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[‘15年タバコ訴訟’原告敗訴] タバコは‘無罪’、喫煙は‘有罪’…事実上 喫煙者‘責任’

登録:2014-04-10 20:50 修正:2014-04-11 07:19
最高裁 タバコ メーカーの手をあげた論理は...
喫煙-癌 一般的相関性は認定するが
個別的因果関係は否認
ニコチンを除去しなかったタバコ設計責任 否定
‘タバコは無罪’

 10日、最高裁の確定判決で延々15年にわたった韓国国内で初めての‘タバコ訴訟’は、国家とKT&Gの勝利に終わった。 喫煙人口が1000万人と推算される韓国で、今回の訴訟結果は焦眉の関心を集めたが、結果は一方的だった。 会社の命運がかかった紛争で勝ったKT&Gは「裁判所の慎重で思慮深い判断を尊重」するとして喜んだ反面、原告側は「タバコ会社に免罪符を上げた」として全く逆の反応を示した。

 最高裁はタバコは有害であり、肺癌発病との関連性も認められるという前提を置いた。 だが、喫煙は個人の自由意志によるものであり、個人の癌発病との直接的な因果関係は確認し難いという趣旨で、タバコ会社の手をあげた。 裁判所は先ず、喫煙の本質が健康に有害なニコチンとタールを吸入することであるため、タバコ会社の製造物設計に違法性があると見ることはできないとした。 「消費者はニコチンの薬理効果を意図して喫煙するが、ニコチンを除去すればこのような効果を上げることはできない」ということだ。 タバコの特性自体を除去しない限り、健康に悪影響を及ぼさざるを得ないので、製造物設計上の責任を問うことはできないという意味だ。

 裁判所は喫煙者の自由意志も強調した。 タバコ会社が危険性を十分に知らせなかったという原告側の主張を排斥したのだ。 裁判所は「タバコは1600年代に(韓国に)伝来した当時から、健康に害になりうるという点と効能に対する論議が続いてきた」として「喫煙を継続するか否かは自由意志にともなう選択の問題」と明らかにした。続けて 「(タバコの他にも)加工されない食品にも発ガン物質は存在する場合がある」とした。

10日午前、ソウル瑞草洞(ソチョドン)の最高裁前で原告側代理人であるペ・クムジャ弁護士(左から二人目)が‘タバコ訴訟’最終判決に対する立場を明らかにしている。 左から肺癌で死亡したイ・キホン氏の遺族イ・ギホ氏、ペ弁護士、パク・ヨンイル弁護士、韓国禁煙運動協議会ソ・ホングァン会長、チョン・ミファ弁護士、クォン・オヨン弁護士。 リュ・ウジョン記者 wjryu@hni.co.kr

 そこへ個人の癌発病と喫煙の直接的な因果関係は認定できないという決定的判断が加えられた。 裁判所は「喫煙と肺癌発病の間に疫学的因果関係が認められるとは言え」という表現で、喫煙と肺癌発病が関連しているという色々な研究結果を受け入れるような態度を見せた。 だが「個別的因果関係」は認めなかった。 タバコを吸った原告が肺癌と喉頭癌にかかっても、家族歴や他の要因が発病に影響を与えた可能性もあるという立場だ。

 これに先立って控訴審は、原告敗訴判決をしながらも4人の肺癌発病と喫煙の因果関係を認めた経緯がある。 最高裁はこの4人の発病と喫煙の因果関係については特に判断しなかった。 だが、癌発病と喫煙の関連性を立証する上で非常に難しい基準を提示した形なので、タバコ会社の責任を問おうとする側から見れば控訴審より後退した判決になった。 また、裁判所は肺癌と喉頭癌の内、喫煙との関連性が顕著に低いと評価される非小細胞癌、細気管支肺胞細胞癌などに対しては喫煙と癌発病の因果関係を完全に否定した。

 15年ぶりに出てきた確定判決の波紋は大きいと見られる。先ずは、国民健康保険公団が準備している巨額タバコ訴訟に影響を及ぼすものと見られる。 健康保険公団は喫煙による診療費支出が年間1兆7000億ウォンを越えるとし、KT&Gだけでなく外国メーカーをも相手どり訴訟を起こす計画だ。 最高裁がタバコと肺癌・喉頭癌の一般的関連性を認めたとは言え、タバコ会社の‘製造物責任’を否定したという点でこの訴訟の展望も明るくない。

 結局、判例が変わらない限り、今後もタバコ会社に責任を追及することは難しいものと見られる。 韓国内の被害者は‘個別的因果関係’に対する新たな科学的発見を待たなければならないことにもなりうる。

ノ・ヒョンウン記者、キム・ヤンジュン医療専門記者 goloke@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/632219.html 韓国語原文入力:2014/04/10 21:34
訳J.S(1907字)

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アメリカ州政府など260兆ウォン(約25兆円)で合意 引き出す

フランス・日本では "タバコ会社に責任ない" 確定

タバコ損害賠償訴訟 外国事例

 国内では喫煙被害者が提起した訴訟で初の敗訴確定判決が下されたが、外国では巨額の賠償金合意または、勝訴事例が相次いでいる。 アメリカは1954年、タバコ会社を相手に損害賠償訴訟が始まった後、1992年までは800件余が全て原告敗訴で終わったが、1998年から州政府などがタバコ会社を相手に賠償金を受け取り始めた。

 アメリカ ミシシッピ州政府が1994年にタバコ会社を相手に‘政府が支出した医療費を賠償せよ’という訴訟を起こした後で、48の州政府、市政府、健康保険組合も訴訟戦に飛び込んだ。 この内46州政府が連合して1998年にフィリップ・モリスなどのタバコ会社に2460億ドル(約255兆ウォン・25兆円)の賠償を受け取る合意を引き出した。

 アメリカでは喫煙被害者である個人が損害賠償訴訟で勝った事例も出ている。 フロリダ州最高裁は2001年にある喫煙被害者がタバコ会社ブラウン アンド ウィリアムスンを相手に提起した訴訟で108万7000ドルを支給せよと判決した。 これはアメリカで初めて被害者個人がタバコ会社から賠償金を受け取った事例として知られている。

 カナダは1997年に州政府に対してタバコ会社を相手とする訴訟権限を与え、喫煙と疾病の因果関係はないということを立証する責任をタバコ会社に問う‘タバコ損害および治療費賠償法’を作った。 タバコ会社はこの法律が違憲だとし訴訟を起こしたが、連邦最高裁は合憲と決めた。 オンタリオ州政府は昨年5月、タバコ会社を相手に出した500億ドル訴訟で勝った。

 喫煙被害の責任を依然として喫煙者らに問う国々もある。 フランス最高法院は、2003年に一日にタバコを2箱ずつ吸って肺癌に罹り亡くなった喫煙者家族が、タバコ会社アール・タディスを相手に起こした訴訟を棄却した。 日本の最高裁判所も2006年に肺癌患者6人がタバコ会社日本タバコ産業と国家を相手に起こした訴訟でタバコ会社には責任がないと判断した原審を確定した。

キム・ソンシク記者 kss@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/632234.html 韓国語原文入力:2014/04/10 20:37
訳J.S(1027字)

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