ヨーロッパと日本の鉄道専門家たちが韓国に集まった。 政府が推進している鉄道民営化(競争体制導入)政策に対する警告の声を上げるためであった。 28日と29日の2日間、国会議員会館大会議室で開かれた‘韓国鉄道未来のための国際シンポジウム’に参加した鉄道専門家たちは 「韓国政府が成功事例として明らかにしているヨーロッパと日本の鉄道民営化政策は結果的に公共性の後退を呼び起こした」として「各国がすでに体験した民営化の失敗事例を耳をそばだてて聴かなければならない」と助言した。
シンポジウムでは各国が体験した鉄道民営化の事例が共有された。 スウェーデンのヤン・ルーデン基幹産業全国交渉委員会委員長は民営化と競争入札による鉄道体制の不健全化を指摘した。 彼は「去る20年余り、スウェーデンの鉄道産業は徐々に分割され民営化されたし、2011年末には結局旅客サービスは全面的な民営化(入札競争体制)の道に入った」として「民営化後、線路作業中の死亡事故だけで7回あったが、これらは決して偶然ではなかった」と話した。 彼は「これは鉄道運営業者と線路管理業者が分かれたことにより起きたこと」とし「競争体制導入は鉄道の体系的構造を傷つけること」と話した。
ドイツ最大の環境団体‘地球の友’の交通運輸課長であるヴェルナーレ博士は、韓国政府が民営化のモデルとして提示しているドイツの民営化経験について言及した。 彼は 「韓国政府がなぜドイツの失敗した悪い政策だけを持ってこようとしているのか、まったく理解できない」として話を始めた。 彼は「ドイツ政府は鉄道体制を持株会社方式に変えて、持分売却を試みようとしていた2008年に世界金融危機で不発になった」として「ドイツではこれを幸せな失敗と呼んでいる」と話した。 ヴェルナーレは 「韓国政府が競争体制導入のために水西発KTXを別の子会社に任せようと構想していると聞いたが、これは国家基幹交通網である鉄道を亡ぼす道になるだろう」と話した。 国土交通部はKORAILを鉄道持株会社として水西発KTXを含む旅客、車両重整備、貨物運送などを担当する子会社を設立するという‘ドイツ式持株会社’方案を推進している。
‘東日本、日本鉄道(JR)’労働組合の石井隆副委員長は 「日本もやはり鉄道民営化の風に乗って7つの会社に分離し、その内4ヶ所が赤字になっている」として「結局これらの借金は政府補助金に帰結する」と話した。 民営化推進後にも政府の財政負担が減っていないという指摘だった。 英国の鉄道専門家である言論人クリスチャン ウォルマーは「英国では高い料金と頻繁な事故など、鉄道利用客が多くの被害を受けている」として「民営化それ自体も問題だが、民営化を簡単に推進するために鉄道体系を分割することが特に深刻な問題」と指摘した。 制限された線路を複雑な信号体系を通じて共有している鉄道産業は、分割に適していないという意見だった。
国内の専門家たちも政府の鉄道民営化方案に対して批判的意見を出した。 この日討論に参加したオ・ゴンホ グローバル政治経済研究所研究室長は、特に国民年金を利用した持分売却案を鋭く批判した。 オ室長は 「水西発KTXを運営する子会社持分を国民年金など公的基金に売却するので民営化ではないとの論理を出しているが、これは虚構」として「国民年金はその財源が公的年金なだけであり、その運営は徹底的に利潤を追求する私的金融と違いがない」と話した。 市中金利以上の運用収益をおさめることを要求されている年金基金に、公共性担保を期待することは難しいという意見だった。 経実連のユン・スンチョル事務局長は 「朴槿恵(パク・クネ)政府が推進している競争体制導入は、時差を置いているだけで、その本質は民営化に帰結される」として「KORAILの合理的改革が必要ならば合理的な統制方案を用意するべきであって、民営化は答にはならない」と話した。
韓-米自由貿易協定(FTA)と連結された危険性を指摘する意見も出てきた。 法務法人 茶山のソ・サンボム弁護士は「水西発KTXの運営者がKORAILではない別途法人に決定されるならば、‘内国民待遇’を原則としている自由貿易協定が問題になる可能性が高い」として「公企業であるKORAILにだけ鉄道運送ができるわけではない点を自ら認める格好なので、今後米国企業が韓国鉄道産業に資本参加をしたり、直接旅客事業への参入を防ぐ方法がない」と話した。
ノ・ヒョンウン記者 goloke@hani.co.kr