本文に移動

現場ズーム・イン] 毀損され放置された‘廃屋’の驚くべき正体

登録:2014-03-26 13:18 修正:2014-03-26 16:41
放置されている‘120周年東学革命’遺跡
東学農民革命当時、執綱所(農民たちによる自治機構)として使われた全北(チョンブク)金堤市(キムジェシ)金山面(クムサンミョン)院坪里(ウォンピョンリ)の廃屋で、キム・ソクテ全国東学農民革命遺族会会長がつぶれた軒を指さしている。

 1894年農民たちは封建制度を改めて日帝の侵略を防ぐために立ち上がった。 今年は東学農民革命が起きて2甲(120年)の年だ。 日本の右傾化が露骨化している今、東学農民軍の自治機構である執綱所は廃虚と化し放置され、日本軍との戦闘で亡くなった無名の農民軍兵士たちの墓は崩れていて世話する人もいない。

 今にも倒れそうな家の錆ついた鉄門は堅く閉ざされていた。 門には売り物件であることを告げる横断幕がかかっていた。 門の脇の側門を通って中に入った。 広場には壷、椅子、ミネラルウォーターの箱などが乱雑に散らばっていた。 屋根の瓦はぽっかりと落ち窪み、天井には穴があき空が見えていた。 主人を失った履き物や布団などがホコリをかぶって転がっていた。 10年余り、空き家になっていたため、ものさびしい空気が漂っていた。

■ 廃屋になり放置された東学農民軍執綱所

 去る19日午前、全北(チョンブク)金堤市(キムジェシ)金山面(クムサンミョン)院坪里(ウォンピョンリ)184の3(ポンファン路5)を訪ねた。 一見平凡な廃屋と見えるが、ここは120年前の東学農民革命当時、農民自治機構である執綱所であった。 4部屋を持つこの建物は1970年代に屋根がわらぶきから瓦に変わっただけで原形を維持している方だ。 ここは現在、本来の土地の上に唯一残っている東学農民革命遺跡だ。

 東学農民軍は1894年4月、朝鮮王朝の発祥地であり全羅(チョルラ)監営(カミョン)があった全州城(チョンジュソン)を占領した。 これは農民軍が収めた最大の成果であり、朝鮮王朝に対する挑戦を象徴する意味がある。 住民自治機構である執綱所の総本山が全羅監事の執務室である宣化堂に設置された。

1894年11月、全北金堤市 金山面 龍虎里(ヨンホリ)クミ村の山野で繰り広げられた東学農民軍の最後の戦闘で名前を残すこともなく倒れて行った東学農民軍兵士たちの墓が残っている。 だが、管理されてらず土の墓を見つけるのが難しいほどだ。

 この家の上梁文(家を建てる時に大黒柱をのせる梁に書く祝いの文)には‘光緒八年壬午三月二十日’と漢字で書かれている。 光緒は清国光緒帝の年号で光緒八年は1882年を意味する。 実際、白丁出身の‘トン・ロクケ’という人が東学精神に感銘を受けて金堤院坪の大接主(東学の郡・県単位の大規模組織である‘接’の責任者)キム・トンミョン将軍を訪ねてきて "身分差別のない世の中を作ってほしい" としてこの家を農民軍に献納し、農民軍の執綱所として活用されたと伝えられる。 ウォン・ドヨン(50)円光(ウォングァン)大教授(文化コンテンツ学)は 「執綱所は農民が主張した税金・土地改革政策案を実践し、身分解放まで進めるなど大同の世の中を実現した。 1980年5月光州(クァンジュ)が10日間にわたり成熟した市民意識で共同体を守ったように、執綱所の3~4ヶ月もこれと似た性格」と話した。

 952㎡(288坪)規模のこの家の主人が、3.3㎡(1坪)当たり100万ウォン程度での売却を望んでいるため買いとるには3億ウォン近くかかるものと見られる。 キム・トンミョン将軍のひ孫であるキム・ソクテ(70)全国東学農民革命遺族会会長は「3億ウォンさえあれば建物の保全が可能なのに、このように放置して先祖に罪を犯いているようで胸が痛い」と話した。 彼は「他の東学革命遺跡は土地なので歳月が流れても変わらないが、家の屋根が崩れれば全体が壊れて即座に崩れる。 東学農民革命100周年を迎えた20年前にも各機関にこのような事情を知らせたが何も変わらなかった」として残念がった。

全琫準(チョン・ボンジュン)将軍が部下の密告で全北(チョンブク)淳昌郡(スンチャングン)双置面(サンチミョン)錦城里(クムソンニ)で捕まった場所には、案内文も標示石もないなど、無関心の中に放置されている。

■ 土の墓を探すことも難しい農民軍最終戦闘地

 全北金堤市 金山面 龍虎里(ヨンホリ)クミ村の野山には無名のまま倒れて行った東学農民軍兵士たちの墓20余基が残っている。 農民軍は公州ウグムチで大敗した後、ここまで後退して官軍・日本軍と最後の戦闘を行った。 東学農民軍の最後の戦闘地であるここで農民軍兵士数十人が戦死したと伝えられる。

 当時、農民軍兵士たちの遺体を収拾して墓を作ったが、今は土の墓を見つけることも難しいほどにひどく毀損されている。 2005年の台風で木が倒れたために土の墓が毀損されている。 今も根こそぎ倒れた木がそのままに放置されている。 金堤市が昨年12月、墓地の入り口に案内板を作って、かろうじてここがどんな所なのかを分かるようにした。

 チェ・ゴウォン(44)金堤東学農民革命記念事業会事務局長は「自分が幼い時には、この墓地の墓の形がそれなりに残っていたが、歳月が流れながら跡形が消えている。 そこで2008年に木杭に数字を書いて18本を打ち込んでおいた。 これすらなければ一般の人たちは墓だということすら全く分からない」と話した。 彼は「2008年に創立した遺族会が関心を持っているものの限界がある。 戦死した農民軍兵士たちを追慕できる一定の墓の形を備えなければならない」と話した。

 全北(チョンブク)井邑市(チョンウプシ)山外面(サンウェミョン)東谷里、キム・ケナム将軍の古宅跡も放置されている。 キム・ケナムは全琫準(チョン・ボンジュン)、ソン・ファジュンと共に東学農民軍の3大指導者だ。 キム・ケナム将軍のひ孫 キム・ジョンギ(62)氏は「東学の時、曽祖父の家では農民軍3000人が3日間ご飯を食べて行くほどに財力があった。 その多くの財産が今は影も形もない。 ‘絹布の祖父にゴザの子孫’という言葉があるが、その言葉通りだ。 今は他人の土地になった古宅跡を買って復元しようとしても、全北道(チョンブクド)と井邑市(チョンウプシ)にはその気がない」と話した。 東学農民革命財団関係者は「全琫準将軍の古宅は1981年に史跡に指定されたが、キム・ケナム古宅は跡は文化財に指定されず今年120周年を迎えて整備対策が必要だ」と話した。

■ 案内板もない緑豆将軍 全琫準の逮捕場所

 井邑市(チョンウプシ)梨坪面(イピョンミョン)滄東里(チャンドンリ)の全琫準将軍の壇所には記念碑がとても多く、これを整備しなければならないという指摘が出るほどだ。 壇所とは遺骸のない墟墓をいう。 東学農民革命60周年である1954年に、天安(チョナン)の全氏宗中がここに碑石を建てた。 民間で初めて建てた東学農民革命記念碑であった。 以後、多くの民間団体が東学農民革命100周年の1994年に追加で碑石をたてて、9個が増えた。 チョン・ヘチョル(79)全琫準将軍記念事業会理事長は「全将軍の崇高な意を継承するために、昨年12月に法人を作った。 周辺の土地を購入して記念碑9個を片側に移して整備する計画」と話した。

 記念碑があふれている壇所とは違い、全北淳昌郡(スンチャングン)双置面(サンチミョン)錦城里(クムソンニ)の全琫準将軍の被逮地(逮捕された場所)は全く管理がなされていない。 全将軍が部下の密告で逮捕された被逮地は空き家として残っている。 ここから約300m離れたところには2005年に建てられた被逮地展示館がある。 しかし、被逮地には実際に全将軍が逮捕された場所であることを知らせる案内板や標示石はない。

 被逮地展示館にも説明がきちんとされていない部分がある。全琫準将軍の墓がないのに墓の写真が貼られているなど歴史的事実が一部間違っており、記述した内容と写真が合わないケースもある。 イ・ビョンギュ(47)東学農民革命記念財団研究調査部長は「東学革命と関連のない公州城の写真があったり、同じ写真を何度も繰り返して貼るなど全体に脈絡がつながっていない。 要するに取ってつけた感じがする」と指摘した。

 キム・ケナム将軍は全州川に近い坤止山(コンチサン)の山裾のチョロク岩で処刑されたが、そのことを知らせる案内板はまともに設置されていない。 ただしチョロク岩を説明する表示板の一番下の部分にキム・ケナム将軍の説明が僅かに一行入っているのみだ。

 イ・ビョンギュ研究調査部長は「東学農民革命遺跡はき損という言葉は的確でない。 無関心に放置されており、傷つけることもないためだ。 管理ができていないので人々が遺跡であることすら分からない場合が多い」 と話した。 東学農民革命記念財団の資料を見れば、東学農民革命遺跡 合計353件の内、279件は史跡、市・道指定文化財などとして登録されていない状態だ。

 そのために東学農民革命120周年と、2004年に作られた東学農民革命特別法制定10周年を迎えて、革命関連宣揚事業を急がなければならないという声が出ている。 歴史学者イ・イファ(77)氏は「李明博・朴槿恵政府は東学農民革命に関心を持たなかった。 李明博前大統領は4大河川事業をするとして、東学関連団体の予算を10~20%ずつ削った。 朴槿恵大統領が口先だけで日本の右翼教科書採択と安倍晋三総理の発言を問題視したからと、それが何になるか。 東学農民革命は我々が日本軍と戦った歴史だ。 東学革命の精神をもう一度呼び覚まし、宣揚事業を通じて持続的に発展させなければならない」と話した。

全州/文・写真パク・イムグン記者 pik007@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/area/629505.html 韓国語原文入力:2014/03/24 17:45
訳J.S(4155字)

関連記事