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[土曜版] カバーストーリー 姜尚中 日本聖学院大教授インタビュー

登録:2013-08-10 08:30 修正:2013-08-10 11:31
‘鬼胎’とは何か
逆流する韓国・日本歴史共通点を語る
姜尚中(カン・サンジュン)日本聖学院大教授が2010年11月‘ハンギョレ-釜山(プサン)国際シンポジウム’に参加した時の姿。 写真キム・ギョンホ記者 jijae@hani.co.kr

自身の本<岸信介と朴正熙>を通じて‘鬼胎’という用語を韓国に初めて紹介した姜尚中 日本聖学院大学教授が光復節68周年を控えた去る7日夜、<ハンギョレ>と会った。 最近この大学の総長に選任され話題になったりもした彼は、韓国の植民地清算と日本の右傾化、韓国の政界を一時揺さぶった‘鬼胎’論難に関し見解を明らかにした。

インタビュー東京/チョン・ナムグ特派員、チェ・ソンジン記者 csj@hani.co.kr

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"韓国と日本 どちらも先進国とは言えない"

▲ 15日 光復節68周年を控えています。 私たちは果たして日本植民支配の遺産をどれくらい清算したでしょう。 親日付逆がさらに大きな問題でしょうか、朴槿恵(パク・クネ)大統領の‘気持ち’に逆らうことがさらに大きな問題でしょうか。 ‘鬼胎論難’を見れば答が見えるかも知れません。 韓国国籍の在日同胞としては、初めて日本の総合大学の学長に選任された姜尚中 日本聖学院大教授が、それぞれ光復節と終戦記念日68周年をむかえる韓国と日本を診断しました。

 去る7月11日、韓国では‘鬼胎論議’に火が点いた。 ホン・イクピョ民主党議員が朴正熙前大統領と朴槿恵大統領を‘満州国の鬼胎’、‘鬼胎の子孫’と遠回しに言った発言から始まった騒動だった。 ホン議員の鬼胎発言が出てくるや大統領府とセヌリ党、保守言論は一斉にホン議員と民主党を狙い十字砲火を浴びせた。 ホン議員の発言が大統領の正統性を否定する大統領選挙不服性発言だという論理であった。 鬼胎論難は7月12日、民主党の謝罪とホン議員の院内スポークスマン職辞退で弱まった。

 鬼胎論難が韓国政界を席巻した後の7月22日、日本では韓国国籍の在日同胞政治学者が初めて日本の総合大学の学長席に選任されたという便りが伝えられた。 自身の本<岸信介と朴正熙>を通じて‘鬼胎’という用語を韓国に紹介した姜尚中(62)聖学院大学教授がその主人公だった。 1998年4月やはり韓国国籍者としては初めて東京大学の正教授(社会情報研究所)として任用された姜教授は去る4月、16年間身を置いた東京大を離れ、日本、埼玉県上尾市にある聖学院大学に移った。

 姜尚中教授は7日夜、聖学院大の研究室で<ハンギョレ>記者と会い「鬼胎は日本軍国主義が産んだ存在、すなわち満州国を指す表現だった。 満州国という鬼胎のまん中で政治家としての基盤を磨き上げた人が岸信介だとすれば、朴正熙前大統領は高木正雄という名前で満州軍官学校から軍人の道を歩いた」と指摘した。

 姜教授は鬼胎論難に対する立場以外にも、去る7月に行われた日本参議院選挙の結果と安倍政府の右傾化の動き、光復節68周年をむかえる韓国の植民地遺産清算などに関する見解を明らかにした。

姜尚中 聖学院大教授は去る7日、日本、埼玉県上尾市にある大学研究室で<ハンギョレ>と会い「満州国と連結されている岸信介元総理の外孫と朴正熙前大統領の娘が同じ時期に韓・日両国の最高権力者になったことは、偶然というよりは歴史的因縁のようだ」と語った。 東京/チョン・ナムグ特派員 jeje@hani.co.kr

韓国・日本の掛け橋になろうとして移った聖学院大

-在日同胞としては初めて日本の総合大学の学長席に上がった。 所感を聞きたい。

"重い責任を感じている。 東京で過ごす間、個人的な不幸を体験もした。 第2の人生を生きたいという思いがあったが、残った人生を過すにあたり色々な形の道があった。 しばらく‘作家として文に埋もれてみようか’と考えたこともあった。 色々な考えの中で、やはり若者を教えたいという気持ちが一番強かった。 ちょうど去る4月に移ってきた聖学院大のすべての構成員が全員一致で私を学長として迎えてくれた。 新しいところで務めることになった新しい仕事に大きな意欲を持っている。"

 姜尚中教授の専攻分野は日本近代と植民地支配の歴史だった。 東京大に身を置いた16年間、彼は専攻分野を越えて活発な著述活動とTV出演等を通して知識人としては珍しく幅広い人気と大衆的影響力を同時に得た。 特にエッセイ集<悩む力>は100万部以上売れもした。 姜教授が話した‘個人的不幸’とは、4年前に息子が自ら命を絶ったことを指す。 彼が最近日本で出版した小説<心>は、先に見送った彼の子息に関する話だ。 彼は「<心>は息子を失った不幸に関する話で、書くのが難しかったが、同じような不幸を体験した人々から本を読んで共感したという反応が結構あった」と明らかにした。

-最近まで身を置いた東京大と聖学院大はどのように違うか?

"聖学院大は規模が小さいキリスト教系の総合大学だ。 ソウルにある長老会神学大学など韓国の大学との交流も多く、韓国人留学生がかなり来る学校でもある。 反面、東京大は誰もが認める日本最高の大学で、日本の心臓部、頭脳のような所だ。 去る17年間、東京大が私のような者を受け入れてくれ、私としては感謝の気持ちを持っている。 現代韓国研究センターも作れたし、退任する時には名誉教授にも任命した。 ある意味では私を大切に考えてくれたと考える。 ありがたく思っている。"

-来年4月から5年間、学長任期が始まる。目標や計画はあるか?

"まだ具体的に整理されてはいない。 先ず、この大学はキリスト教精神に根を置いた独特の大学であるから、日本全国の学生が集まる大学にしたい。 韓国を中心に東アジアの色々な国の留学生も受け入れたい。 韓国と日本の交流強化に寄与する大学を作りたいというのが抱負だ。"

 日本では学校法人を‘学院’と呼ぶ。 聖学院には幼稚園から大学、大学院などが属している。 学院に属するすべての各級学校に責任を負う人は学院長、大学を任される人が学長だ。 学長は韓国の大学での総長に該当する。 姜尚中教授が新任学長に選任される前まで、聖学院の阿久戸光晴 学院長は学長職も併せて受け持っていた。 姜教授は聖学院大に移った理由について「韓国と日本を連結する人として仕事がしたかった」と明らかにした。

普通国家の道は改憲ではなく過去事反省

-去る7月21日、日本の参議院選挙は自民党の圧勝で終わった。 姜教授は去る1月、ハンギョレとのインタビューで「安倍の‘レジーム チェンジ’構想が成功するか否かは7月の参議院選挙を見守らなければならない」と話した。 日本憲法を改定して‘戦犯国家’ではない‘普通国家’に進もうと考える安倍政府の構想が参議院選挙を基点に本格化しうるという指摘であったが、その考えには変わりがないか?

"自民党が圧勝したという分析は正確ではないと見る。 得票数を基準とすれば、自民党が支持者を大きく増やしたのではなく、野党が弱かったのだ。 投票率が52%台に終わったという点も重要だ。 日本国民のほとんど半分は投票しなかったということだが、これはすなわち選びたい政党がなかったという話だ。 韓国でもこの点を正確に見て欲しい。 ただし、日本ではこの間(それぞれ上院と下院の役割をする)参議院と衆議院の多数党が異なる場合が多かったが、今回の選挙で自民党は参議院と衆議院を共に掌握した。 次の衆議院選挙が3年後には行われるはずだが、安倍政府が非常に有利な政局運営条件を備えたことは事実だ。"

-安倍の‘レジーム チェンジ’も早まりうるのではないか?

"自民党はスペクトラムが広い政党だが、安倍総理と考えの異なる自民党内の他派閥の反対がないならば、レジーム チェンジは一歩ずつ進むことができる。 まず憲法解釈担当部署である内閣法制局長官人事の時、この席に集団的自衛権行使に賛成する人を座らせることは‘レジーム チェンジ’の布石となる可能性がある。"

-日本が集団的自衛権を行使できるという方向に憲法解釈を直そうとする意図はどこにあると見るか?

"日本の憲法9条では陸海空軍などいかなる戦力も保持できないようにしているが、実際には日本自衛隊の戦力は世界でも指折り数えられるほど強大だ。 日本はこれを実質的な軍事力と認められ、他国で運用しようという欲望を抱いている。 ‘集団的自衛権行使を許容しようという風に憲法解釈を変えよう’、‘現憲法にともなう自衛隊の名前を国防軍に変えよう’等の主張が出てくる背景はこのような欲望から始まっている。"

司馬遼太郎が初めて書いた‘鬼胎’は
民族主義が軍国主義に歪曲された
1905~1945年の日本を指した言葉
私はそこからインスピレーションを得て
満州国を鬼胎と表現した
A級戦犯 岸信介も
高木正雄だった朴正熙も
青春を過した満州で基盤を磨き上げた
二人の子孫が同じ時期に
指導者になったのは歴史の因縁だ

 姜尚中教授は去る1月25日、ハンギョレ インタビューで 「(安倍総理は)第2次世界大戦敗北以後、米軍占領期に制定された憲法とそれが作り出した意識自体を変えようとしている。 言ってみれば戦後体制と決別した新しい日本を作ろうとしている」と話した。 彼が話した‘戦後体制と決別した新しい日本’が、すなわち他国のように軍隊を保有して交戦権を持つ‘普通国家’ならば、‘レジーム チェンジ’は普通国家に至る過程を示す。 また、普通国家を実現する核心手段は日本憲法の改定だが、その最初のロードマップが集団的自衛権の行使を可能にすることだ。 今回のインタビューの翌日である8日午後、日本政府は閣僚会議を開き、憲法解釈を担当する内閣法制局長官に小松一郎 駐仏大使を任命することを決めた。 日本の内閣法制局はこの間、日本が集団的自衛権を持ってはいるものの、戦争放棄と戦力保有・交戦権不認定などを明記した憲法9条により自衛権の行使は出来ないと解釈してきた。 反面、小松新任法制局長官は2011年10月に出版した自身の本<実践国際法>で同盟国のための集団的自衛権行使の必要性を積極的に主張してきた。

-安倍政府は今回の参議院選挙を控えて、憲法9条の改定に先立ち改憲手続きを規定した憲法96条の改定公約を掲げた。 ‘平和憲法’と呼ばれる憲法9条改憲のために、憲法96条から先に攻略するということだが、それは可能と見るか?

"簡単とばかりも言えない。 ひとまずは憲法改定に必要な参議院での3分の2を確保できなかった。 世論の反対も侮れず、国民投票を通過するかも疑問だ。 もちろん以前よりは改憲のための条件がより備わったことは事実だ。"

-日本が憲法改定など普通国家構想をあきらめないならば、韓-日関係は険悪にならざるをえない。

"日本と同じく第2次世界大戦の敗戦国家であるドイツは、ある程度普通国家と言うことができる。 ドイツが日本と根本的に異なる点は、大規模プルトニウムを保有していないという事実だ。 日本は(非核保有国の中で唯一)核物質(プルトニウム)はもちろん、核再処理施設と核燃料サイクル(核物質抽出・製造工程)技術を持っている。 過去事清算と関連しても、ドイツは日本とは比べものにならないほどに隣国からの信頼を得た。 過去の問題で韓国や中国と依然として葛藤を経ている日本はドイツとは違う。 日本が普通国家を建設したいなら、少なくとも歴史問題だけはドイツを見習って、韓国と日本の信頼関係を構築すべきであった。"

-日本政府の閣僚である稲田朋美 行政改革担当相と新藤義孝 総務相などが日本の終戦記念日である来る15日に靖国神社に参拝することにした。 安倍総理も在任期間中に必ず靖国に参拝するという意志を明らかにしたと理解している。 大多数の韓国人は日本政府のこのような態度に対して怒っている。

"安倍総理は来る15日には靖国に公式参拝しないと見られるが、10月の秋期大祭に合わせて参拝する可能性は依然として残っている。 もしそうなれば、韓-日、中-日首脳会談は開かれなくなるだろう。 日本政府要人の靖国神社参拝は米国の反発も呼び起こす可能性が高い。 A級戦犯を合祀した靖国神社の参拝は、太平洋戦争に対する日本の態度を示すものだ。 日本は靖国参拝で韓国と中国、米国などすべての主要国の反発を買いかねない。"

-日本政府閣僚の靖国神社参拝に対する日本国民の反応はどうなのか?

"小泉純一郎前総理は靖国神社参拝で日本国民に拍手を受けたことがあった。 靖国神社は一般的な宗教施設ではなく、太平洋戦争戦没者追悼施設の機能も持っている。 日本国民の中にはこのような靖国神社参拝がどんな意味を持つのか、よく知らない人がいる。 小泉政府以後、多くの日本国民は政府要人が8月15日に合わせて靖国に参拝すれば、韓国と中国が非常に敏感に反応するという事実を学んだ。"

韓国戦争がなかったとすれば植民地は清算されただろう

-日本軍慰安婦問題も韓-日両国間の主要懸案として残っている。 これと関連して安倍総理は、慰安婦強制動員の歴史を否定するなど問題ある見解を表わした。 さらに慰安婦動員の強制性を認め謝罪した‘河野談話’(1993年)と、侵略と植民支配を謝罪した‘村山談話’(1995年)まで見直すという態度を示している。

"河野談話は当時、日本政府の合意の下に河野洋平官房長官が発表した公式談話であり、村山談話も村山富市 当時総理の個人的立場ではなく内閣全体の見解であった。 重みがあるものだった。 安倍総理はこれを見直して安倍談話に変えようという動きを見せたことがある。 今でもそのような考えを持っているかもしれない。 河野談話を修正するならば、例えば‘慰安婦動員の強制性は客観的に確認されていない’等の字句を入れようとするはずだが、これを変える事はそんなに容易ではないだろう。"

-過去事認識は日本だけの問題ではない。 光復節68周年をむかえる韓国も、植民地遺産の清算という課題から依然として自由でないではないか?

"日本が韓国社会に残した植民地遺産は広く深い。特に日本帝国主義と満州国の人脈が世代を越えて韓国社会に影響力を持っている。 彼らの人脈は‘表面的’には韓国の圧縮的近代化を導く役割をしたという印象を国民に深く残しているが、それが大きな遺産になっている。 これはもちろん朴正熙前大統領に対する評価とも関連する。"

-植民地遺産の清算がなされない理由は何だと見るか?

"根本的な問題は韓国戦争にあると考える。 韓国戦争と分断がなかったとすれば、植民地遺産の清算は相当になされた筈だ。 フランスでは完全ではなかったがナチ協力者に対する清算作業を強力に推進した。 これとは違い、韓国では植民支配に続く戦争と分断が決定的だった。 植民支配による被害回復に先立ち大規模戦争を体験する過程で、韓国国民の被害はより一層大きくならざるをえなかった。 南北分断が今に至るまで解消されずにいる中で、南北関係まで険悪だから植民地遺産の清算より冷戦体制に立った反共主義が優先視されざるを得なかった。 二重の問題を抱いている韓国の植民地遺産清算は今後もかなり時間がかかるものと見る。"

戦争前後に対する日本の
混在された郷愁と反省が
岸信介を呼び出し
民主化に失望した韓国は
独裁を再評価し始めた

世界化を経験した若者たちは
反抗と逸脱現象を見せているが
韓国の若者たちは民主化勢力を
日本の若者たちは在日韓国人を
犠牲の羊と見なして攻撃している

-去る7月、韓国政界では姜教授の本<岸信介と朴正熙>に出てくる‘鬼胎’という表現を巡り激しい論議があった。 こういう事実を知っているか?

"鬼胎という用語は、韓国と日本で少し違った意味で使われる。 日本より韓国では更に良くない表現として通じるようだ。 鬼胎という用語を初めて使った人は日本の有名な作家、司馬遼太郎であった。 彼は自身の本<この国のかたち>で1905年日本が大韓帝国の国権を奪った時点から(戦争が終わった) 1945年8月15日までを‘日本の歴史の鬼胎’と表現した。 彼にとってこの時期は、明治時代初期の相対的に健全な民族主義が軍国主義によって歪曲された時代であった。 私はそこからインスピレーションを得て鬼胎という表現を使った。 日本は1905年露日戦争で勝って満州に進出したが、それなら満州国という存在は鬼胎の所産だという意味だった。"

 去る7月11日、民主党院内スポークスマンだったホン・イクピョ議員は、国会ブリーフィングで<岸信介…>の内容を紹介して 「鬼胎という表現がある。‘鬼神の鬼’字に‘胎児の胎’字を書いて、その意味は生まれてはいけない人々が生まれた、当時日本帝国主義が建てた満州国の胎 朴正熙と岸信介がいたが、皮肉なことに鬼胎の子孫が韓国と日本の首脳である」と指摘した。 ‘鬼胎の子孫’とは、すなわち朴槿恵(パク・クネ)大統領と日本の安倍晋三総理を指す表現だった。 姜教授は鬼胎論難以後になされた今回のハンギョレ インタビューで、鬼胎と関連して 「焦点を合わせたのは満州国だった」と話したが、<岸信介…>を見れば 「‘帝国の鬼胎’とまで呼んでこそ当然な このような満州人脈‘同窓会’」(20ページ)等の表現を何度も使った。 <岸信介…>にはこの他にも‘満州が産んだ鬼胎’、‘よみがえる鬼胎’等の表現が登場するが、その度に満州国と満州人脈を指す表現として使われた。 もちろんここで言う満州人脈の代表的人物は岸信介と朴正熙元大統領だった。 日本安倍晋三総理の母方の祖父である岸信介は、日本軍国主義体制を代表する政治指導者の1人だった。 太平洋戦争が終わった後、戦争に対していかなる反省もしなかった。 日本右翼政治家の原形に挙げられる岸は、1957年総理の席にまで上がった。

外国為替危機で‘敗戦’を経験した韓国の若者たち

-実際、本には岸信介と朴正熙前大統領など‘満州人脈’を指して‘帝国の鬼胎’と表現した部分も出てくる。

"満州国という鬼胎のまん中で政治家としての基盤を磨き上げた人が岸信介だとすれば、朴正熙元大統領は高木正雄という名前で満州の軍官学校から軍人の道を歩いた。 二人の青春が始まり終わったところが満州国だった。"

-ホン議員は鬼胎という表現を使って、それぞれ岸信介と朴元大統領の外孫、長女である安倍総理と朴槿恵大統領が歴史の真実を否定して、さらには歴史の時計の針を後退させているなどの類似性を指摘した。 (ホン議員の主張のように)韓国・日本両国で‘維新共和国復活’、‘軍国主義の復活’等の憂慮が出てきている。

"岸信介の外孫と、朴正熙元大統領の娘が同じ時期に両国で最高権力者になったという事実は偶然かもしれないが、何らか歴史の因縁のようだという感じもする。 また、日本では戦争以前と以後に対してノスタルジア(郷愁)と反省という流れが同時に現れているが、その過程で岸信介のようなA級戦犯が再び高く評価されることがある。 こういう現象は韓国でもほとんど同じように伺える。"

-実際、韓国では朴正熙元大統領に対する再評価作業が活発になされている。 あちこちで‘朴正熙記念図書館’と彼の銅像、さらには彼の夫人である陸英修(ユク・ヨンス)氏の生家も復元している。 こういう現象をどのように見るか?

"逆に考えればそのような現象は民主化、民主主義に対する韓国国民の期待値が過度に高く、それにともなう失望も大きかったという意味だ。 民主化に対する熱望は、単純に民主主義の実現だけを望んだわけではなく、その中で階層間の格差を解消して人生の豊かさを享受できる社会を望んだことなのに、現実はそれとは反対だった。 失業率が高まり非正規職が増えた。 所得水準が下がり結婚できない若者も増えた。 前で話した植民地遺産、また開発独裁の遺産に対する再評価がなされる理由もそこにある。"

-民主化を引っ張ってきた勢力に対する不満が親日・独裁勢力に対する再評価につながっているならば、そのような不満もやはり健全ではないと言えるのではないか?

"1997年外国為替危機を体験して、またそれを克服する過程で、多くの韓国の若者たちは‘敗戦’に近い感覚を集団的に経験したようだ。 世界化を経験した各国の若者たちから共通して現れている反抗と逸脱がまさにそれだが、例えば第1次世界大戦以後ヨーロッパを席巻した‘アプレゲール’と歴史的に類似点がある。 当時ドイツではこのような雰囲気の中で登場したヒットラー世代と全体主義的傾向がかみ合わさってナチズムを産んだ。 今の韓国と日本の若者たちは、一つの政治勢力を形成することはできないけれど、あちこちに犠牲の羊を探すなど、非常に攻撃的な指向を見せている。 韓国ではその矛先が民主化勢力に向かっているとすれば、日本ではリベラル(自由主義者)と呼ばれる勢力とメディア、在日韓国人などに刺さっている。 フランスでは極右派政治家ジャン マリー・ルペン(国民戦線前代表)が登場した時に似た指摘が出された。 私は良し悪しを別にして、このような韓国と日本は共に先進国だとは言えないと見る。"

 アプレゲールとは、元々第1次世界大戦が終わった後にフランスの若い芸術家たちが伝統的な価値体系を否定し新しい芸術を創造した文芸思潮を指す言葉だった。 日本では太平洋戦争を基準とした戦後派、戦後世代などの意味で使っている。 韓国では韓国戦争以後に登場した作家を戦後派作家と呼んだりした。 アプレゲールの共通の特徴は、既成価値観の喪失、不安と虚無意識、極限状況を克服しようとする苦闘などに要約できる。

-韓国では安保談論が、他のすべての社会イシューを圧倒する現象が今でも続いている。 国家情報院の大統領選挙介入事件を見てもそうだ。 多くの韓国人がこのような現実に無力感を感じている。 最近の韓国の状況をどのように見るか?

"やはり最も大きな問題は北韓だ。 国際的に孤立した北韓の核開発や攻撃的態度がますます強く浮き彫りになるほど、‘国家安保’は他のイシューを圧倒する結果として現れるだろう。 これは国家主義から抜け出すことを困難にするが、そこから無力感と閉塞感が生じることがある。 これを乗り越えることは非常に難しい課題だ。 主流言論の弊害が非常に大きく、色々な代案言論の力量はまだ微弱だ。 市民社会も安保至上主義一色の姿を見せている。 たやすい解決法はありえない。 ただし、南北関係に対する解決法は南と北両国だけの問題として接近するより、周辺国との多者間協力の枠組みの中で議論されなければならず、そのような過程を通じて安保至上主義も和らげることができると言いたい。 南北問題を南北関係のみで接近しては解決が難しい。"

東京/インタビュー チョン・ナムグ特派員 jeje@hani.co.kr 企画・整理チェ・ソンジン記者 csj@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/599036.html 韓国語原文入力:2013/08/09 20:18
訳J.S(9684字)

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