可能性もあるので、自らを非正規職と考えている。

 仁川空港公社が昨年10月に作った「仁川国際空港消防隊の運営委託課業内容書」を見れば、彼らは、航空機事故と火災を含めた各種事故に対する鎮圧・救助・消防・救急・事前予防業務を担当している。汝矣島(ヨイド)の7倍の広さをもつ仁川空港(5616万8000平方メートル)で発生する全ての安全問題に対する対処は、仁川国際空港公社ではなく、外注会社所属の彼ら208人の役目だ。

 セウォル号の船長は非正規職だった。船長は緊急事態発生時に、船と乗客の運命に対する最終権限と責任を持つ存在だが、セウォル号の船長はそうできなかった。セウォル号事件以後、仁川空港の消防隊員は“仁川空港版セウォル号事件”を思い浮かべる。イ・ジェウォン(仮名)消防隊員は「セウォル号惨事が発生して、“仁川空港であんなことが起きたらどうするか”ということをいろいろ考えるようになった」と言う。

仁川空港消防非正規職「火事になってもドアノブ一つ勝手には壊せない」

 彼らは昨年一年間で4148万人余りが利用した仁川空港の安全の最前線にいる存在だが、彼らに与えられた権限は極めて制限されている。全消防隊の“船長”格である消防隊長も、仁川国際空港公社に間接雇用された労働者だ。空港内で飛行機事故や建物火災などの事件が発生すれば、最終指揮権は、仁川中部消防署長にある。間接雇用の消防隊長は、仁川中部消防署長が到着するまでの間だけ、臨時で現場を指揮する。イ・テホ(仮名)消防隊員は「仁川空港の消防隊が空港と飛行機の特性を最もよく知っており、事故が起きれば真っ先に駆けつけるが、現場指揮権がない」と述べた。

 パク・スミンさんは「古い救急装備を取り替えてくれと言ったり、最新の救急装備を買いたくても、うちの会社(ハンバン)に言えば、会社がさらに仁川空港公社に話す過程を経なければならない。時間が長くかかるだけでなく、現場の事情を知らないので全ての基準が費用だ。私が正規職だったら私の意見を無視しただろうかとも思ったりする」と語った。実際、課業内容書を見れば、「契約者(協力会社)は、資材購入の際、購入方法などを事前に公社に提出し、必ず協議のうえで購入しなければならず、当該物品の入庫時に必ず公社の確認を受けなければならない」となっている。

 10年以上勤務したキム・ジウォン(仮名)消防隊員は「ドアノブ一つも勝手に壊して入ることができないのに、空港の建物内でもし火災が起きたら、積極的に対処できるか分からない。正規職でないので、何事についても後で問われる責任を考慮せざるを得ない」と述べた。協力会社は、業務と関連して公社又は第3者に人的・物的被害を及ぼした場合、その賠償責任をすべて負うことになっている。第3者から損害賠償請求や行政上の罰金が公社に賦課される場合にも、協力会社が一切の責任を負って公社を“免責”しなければならない。キム・ソンヒ高麗(コリョ)大学労働大学院教授は「マニュアルがいつも現場の状況と合致しはしないため、現場の担当者たちが専門性をもとに裁量を発揮しなければならない。しかし、間接雇用労働者には決定権がないので積極的に判断しにくい面がある」と指摘した。

仁川空港の航空会社出国手続き台で、旅行客が長蛇の列をなして順番を待っている。仁川空港/キム・テヒョン記者 xogud555@hani.co.kr

 雇用不安と劣悪な待遇も彼らの業務安定性を侵害し、結果的に仁川空港の安全性を低下させる。

 仁川国際空港公社は消防業務協力会社と3年単位で請負契約を結んでいる。2000年7月の仁川空港消防隊創設以来、現在まで一つの業者とずっと請負契約を結んでいるが、もし会社が変われば雇用が継承されるかどうかは不透明だ。給料も正規職に比べて法外に低い。ピョン・ジェイル新政治民主連合議員が2013年に公開した正規職と非正規職の賃金現況を見ると、正規職職員の年俸が8584万ウォンの時、間接雇用労働者たちはその38.2%の3276万ウォンに過ぎなかった。 その年の消防隊員の平均月給は255万5193ウォンだった。 勤続手当はない。しかし、消防隊を運営する協力会社は1年の契約金額90億2500万ウォンのうち人件費に54億2300万ウォン、管理・運営費として28億8900万ウォンを使い、7億1300万ウォンの利潤を残している。 管理・運営費は直接雇用する場合には必要ない金だ。

 未来のない職場を人々はひっきりなしに去って行く。 年平均離職率が20%程度だ。キム・ジウォン氏は「自分の仕事に自負心は持っているが、給与、雇用安定、将来性を考えると自己嫌悪に陥る。 仕事を覚えた頃には続々と離職していくので、適正な業務熟練度が維持できるかが心配だ」と述べた。イ・ジェウォン氏は「もしセウォル号のような事故が起きた場合、仕事に対する自負心は誰にも負けないので業務を回避することはないだろうが、心の片隅には“自分が死んだり怪我をしたりしたら誰が責任を取ってくれるのか”という不安な思いがよぎるのは如何ともしがたい」と語った。イ・テホ氏は「消防署の公務員と同じ仕事をしているのに、彼らは死んだら“殉職”で、私たちは死んだらただの“死亡”だ」と言った。

仁川(インチョン)国際空港公社非正規職労組が先月1日部分ストライキに突入したのに続き、労使交渉が決裂し2013年 12月8日から全面ストに突入した。 (公共輸送労組提供)
仁川空港の火災救難責任は外注会社の役割
消防隊員は3年単位で請負契約
雇用不安・低い給与に転職率20%
「セウォル号の船長、一面では理解もできる」


「元請は現場を知らないから全てにおいて費用が基準
老朽装備の取替えにも時間がかかる」
「安全の外注化は不可」立法化が必要


 仁川空港の間接雇用労働者は消防隊員ばかりではない。2013年、仁川空港で働く6927人のうち正規職は937人に過ぎず、残りの5990人(86.5%)は間接雇用労働者だ。10人のうち9人が広義の非正規職であるわけだ。記者が去る21日、仁川空港鉄道に乗って仁川空港駅に着いた後、エスカレーターに乗って旅客ターミナルの3階まで上がる間に出会ったエスカレーターを磨く清掃職員、植木鉢に花を植える職員、“セキュリティ”と書かれたチョッキを着た警備要員、案内職員、国際線搭乗口の前でパスポートを確認する職員、全てが間接雇用の非正規職だった。空港を利用して仁川国際空港公社の正規職に会う確率は'0'に近い。

 使用者が労働者とではなく下請業者と契約を結び、下請け業者に業務と雇用関係の責任を負わせる“間接雇用”は、1997年の通貨危機(IMF)以後、韓国社会に急速に広まった。正社員として直接雇用するより“費用”が少なく効率的だという理由のためだ。通貨危機直後の1999年にスタートした仁川空港公社もこのような流れの中でほとんどの業務を外注化した。しかし、仁川国際空港公社は昨年1兆6046億ウォンの売上に当期純利益4500億ウォンを上げ、2004年から10年連続で黒字を出している。にもかかわらず、間接雇用の割合は減らしていない。仁川空港公社の意志も問題だが、公社の人件費を統制し、事実上正規職の人員数を管理している政府の政策も問題だ。 航空運輸業は「労働組合および労働関係調整法」により業務が停止された場合、公衆の生命・健康・身体の安全を危うくする業務と規定されており、ストライキなどの争議行為が制限される必須維持業務の一つだ。安全を理由に労働権は制限し、費用を理由に正規職を使わないのだ。キム・ジョンジン韓国労働社会研究所研究委員は「“どうせ事故は起きない”という安全不感症のために、安全の領域にまで費用の論理が適用されている。安全関連領域は外注化ができないよう立法化する必要がある」と主張した。

 これに対して仁川空港公社側は「消防隊は消防専門業者にアウトソーシングしたので専門性があり、空港で今まで大きな事故が発生したことはない。消防隊などの正規職化の可否は政府が決定する事案であって、公社が発言できる部分ではない」と明らかにした。

仁川/キム・ミンギョン記者 salmat@hani.co.kr

韓国語原文入力:2014/05/26 11:48
http://www.hani.co.kr/arti/society/labor/638928.html 訳A.K(3938字)
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