"MB時、FTA追加譲歩の口実" 指摘も
韓国の戦時作戦統制権(戦作権)還収再延期要求は、次期戦闘機(F-X)事業、防衛費分担金交渉など韓-米間の利害関係がからまった様々な事案にも悪影響を及ぼすものと予想される。 米国が戦作権還収再延期をテコにして、各種懸案で韓国の譲歩を要求する場合、これを拒否しにくい‘非対称的境遇’がより一層激しくなるためだ。
実際、李明博政府時である2010年に戦作権還収を初めて延期した時も同様の論議が広がった。 当時政府は2010年3月天安(チョナン)艦事件を契機に戦作権還収延期を本格推進し、韓-米は3ヶ月後の首脳会談で韓国の戦作権還収時期を2012年4月から2015年12月に遅らせることに合意した。 以後、米国が要求した韓-米自由貿易協定(FTA)再協議も速度を上げたし、同年12月には韓国が自動車と牛肉などで追加譲歩した再協議案に合意した。 当時も戦作権還収延期のせいで、不利な合意を米国に対してしたのではないかという疑いが提起された経緯がある。
米国は戦作権還収再延期と関連して、まだ公式な反応は出していない。 16日(現地時間)韓国の戦作権還収再延期提案内容を公開した米国国防部最高位官吏はこの懸案に対して 「韓国政府とともに調査している」とだけ語った。 米国も内部的に明確な方針を整理できずにいるという。 ある外交消息筋は「米国政府が結論を出していないと承知している。 再延期について現時点では肯定でも否定でもないようだ」と話した。 しかし、米国国防部の最高位要人が核心安保事案を韓国言論に流したというのは、事実上‘世論伺い’の性格が濃厚に見える。
今回の戦作権還収再延期提案で直ちに影響を受ける事案は、今年までに終えなければならない韓-米防衛費分担金交渉だ。 米国は現在、駐韓米軍の非人的駐留費(米軍人件費を除いた米軍駐留経費)の40~45%である韓国の負担金を50%以上に増やしてほしいと要求していると言う。 この要求を受け入れれば、2013年現在8695億ウォンに達する韓国の負担金は1年に1兆ウォン程度に増えると予想される。 韓国は交渉で国益を守るという立場だが、米国が戦作権還収再延期を口実として掲げる場合、一方的には拒否しにくくなると見られる。
8兆3000億ウォンかかる次期戦闘機購買事業にも米国の圧力が高まる可能性が高い。 先端戦闘機60機を買い入れるこの事業の入札には、米国ロッキードマーティンのF-35AとボーイングのF-15SE,ヨーロッパ航空防衛宇宙産業(EADS)のユーロファイター タイフーン3が参加した。 当初、今月までに機種を最終選定する予定だったが、該当企業等が予想より高い価格を書いて出したせいで入札が失敗に終わり、25日に防衛事業推進委員会で事業方向を決める予定だ。
当初からこの事業は韓-米連合作戦のための相互運用性などを理由に米国機種が有利だという展望が多かった。 特に今回の戦作権還収延期を契機に、米国業者の立場がより一層強化され、今後の事業過程で韓国政府が米国企業等により良い条件を要求することが難しくなるという憂慮が出ている。 特にまだ開発も終わっていないF-35Aが選ばれる可能性がさらに高まったという観測もある。
韓国をミサイル防御体制(MD)に参加させようとしている米国の要求が強まる憂慮もある。 韓国は米国のミサイル防御体制が韓半島安保の現実と合わず、特に中国を刺激しかねないという判断により参加を拒否してきた。 しかし、5月7日の韓-米首脳会談でバラク・オバマ大統領は「我々は共同の能力、技術そしてミサイル防御に投資することによって共に成功し共に作戦を行う」としながら、韓国のミサイル防御体制への参加を促した経緯がある。 朴槿恵(パク・クネ)大統領は当時これに言及しなかったが、戦作権還収延期を契機に米国の要求がより一層強まるものと見られる。
パク・ビョンス先任記者、キル・ユンヒョン記者、ワシントン/パク・ヒョン特派員 suh@hani.co.kr