4大河川に行けば大騒ぎ、公務員発言を書いても大騒ぎ
"許可なしでは取材できません"
現場接近できず写真も撮れず
罵詈雑言を浴びるのは茶飯事だった
記事を書きもしないうちに
政府の報道釈明資料が飛んでくる
大半の公務員と学者は
4大河川批判に口を閉ざした
"ある新聞に水質記事が載ったら
記者と連絡取った人を探し出すんだと
総理室で通話内訳を全部調べ…"
"写真撮るなったら、このやろう。 オレを撮る権利あるのか?"
漢江(ハンガン)、洛東江(ナクトンガン)、錦江(クムガン)、栄山江(ヨンサンガン)。4大河川で工事が始まったのは2009年10月だ。 その時から竣工時点である2012年9月までの3年間、4大河川には“大統領戒厳令”が敷かれていた。 記者が罵詈雑言を浴びるのは茶飯事であった。 4大河川では言論の自由まで萎縮した。
2012年4月10日、漢江(ハンガン)梨浦(イポ)のポ(堰)の水遊び施設に緑藻類が挟まって“無用の長物”になってしまったという情報提供があって取材をしていた。 すると突然、何人もの人がどっと押しかけてきた。 施工社である大林(テリム)産業の職員が「許可なしに取材することはできない」と言って携帯電話を奪い体を押しのけた。
その日の午後ソウルに戻って記事を書いていると、環境部出入り記者宛てに電子メールが届いた。 4大河川推進本部が電子メールで“梨浦の堰の緑藻類”は水質悪化により生じたものではないと親切に説明していた。 この事件を初めて報道した“媒体”は新聞でも放送でもない、4大河川推進本部広報チームが不定期的に配布する“報道釈明資料”であった。 報道もしてないのに釈明資料を受取るとは! 記者として珍しい経験をした。
いつもこのような形だった。 取材車両が動けばどこからか四輪スポーツ実用車(SUV)が現れて一日中付いて回った。 写真を撮ろうとしてもどこから現れたのか、がっしりした体格の青年たちが近づいてきて立ちふさがった。 工事現場から相当離れた水辺に降りて行っても阻まれたし、遠くから撮る写真も許可をとらなければならなかった。 表面的な理由は“取材陣の安全”だった。 例えば100㎡のうち1㎡で工事が行なわれているのだが、残りの99㎡も「安全上接近してはいけない」という話だった。 政府の許可と同行なしでは、4大河川に行ってはいけないのだった。
4大河川事業を監視する環境団体活動家は身辺の脅威まで感じていた。 それで環境団体では重要な現場モニタリングがあるたびに記者たちに同行を要請した。 記者のいない時は一層手荒く阻まれたからだ。 南漢江(ナムハンガン)で監視活動を行なっていた環境団体<生態地平>のミョン・ホ事務局長が話した。
「2010年の5月頃でした。 康川(カンチョン)ポ(堰)の周辺から濁水が流れてきました。 水質検査はしなければならないが、川に初めから接近出来ないようにするから、近くの橋の所に行ってバケツをおろして水を汲み上げました。 ところが向こうから船がやってきたと思ったら、バケツを持って逃げていってしまいました。」
大規模国策事業を監視する民間活動は保証されなければならない。 これが成熟した民主社会の指標だ。 特に“檀君以来最大の土木工事”といわれる4大河川事業は、厳格な監視と検証が必要だ。 単一事業に22兆ウォンを、それも2~3年の間にみな注ぎ込むという事例は外国でも見出し難い。 だが<ハンギョレ>と<京郷(キョンヒャン)新聞>、<オーマイニュース>を除く大半の言論は“無関心”を決め込んだ。 果てしのない賛否論議がもううんざりだということもあったろう。
上の写真)昨年7月25日釜山(プサン)江西区(カンソグ)の洛東江(ナクトンガン)河口一帯が緑藻で覆われている。 緑藻は水温が20度以上の熱い日が持続し、水中の藍藻類が繁殖して水が緑色を帯びる現象だ。 釜山(プサン)/ニューシス
昨年11月19日公開された漆谷(チルゴク)ポ下流の水中撮影の動画。水受け孔のコンクリートの亀裂に深さを測定するために垂らした巻尺が80㎝を示している。 民主統合党4大河川調査特別委提供動画
2011年9月、4大河川事業の主務部署である4大河川推進本部は一群の記者たちをバスに乗せて南漢江(ナムハンガン)に連れていった。 完工した梨浦ポを見せるためだった。 シム・ミョンピル当時4大河川推進本部長が川を指して説明していたところ、黄土色の水が一筋 、南漢江に流入しているのが見えた。 環境庁で摘発したとすればすぐに是正要求をする事項だったが、この日の記者たちの関心対象には上がりもしなかった。 シム本部長はその濁った水にちょっと関心を見せたが、すぐ他の記者たちと話を続けた。
4大河川事業との関連性が疑われる大型災害が発生しても同じだった。 慶北(キョンブク)亀尾(クミ)市の断水(2011年5月)、洛東江(ナクトンガン)の倭館(ウェグァン)鉄橋崩壊(2011年6月)、洛東江(ナクトンガン)中流の緑藻事態(2012年7~8月),錦江および洛東江での魚の大量死 (2012年10月)等はマスコミの好奇心を刺激するに足る事件だったが、保守言論は平素のような“熱意”を見せなかった。
生まれからして“開発部署”である国土海洋部とは違い“保全部署”である環境部では、4大河川事業に批判的な見解が優勢だった。 環境部ではギャグが飛び交った。
「私たち環境部で4大河川事業に賛成する人はただ1人です。」
「それは誰ですか?」
「長官です。」
このような雰囲気の中でイ・マニ当時環境部長官が陣頭指揮を取った。 事業初期の幹部会では「我々が国土部の第2中隊か?」といった不満の声が溢れたこともあったが、賛成者は一人二人と増えていった。 取材は難しくなった。 4大河川事業と関連して政府関係者の発言を引用して記事を書けば、当該関係者は困った状況に陥った。 あるとき朝早く電話が入った。
「総理室から報道経緯調査にきました。 すみません。 釈明資料を出しますけど、理解して下さい。」
初めのうちは「申し訳ないです」、「お立場、理解できます」といったやりとりをするくらいの信頼があった。 それがだんだん、お互いの職業に対する理解と信頼はこわれ始めた。 「私たちはそんな事を言ったことはありません。」 そしていつからか、もう4大河川に関して話すことを憚るようになった。 公務員の間には一種の“恐怖の雰囲気”が形成された。 昨年、環境部関係者が私席で羞恥心を吐露したことがある。
「ある新聞に4大河川事業の後、水質が悪化するだろうという水質モデル予測結果が載りました。 記事を書いた記者と連絡をとった人を探し出すために、幹部数十人に携帯電話通話内訳照会申請書まで出させたんですよ。 本当に恥ずかしかったです。 私たちがそこまでやらなければならないのかと…。」
昨年3月、国務総理室公職倫理支援官室の「民間人査察文書」が公開されて、この事件は大統領府まで介入していたことが確認された。 いわゆる“BH(大統領府)下命”で水質予測結果の情報流出者を探し出す状況を報告した文書が発見されたのだ。 それだけではなかった。 公職倫理支援官室は4大河川反対運動をする民間人の動向も直接調べていた。 京畿道(キョンギド)南揚州市(ナムヤンジュシ)トゥムルモリの農民たちと関連しては「不純勢力介入状況を把握」せよとの文書も発見された。
これらすべてを動かす力はどこから出てきたのだろうか? 4大河川関連指示はたいてい大統領府から国土海洋部、環境部を経て全国の工事現場につながっていった。 大統領が投げる一言の力は強かった。 公務員はその言葉の重さを推し量って動くのにいそがしく、学者は理論的根拠作りをした。
昨年夏突然大量発生した洛東江(ナクトンガン)中流の緑藻の原因として、報道機関と環境団体は4大河川のポ(堰)を挙げた。 原因に対する科学的調査はまだ出ていない状態であった。 だが、イ・ミョンバク大統領は釘を刺すように「緑藻は気候変化により長期間雨が降らず猛暑が持続して発生する避けられない現象だ」と明らかにした。 しばらくしてテレビにはユ・ヨンスク環境部長官が出演する公益広告が流れた。
「毎年早く咲くようになった桜の花、随時現れる緑藻。 遠い国の話ではありません。 2012年の私たちの話です。 緑色生活の実践は難しいことではありません。 プラグ をこまめに抜くこと、公共交通機関を利用すること…。」
洛東江の緑藻発生を防ぐために国民が電気を節約しなければならないと、ユ長官は話していた。 緑藻発生の原因が気候変化か? 電気をぼんぼん使った国民の責任か? 少なくとも「異常高温のほかにも、川の水を閉じ込めた4大河川のポ(堰)との関連性があり得る。 正確な原因を調べてみる」といった程度の一言だけでも言っていたら、「緑藻(ノクチョ)ラテ(訳注:緑茶(ノクチャ)ラテのもじり)を大統領府に送らなければ」などの冷笑を買いはしなかっただろう。
監査院が去る17日発表した「4大河川事業監査報告書」を見れば、大統領と長官の突然の「気候変化原因説」は説得力がないということがわかる。 監査院はポの水質に対する影響を調べるために、同じ条件でポがある場合とない場合を仮定して水質予測モデリングを再び稼動することを国立環境科学院に要求した。その結果、ポのある場合に、緑藻物質である藻類が一層多く発生することが分かった。
「検討の結果、人工的なポの設置で藻類の濃度が増加するということが明らかになった。 特に洛東江の龜尾(クミ)ポから陜川(ハプチョン)ポまでの濃度は1.3~2.3倍増加するという結果が出た。」(2013年1月 4大河川事業監査結果報告書)
この報告書で指摘した最大問題区間は 龜尾(クミ)ポから陜川(ハプチョン)ポだった。 昨年毒性物質の“マイクロシスティス”が検出されるなど大規模な緑藻現象が起きて問題になったところだ。
土木工学界と環境学界は4大河川事業を支持したのだろうか? 政府は4大河川事業が学界で認められた事業だとずっと主張してきたが、記者が近くから見てきた風景は違っていた。 公開された少数の賛成学者と少数の反対学者だけがいた。 多くの学者は関連インタビューを断った。 各種の委託研究のために政府との関係を考えざるを得ないとして、率直に了解を求める人たちもいた。
このような雰囲気は2011年の夏、環境団体が憂慮していた逆行侵食(本流の過多浚渫で支流が侵食される現象)等が事実となって現れるに連れて少しずつ変わってきた。 4大河川事業に肯定的だった「水資源学会」でも「4大河川事業に参与した我が学会の会員に対して今後責任問題が提起されることが予想されるが、対策が必要だ」(第4次水資源学会元老フォーラム)とするなど、憂慮の声が出てきた。 事業に直接間接に参加した教授たちも資料を提供しながらインタビューに応じ始めた。 もちろん匿名を前提にしてのことだ。 2011年8月、ある教授とのインタビューメモだ。
「水資源学者たちは4大河川事業以前から逆行侵食を心配していました。 個人的には4大河川事業に反対です。 技術で(研究して)事業(の内容と水準)を決定するようにしなくては。 だのに政府が先に政策を決めておいて付いてこいと言うとは。。。。 それでも(どのみち決定された以上は)、私たちは技術的に弊害を最小化しなければなりませんから。」
韓半島大運河から4大河川事業まで、この事業に積極的に賛成したり理論を提供したりした一部の学者たちは、新しい職責に移っている。 パク・ソクスン梨花(イファ)女子大教授は国立環境科学院院長に任命されたし、イ・チャンソク ソウル女子大教授は環境部傘下の国立生態院推進企画団長に、チョン・サンマン公州(コンジュ)大建設環境工学科教授は国立防災研究所長になった。
監査院の監査結果発表で4大河川問題の解決点摸索が可能になりそうだと思ったら、最近では国土海洋部と監査院が真実を巡って力の対決をする様相だ。 4大河川の未来はどうなるだろうか? 23日、パク・ヨンシン環境正義事務局長がこう言った。
「京畿道(キョンギド)始華湖(シファホ)は1995年に水の流れを遮断する工事を完了しましたが、翌年水質が悪化して問題になりました。 生まれてはならない怪物が生まれてしまったわけです。 最初に海水流通が確保されなければならないと言ったんですが、政府は政策失敗を自認することになるため受け入れませんでした。 水中爆氣(水循環)装置(Aerator)を設置し、水葫蘆を植え、藻類除去船を稼動させても、効果がありませんでした。 数千億ウォンを注ぎ込んだあげくに、2002年になって政府が海水流通を決定し、降伏宣言をしました。 官僚と政府の委託研究を受ける専門家たちが国民の税金をそんなふうに使ってもいいんでしょうか? そのように誤った使われ方をする予算が一文や二文ではありません。 官僚たち、退職金はたいて返せと言いたいですね。」
ナム・ジョンヨン記者fandg@hani.co.kr
韓国語原文入力 : 2013/01/25 20:20