セウォル号失踪者の救助作業過程で民間潜水士と政府間の衝突が発生した背景には、清海鎮海運と契約を結び現場で救助作業を主導してきた民間企業 ‘ウンディーネ マリン インダストリー’(UMI·Undine Marine Industries)がいたことがわかった。 このため水難救助まで政府が責任を負う民・官・軍協力体系から民間企業に委託する民営化体系に切り替えたのではないかという指摘が出ている。
<ハンギョレ>がウンディーネを巡る問題点を6個に分けて逐一探ってみた。
1. ウンディーネが独占した救助作業
<ハンギョレ>による取材の結果、民・官・軍が協力する汎政府事故対策本部が、セウォル号沈没事故に対する捜索・救助作業を民間業者であるウンディーネを中心に運営してきたという多様な陳述が出てきた。
海軍特殊戦旅団(UDT)同志会のキム・ミョンギ(36)氏は、<ハンギョレ>との通話で「迅速な救助のために商売を放棄して現場を訪ねたが、海洋警察に阻まれて全く水中に入れずにいる」と話した。彼は「過去に天安(チョナン)艦事故が発生した時は、政府側とホットラインが構築されて緊密に協力できたが、今は民間業者が間に入り、私たちは救助作業から完全に排除された状態」と話した。
民間潜水士の団体である水中環境協会のファン・テヨン(61)代表の陳述も同じだった。 「ボランティアに来たが海上警察側が全く相手にしてくれませんでした。ウンディーネが救助作業のすべての主導権を握っています。」 だが、汎政府事故対策本部のコ・ミョンソク スポークスマンはこのような陳述に対して首を横に振った。 コ スポークスマンは「ボランティアメンバーはほとんどが激しい水流と制限された視野のために水中に10分も留まらずに上がった」として「甚だしくは水に入りもせずに写真だけ撮って帰ったりもした」と話した。 コ スポークスマンは 「しかし、ウンディーネはここに常駐して合同救助チームを共にしている」と付け加えた。 ボランティア メンバーたちが救助作業にむしろ支障を招いているという説明だ。
2. なぜUDTや海洋警察ではなくウンディーネなのか
しかし、なぜ現役UDTのよく訓練された海軍や海洋警察のような公共の専門家たちでなく、ウンディーネという民間業者を中心に救助作業を進めているのかに対する疑問は解けない。 セウォル号救助作業は、惨事当初から一貫してウンディーネが主導して行われた。 特に救助作業初期に、主な救助および遺体引き揚げが民間潜水士が行っていると発表されたが、これこそがウンディーネ所属の潜水士のことだった。
コ スポークスマンは去る19日に行われた言論ブリーフィングの質疑応答で「ここで言う民間潜水士とは、救難業者であるウンディーネを意味する」として、民間企業が船体捜索などの特殊分野でさらに専門性がある」と明らかにした。 政府関係者の口から、軍・警より民間潜水士が市民救助に関してさらに優秀だという話が出たわけだ。
3. 政府は水難救助まで‘民営化’した
当初、政府と契約した業者として知らされたウンディーネは実際はセウォル号のオーナーである清海鎮(チョンヘジン)海運と契約を結んだ業者であることが明らかになった。コ スポークスマンは<ハンギョレ>との通話で「ウンディーネは政府ではなく清海鎮(チョンヘジン)海運と契約した。政府が捜索作業を総括するが、具体的な契約は船会社と結ぶ」とし、「被害を補償し費用を負担するのは旅客船のオーナーである船会社であるため」だと説明した。 ウンディーネ側も「沈没事故が発生した時、救難業者は一般的に船会社と契約する」と確認した。
政府と直接の契約関係ではないにも関わらず、ウンディーネが合同救助チームに入れた根拠は、2012年8月に全面改正された水難救護法だ。 2012年、水難救護法が改正されて "水難救護協力機関および水難救護民間団体と協力体制を構築" できる根拠が用意された。 そしてこの時、法が改正されて水難救護協力機関の一つとして韓国海洋救助協会が設立された。 韓国海洋救助協会は、水難救助活動で政府の最も重要なパートナーになった。
韓国海洋救助協会には、現代重工業と三星(サムスン)重工業など6社の造船企業、韓進(ハンジン)海運など7社の海運会社をはじめとして10余りの民間救難業者が属していて、この中にウンディーネがいる。 水難救護法に基づいて韓国海洋救助協会は、水難事故が発生した場合に海洋警察と共に捜索救助に当たることになるが、このような措置の一環として清海鎮海運が事故発生の翌日である去る17日にウンディーネと契約を結び救助に乗り出した。
結局、海洋警察の装備と人材だけでは既存海洋事故の解決が難しいというのが法の趣旨だが、ここで公共の装備と訓練された人材をさらに補充することなく、民間に手を伸ばす事実上の‘民営化’側に方向を定めたわけだ。 そしてキム・ユンサン ウンディーネ代表理事は、チェ・サンファン海洋警察庁警備安全局長、キム・ヨンファン元南海地方海洋警察庁長官と共に海洋救助協会副総裁の職を引き受けている。
4. ウンディーネは本当に専門性のある業者なのか
問題はウンディーネが本当に水難救助作業に専門性のある業者か否かというところにある。
ウンディーネの主要事業内容を見れば、船体引き揚げ、油流出防除などが記録されているだけで、人命救助に関する内容はない。ウンディーネが公開した既存事業内訳にもウンディーネが人命救助作業を行った記録はない。 政府はウンディーネが国内唯一の国際救難協会(ISU)正会員だと広報しているが、実際ウンディーネには専門救助人材がおらず、必要の都度、短期で契約し人材を投じていたことが明らかになった。
そのため、2004年に設立され2008年から救難業務を始めたウンディーネが、歴代最悪の海洋事故と言われるセウォル号事故に対する救難業者として独占的地位を享受していることが果たして適切なのか、疑問が提起されている。
5. ウンディーネが主導した捜索救助作業は混線だらけだった
専門救助人材がいないウンディーネが主導した捜索救助作業は混線だらけにならざるをえなかった。
イ・ジョンイン アルファ潜水技術工事代表が自費で運んできたが海上警察によって投入が拒否されたタイビングベルを、今度はウンディーネが23日夜になって急遽、韓国ポリテック大学江陵(カンヌン)キャンパスから借りてくるなど右往左往する姿を見せた。
<ノーカット ニュース>の報道によれば、これまで船内捜索作業を支援してきた既存‘2003錦湖バージ船’を23日になってウンディーネが運用している‘リベロ バージ船’に交替して、23日と24日の捜索作業が中断されもした。 この時は4日間しかない小潮期(潮流が穏やかになる時期)であるため捜索作業の速度が上がると期待されていた時期であった。
UDT同志会が運んできたモグリ船も使わなかった。 UDT同志会のキム・ミョンギ氏は「 17日、潜水時間を延ばしてくれる潜水装備であるモグリ船4隻を事故現場に運んできたが、海上警察が阻んだために使用できなかった。 しかし対策本部は4日後の21日になってモグリ船を急遽再び投入した」と話した。
6. 残る疑問点-ウンディーネは救助ではなく引き揚げ契約を結んだのか?
ウンディーネが救助作業に無能であることをさらし、ウンディーネが清海鎮海運と結んだ契約は失踪者救助作業に対する契約ではなく、船体引き揚げ作業に対する契約ではないかという疑問も提起されている。
ファン・テヨン韓国水中環境協会代表は 「なぜ救助団体ではなく引き揚げ業者が来たのか」とし 「初めから人命救助には大きな関心がなかったのではないか」との疑問を提起した。
だが<ハンギョレ>が確認した結果、政府はウンディーネが清海鎮海運と結んだ契約の内容を具体的に把握できていないことが明らかになった。 ウンディーネ側もやはり「具体的にどんな契約を結んだのか現時点では確認できない」と話した。
ホ・スン記者 raison@hani.co.kr