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「ストライキを報道しない言論見て双龍自動車労組の心情に共感」

原文入力:2012/05/08 22:17(4248字)

←<文化放送>(MBC)労組のストライキが8日で100日をむかえる中、去る6日午後ソウル汝矣島洞(ヨイドドン)の文化放送労組事務室で開かれる座談会に先立ち、参加者が100日記念文化祭の垂れ幕を見ながら話を交わしている。 左側からミョン・ジュンヒ氏、ヤン・ジェヨン氏、キム・ミンシク ディレクター(労組副委員長)、イ・ヨンマ記者(労組広報局長)。 リュ・ウジョン記者 wjryu@hani.co.kr

 MBCストライキ100日、労組員-視聴者座談会
イ・ヨンマ「不法ストだからと月給はくれなかったのに退職金は直ちに精算」

 <文化放送>(MBC)労組が「キム・ジェチョル社長退陣と公正報道死守」を掲げて去る1月30日ストライキに突入して8日で100日目をむかえた。 公営放送史上最長のストライキ記録だ。 この日350余の市民社会団体が参加した「公正言論共同行動」は記者会見を行なって政界などに対し事態解決に乗り出すことを要求し、汝矣島公園のテント座り込みに入った労組は文化祭で100日目を記念した。

<ハンギョレ>はこの6日、MBC労組事務室でストライキ参加者らと視聴者たちが会ってスト進行状況と視聴者の不満を互いに率直に出し合って、公正な言論の意味を再確認する時間を設けた。 座談会には労組広報局長のイ・ヨンマ記者と<日曜日日曜日の夜に> <内助の女王>を演出したキム・ミンシク ディレクター(労組副委員長)、主婦ヤン・ジェヨン(40)氏、梨花(イファ)女子大社会学修士課程のミョン・ジュンヒ(30)氏が参加した。

① 「視聴権失踪いつまで ?」―「申し訳ないが批判も私たちの任務」
ストライキ長期化でいらだち ― 視聴権侵害には深く謝罪、
なぜ芸能ディレクターまで? ― 権力批判は昔から“大道芸人”の役割

 ヤン・ジェヨン(以下、ヤン):ストの長期化で芸能番組を愛する視聴者としてはいらいらしてくる。 いったいいつになったら<無限挑戦>、<私たち結婚しました>を見られるのか? 再放送、再再放送まで見て「公正放送死守も良いが私の視聴権は剥奪されてもかまわないのか」という疑問を感じる。 芸能ディレクターも全部がストライキをしなければならないのか?

 キム・ミンシク(以下、キム):視聴権を侵害している部分に対しては深く謝罪申し上げる。 当初、芸能・ドラマのディレクターがストに参加した時「理解できない」という反応も多かった。 「ストは報道・時事教養局に任せ、我々は芸人として視聴者の満足を図るべきだ」という論理もあった。 しかし芸人には反骨気質がなければならない。 昔から大道芸人の役割は単純に笑わせることではなかった。 笑いを借りて権力を批判するのが大道芸人の任務だ。 <無限挑戦>のキム・テホ ディレクターが作った<無限挑戦ストライキ特別篇>がどんなに視聴者の呼応を得たか。

ヤン:ストを経る中で、自分の作った番組がダメになっていくこともあるだろうに・・・

キム:実際、テレビはあまり見ない。 見ていると気が変になりそうだから。 「いつもそこにいた人がいなくなったその場所は、誰が満たそうが空席 」という詩を地下鉄のホームで見た。 思わず涙が出た。 私たちのことのようで・・・。 ある視聴者はスト支持のために視聴拒否運動をするというメールを送ってきた。 だが、そのような運動でプログラムが廃止されれば最も胸が痛むのは私たちディレクターだろう。

ヤン:無給になって3ヶ月目ではないか。 私は3人の子のいる“おばさん”として労組員の暮らし向きも心配になった。 イ・ヨンマ広報局長は双子の息子もいると聞いている。

イ・ヨンマ(以下、イ):先月5日に解雇されて退職金が出た。 不法ストだからと月給はくれないのに、退職金は直ちに精算した。 ひょっとして私が復職するかと思ってそうしたのだろうか? ハハハ。 妻は特別何も言わなかった。 普段から「記者は普通のサラリーマンではない」という言葉に同意してくれていたので、ありがたく思っている。 労組員の経済的困難は気にならざるを得ない。 労組で一括融資を受けて生活資金を融通する方法も考えているところだ。

ヤン:時事評論家タク・ヒョンミン氏が主導した千ウォン募金も進行中だと聞いている。 どれくらい集まって、どのように使われているのか?

イ:この2日にチョン・ヨンハ委員長名義で口座が開設されたが、一週間も経たないで2500万ウォン以上集まった。 全て闘争基金として使う。

② 「去る4年間の報道はどうだったか」―「痛い話でありくやしくもある」
不公正・歪曲報道と言うが具体的に何が問題か?― “MB私邸”の件は大統領府の釈明のみ、4大河川は全く報道できず

ヤン:ストが100日目を迎えるのに、なぜストをするのかその理由をよく知らない視聴者も多い。

イ:2010年3月キム・ジェチョル社長が就任した後、ニュースと時事番組、代表的には<ディレクターの手帳>がめちゃくくちゃに破壊された。 最小限の中立を守るどころか、政権にとって敏感な事案は最初から報道できないようにしたり縮小報道をさせるやり方が横行した。 公営放送が破壊されることに耐えられなくてストを決議した。 当初はストがこれほど長くなるとは思わなかった。

ヤン:どんな部分を不公正・縮小・歪曲報道だと判断したか?

イ:代表的なものとして、イ・ミョンバク大統領の内谷洞(ネゴクトン)私邸に関する報道を挙げることが出来る。 インタビュー一つせずに、一方的に「大統領府は~と釈明しました」という報道だった。 軍事独裁時代の1980年代によく使った方式だ。 内谷洞私邸問題と2007年の故ノ・ムヒョン大統領私邸問題を比較してみよう。 「ボンハ村の私邸は華麗な豪邸」という非難が沸いた時には記者がボンハ村の住民と不動産業者をきちんとインタビューして「実状はこれこれだ」と報道した。 4大河川問題などはなから報道できない場合さえ多い。

ミョン・ジュンヒ(以下、ミョン):以前は正しく報道したということか? イ・ミョンバク政府4年間の報道に対する反省はないか?

キム:そう言われると痛い。 (イ記者を見て)正直言ってそうだろう? そうじゃないか? ハハハ。

イ:痛い言葉だがくやしくもある。 1987年MBC労組ができて11回ストをやったが、そのうち5回がイ・ミョンバク政府になってからだ。 2年前キム社長が天下りしてくる時にも39日間ストライキをやった。 国民は「MBCは順応しているんだな」と考えるかも知れないが、これまで持続的に抵抗してきた。

ヤン:労組が視聴者たちと疎通するためにどんな努力をしたのか知りたい。

イ:序盤には内部闘争動力を強化することに努めた。 キム・ジェチョル社長の法人カード乱用と在日同胞舞踊家J氏との特殊関係取材などに没頭した。これが組合構成員ばかりでなく一般視聴者の公憤を呼び起こした。 インターネット放送<まともなニュースデスク>が視聴者たちと交感するための代表的な努力だった。 第1弾『キム・ジェチョルを探せ』篇はユーチューブ照会数が60万件を超えた。

ミョン: インターネットとSNSをよく使う20代30代はストについてある程度理解しているが、このような疎通網を活用できない世代との交感方法も用意しなければならないのではないか?

キム:悩みは多い。 広報ビラを配布し野宿闘争である「希望キャンプ」等、広場に出て行く試みも疎通を強化しようとする努力だ。

③「キム・ジェチョルが退陣すれば全部解決?」―「支配構造を改善しなければ」
「社長が変われば政治的中立?」― 社長選任・所有構造改善
「スト終結の方法は何か」― 19代国会が解決に乗り出すべき

ミョン:今回のストでMBC労組がずいぶん自省したと思う。 双龍(サンヨン)自動車と韓進重工業ストライキの時のMBCの報道態度には失望した。

イ:深く反省している。これまで労組のストは<ハンギョレ>、<京郷>、<オーマイニュース>等、一部の言論を除いて多くは無関心だった。 100日を越える私たちのストにも朝鮮・中央・東亜には一行の記事も出ないのを見て、かつて生存権をかけてストライキを行った双龍自動車労組員たちが感じただろう絶望を私たちも感じた。

キム:韓進重工業で高空籠城をしたキム・ジンスク民主労総指導委員が私たちを激励訪問して「易地思之(訳注:相手の立場になって考えること)せよ。 労働者として覚醒しなさい」と忠告した。 (無給であるため) 1人当り1千万ウォン以上の高い代価を支払って教育を受けたわけだ。

ヤン:キム社長が辞任しても、政治的中立性を守ることは容易でないだろうと予想される。 パク・クネ セヌリ党非常対策委員長が大統領に当選したら、正修奨学会が大株主であるMBCが果たして中立性を守ることができるかということだ。

イ:それで19代国会が開会したら言論関係法を改正してMBCの所有構造を変えなければならない。MBCは放送文化振興会が70%、正修奨学会が30%の持分を有している。 正修奨学会はパク・クネ委員長の所有であるわけだから、政治的中立性論議が起きざるを得ない。 だが、赤ん坊が100日目を迎えれば生命力を認められて100日のお祝いをしてもらうように、MBC労組もストライキ100日を耐える中で、誰もむやみに手を付けられない自活力を得たと信じる。

ミョン: ストライキを終わらせる方法は何だと見ているか?

イ:6月に19代国会が開会すれば、MBCだけでなくKBS・YTN・連合ニュースなど言論ストライキ事態の解決論議に優先的に取り組まなければならない。 パク委員長をはじめ大統領候補たちも明確な意見を表明しなければならない。 社長選任など支配構造の改善論議も一緒になされることを期待する。

進行・整理ムン・ヒョンスク先任記者
ユ・ソンヒ記者 hyunsm@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/media/531841.html 訳A.K